この道に(s)
思い出がふとよぎる
この道で手を引かれ
見に行った消防車
真っ赤なかっこいい
ボンネットの赤い顔
光浴びて並んでた
サイレンを鳴らしてよ
うーううーうと歌ったよ。
真ん前の噴水の
縁に腰を掛けたら
近くの神社から
鳩たちが飛んで来た。
よちよちと歩いてた
この道でよろけながら
川沿いを辿るように
商店街に向かった
老舗の蒲鉾屋さんで
母は竹輪を買った
向かいの駄菓子屋さんで
ポン菓子も買ってくれた
真ん前の鳥居抜け
神社の境内に行き
竹輪をかじっては
鳩たちにポン菓子を
すぐに忘れてしまう
年老いた母は今も
消防車と竹輪と鳩の
お散歩を思い出すかな
二人で過ごしてた
たぶん秋の頃で
茶色のカーデガンを
揃いで着てた気がする
真ん前にあるものが
少しずつ遠ざかる
だけど温もりは
心にずっと残ってる
令和でも鳩たちは
この道に降りてくる
川沿いの風の匂いと
人の優しさ信じて




