動き出す者たち
魅菜は俺と代わった。三階に居た俺は、一階の真ん中へと跳び下りた。抹殺宇宙人は、カニの口のような己の口を開いた。奴の口の中からは、猛毒ガスが放たれる。これは霧のようなガスだ…視界的情報に頼るのは無理だな…俺は後ろに跳び、ある程度離れた。ここじゃ被害が出る…
その時、奴は歩いて霧の猛毒ガスの中から出てきた。そして、霧の猛毒ガスは、奴の両手首に凝縮していく。次の瞬間、奴の手首には、左右一本ずつ合金でできているような見た目の太い剣の刃の部分ができていた。奴の武器だ…一度、あれに斬られた生命体を見たことがある。そいつは、斬られた場所から毒が体を蝕み、苦しみ死んでいった。僅か、1秒で…これは魅菜の体…下手に当たるわけにはいかない…ブレスレットも、沢山使える訳ではない…
ブレスレットの事は後で考えろ…魅菜を、ここに居る奴らを、守る方法を考えろ!超加速をするか?いや、猛毒ガスを出されたら終わりだ…あれを使うか?ブレスレットの消費エネルギーは多いが…やむを得ない!!!ブレスレットからは、青白く発光する光の刃が現れた。俺は構えた。
「さぁ…敗北までのカウントダウンを数えろ」
奴は俺の方に走ってきた。俺も奴の方に走った。奴が剣を振る。俺は光の刃でそれを受け止める。奴は残っている片方の剣をこのタイミングで振ってきた。俺は、振られた刀に当たらないように、振られた刀側の腕を蹴り上げた。そして、奴の首を掴み、外へと急いで跳び走った。そして、外に出た瞬間、俺は奴を真上にへと投げた。
奴が着地した。幸い、近くに人は居ない…落ち着いて対処をしろ…残り、四分!俺は光の刃で三日月状のエネルギーを作り出し、それを切り放った。奴は剣を交差させ、展開と同時に俺の攻撃を相殺した。光の刃を消滅させた。
そして、ブレスレットを槍にする。俺は槍を投げる。奴は槍を剣で弾き飛ばした。槍はブーメランのように軸があるかのように回転して、奴の左肩に浅く短い傷をつけて返ってきた。やはり硬いな…
奴は剣を顔の前で交差させた。そして、剣を展開すると同時に、いつのまにか奴の眼下に作られていたエネルギー弾を放ってきた。俺は槍を回転させ、エネルギー弾を防ぐ。奴は、同じ事をしてきた。だが、今度は二発あった。俺は、槍を投げ、二つ同時に貫いて消滅させた。槍は俺の手元に返ってくる。後三分…
「やっぱり強いよな…こっちは五分戦ったら強制終了なのに、お前さんは違うようで羨ましいぜ…まぁ、こんな事を言ったところで何か起きるって訳でも無いがな…」
奴の角が淡く赤く光った。俺は超加速を発動した。瞬間、俺と奴以外の動きが遅くなった。俺等は同時に走り出し、同時に攻撃をし、お互いの攻撃がぶつかり合い、相殺された。
こいつらが抹殺宇宙人と呼ばれる理由は多々ある。1つ、近距離戦が強く、今まで数多くの宇宙人が殺されたから。1つ、こいつの毒は宇宙規模で見ても強力だから。1つ、こいつは超加速に似た技を持っていること…超加速をする条件は揃っている…強者が辿り着く特有の技が、超加速なのかもしれない。
俺と奴の攻撃は互いにぶつかり合い、互いに一行に相手に攻撃を加える事ができていなかった。俺の槍は小回りが利きやすかったり速く振れたりできる一方、これという強力な攻撃ができない事。光の刃は、スピードは槍より落ちるが、上手く扱えばどんな物でも斬る事ができる。だが、今ブレスレットに戻して光の刃にする時間があれば、奴に刺されて終わりだ。
5秒間経ち、俺らの超加速は終わる。俺らは同時に距離を取るため背後に跳ぶ。
「イナズマさん、大丈夫?」
「お前の体を守りながらだから、全神経集中させてるよ。おかげさんで、いつもより疲れてる…」
「一旦逃げた方が」
「ダメだ!こいつのせいで多くの生命が消されたと思う?!俺は…罪のない生命を意味もなく殺す奴が大嫌いでな…それに、ここであいつを倒せないと、お前を守れない!」
「でも!後半分だよ!」
「分かってるさ…だから、死ぬ気で戦わせてもらう!」
槍をブレスレットに戻す。
「あの馬鹿と戦うまで、使わないって決めてたんだが…仕方ない!」
ブレスレットは、二つの双剣になった。
「双剣?」
「あぁ…フラッシャーって呼んでるよ、俺の仲間はな」
「イナズマさんは何て呼んでいるんですか?」
「相棒、だよ」
俺は相棒を投げた。相棒は、奴が防ぎようもないほど、奇想天外な飛び方をして、奴に近づいた。そして、奴の左角と右剣を斬り落とした。そして、俺の手元に戻ってくる。
「強いんだよ、コイツは…他のブレスレットの形態よりも頭一つ二つ抜けて強いんだよ…だが、周りを傷つける事もあれば、たまに俺の言う事を聞かないんだよ…だから、あまり使いたくなかったんだが…」
俺は双剣を握り、構えた。奴は怒ったように、俺の方に走ってきた。
「俺がこれを使いたくない一番の理由を教えてやるよ…俺の相棒は残酷でな…」
奴の残った剣が俺の体に届こうとした瞬間、奴の体は豆腐のように、意図も簡単に真っ二つに切断された。
「自分の罪を悔い改めながら、地獄へと落ちろ。稲妻の覇者が、地獄への扉を開いたぞ…悪いな。俺の相棒は、相手が頑張って強くなったって言うのに、簡単に相手の努力も人生も断ち切るんだよ…努力した相手が可哀想だから使いたくなかったんだよ」
俺は相棒をブレスレットに戻した。そして、癒しの光の粒子を放ち、奴を葬った。俺は魅菜と代わった。
私は元に戻った。こんな事態があったから、私はすぐに走って家に帰った。
「ふぅ〜…」
私は息を整える。
「悪いな」
「え?」
「俺のせいでお前を危険な目に合わせてばかりだ。辛くなったり、嫌になったらいつでも言ってくれ」
「大丈夫ですよ!イナズマさんは何も悪くありませんし!」
「…お前は優しすぎだ。もう少し他人に厳しくなれ。いつか、足元を掬われるぞ」
「私は優しくなんかないですよ。イナズマさんの方が優しいです」
「俺は自分の正義の名の下に行動してる自己中だ」
「そんな事言わないでくださいよ…イナズマさんのおかげで、命拾い人だって居るんですから!」
それ以上、イナズマさんは何も言わなかった。何も言ってくれなくなった。その時だった。
「確かに、命拾いできた奴は沢山居るさ。けどな…それと同時に、多くの生命を守るためにある程度の命を葬っているのも事実だ。俺の正義は、多少の犠牲によって多くの者を救う事だ…こんなの、正義と言って良いのか分からないな」
「確かにね…けど、私には正義も悪もないから、正義があるだけ良くない?」
「いや良くは無いだろ…」
「そうなの?!」
「不確かだったり歪んでいたりする正義は、悪よりもたちが悪いからな」
「確かに!」
「お前と居ると退屈しなさそうでいいよ」
「褒めてるの?!ありがとう!」
「皮肉だよ!はぁ…早くあいつら来ないかな?」
「え?なんで?」
「ある意味、どんな敵よりも強力だからだよ」
「そんなに褒めないでよ!照れるでしょ!」
「だから皮肉だって言ってんだろ…」
イナズマさんの声色で理解できた。彼は私に皮肉を言ってくれた。彼は、少なからず私を信用し始めている。それが、私にとってはたまらなく嬉しい事だ。
〜地球にへと向かう道のりにて〜
「未来!」
「だいぶ日本語が上手くなったね、霊火」
「もちろん!わたしはてんさいってやつだからな!」
「イナに会うのが待ち遠しいよ」
「まちどおしい?」
「楽しみでたまらないって事だよ」
「たまらない?」
「楽しみすぎって事だよ」
「なるほどな!未来はやさしいでてんさいだな!」
「それは優しくて天才、って言い換えられるんだよ。はぁ…まだまだゴールは遠いね…」
〜とある日本の廃工場にて〜
「魅菜ちゃんか…デパートで可愛い女の子が居ないか探してみたら、私の性癖にぶっ刺さりな子を見つけちゃうなんて…私って美人な上に天才!あの子欲しいな〜あの子の体を舐めてみたい♡けど、あのイナズマって呼ばれていた奴…魅菜ちゃんの多重人格?それにしても、あのイナズマって奴、邪魔だな〜…殺しちゃおうかな〜♪まぁ、とりあえず今は様子見だな〜」
私はソファに深々と座り、背もたれに寄りかかり、鼻歌を歌った。魅菜ちゃん、可愛かったな〜私はスマホを取り出し、盗撮して入手した魅菜ちゃんの写真を眺めていた。
「あのイナズマって奴、厄介だな…抹殺宇宙人と戦って勝つなんて…もしかして、稲妻の覇者とか、鏡の魔道士とか、炎の暴れん坊とかの仲間?もしかして本人だったりして…まぁいいや」
私はスマホの電源を切り、ソファから立ち上がり、ソファにスマホを投げ落とした。
「魅〜菜ちゃん♡魅〜菜ちゃん♡魅〜〜〜菜ちゃ〜〜〜ん♡は〜〜やく君〜に会いたいよ〜」
魅菜ちゃんの事を考えると、私は興奮していた。あの綺麗なオレンジ色の髪、あの黄色い可愛い瞳、あの明るくて優しい声色、あのスリムな体型、嫌にならないむしろ癖になる少し高い自意識、あの純粋無垢な穢れを知らない笑顔…あぁ…♡思い出しただけで興奮しちゃう…♡
その時だった。野生の宇宙生命体が私のアジトに来てしまった。
「君…何星の子だっけ?まぁいいか…私の思い出興奮タイムを台無しにしたんだから…殺すね?」
私はそいつにゆっくりと近づいた。そして、そいつの首根っこを掴み、そいつを持ち上げた。そして、そいつの心臓をえぐり取った。そいつは死んだ。私はそいつを投げ捨てて、そいつの心臓を食べた。
「あっ!思い出した!とかげ座の2等星の子だ!まぁ、死んじゃった子なんてもうどうでもいいか!」
その時、私が殺した子の同族らしき子たちがうじゃうじゃ来た。
「はぁ…何か私に恨みでもあるわけ?せっかく魅菜ちゃんの写真眺めながらご飯食べようと思っていたのに…ゴミが邪魔するからできないよ〜うぇぇぇぇぇん…なんちゃって」
私は近くにあった鉄パイプを持ち、投げ、一匹を刺し殺した。それを皮切りに、他の奴らが攻撃を仕掛けてきた。私は踊るように、そいつらの心臓を攻撃し、即死させていった。私は死骸を集めて、マッチで燃やした。そして、骨になった死骸は廃工場を出たらすぐ横にある川に落とした。
「魅菜ちゃん、待っててね♡」
抹殺宇宙人が敗北した。それに、あの共食い獣族も敗北した。倒した者の特徴を聞いた。間違いない、稲妻の覇者はこの星に…地球に来ている。海老で鯛を釣るって言葉はあるが、この場合だと「己でマグロを釣り上げる」ような物か。俺は月明かりに照らされながら、電波塔の上から跳び下りた。地面に着地する。
「いや〜楽しみだな〜またアイツと戦えるなんて…」
俺は自分の左手にあるブレスレットに手を付けた。そして、ブレスレットはトライデントになる。それを月へと向ける。
「地球の生命体は皆弱いからガッカリだったのに…お前のせいで、もっと滞在しなきゃになったなw」
その時だった。
「動くな!」
「あ?」
「我々は宇宙守護を目的とする『スペースガーディアン』だ!」
「邪悪の権化!影法師のシャドー!!!」
「貴様を、複数の惑星を死の星へとした罪、また、危険宇宙生命体の多数所持により、宇宙監獄へ連行する!」
「おまわりさん、って奴か?くっだらねぇ…お前ごときの奴に、俺が止めれるかよ?」
「我々には貴様を宇宙監獄へと連行し、宇宙の平和を守護する役目がある!」
「稲妻の覇者は知っているな?」
「彼がどうした?」
「稲妻の覇者は、お前らが言うスペースガーディアンの中に入っているのか?」
「彼は独自でチームを作り、お前を追っている!」
それを聞いた瞬間、俺はトライデントで一人の首を切断し、殺した。
「貴様!抵抗する気か?!」
「抵抗も何も、俺を捕まえて良いのは稲妻の覇者だけだ。お前らのような勘違い出たがりはお呼びじゃないんだよ。今すぐ消え失せるってんなら話は別だがな?」
「ふざけるな!」
俺は超加速を発動させた。そして、奴らをコマ微塵に斬り殺した。
「せっかくの俺のお情けを無駄にするなよ…俺は優しいんだから」
俺はトライデントをブレスレットに戻した。そして肩を回した。
「稲妻の覇者に勝つのはただ一人、影法師のシャドーだけだ。影法師のシャドーに勝つのはただ一人、稲妻の覇者だけだ。稲妻の覇者、待ってろよ。お前に勝って、お前を殺してやる」
その時、俺は歩道を歩いているのに車に轢かれそうになった。俺は車の下に潜った。
「イライラしてたから人が居て丁度良かったわw」
俺は車に手のひらを合わせた。次の瞬間、俺の手から赤黒い光線を放ち、車ごと運転手を消滅させた。
「はぁ…この星の生命を全て滅ぼして稲妻の覇者と戦おうかな〜そのほうが邪魔されなさそうで楽しそうだし」
俺は鼻歌を歌った。




