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第四節 疑いの目 1話目

「――ブラウン先生? ……多分、いい先生だと思いますよ」

「多分って事無いだろ! エリオットなんてブルームレースのチームに入らないか、って推薦貰ってたし! フィリップス先生も太鼓判を押してたんだぜ!」


 ひとまずブラウンという男について情報を集めるべく、私はファフニール所属の一年生二人、エリオットとネイサンを教室に呼び出して聞き込みを開始する。口止め料は勿論、例の取り寄せお菓子箱のお菓子を沢山だ。

 リリーはというと、外から干渉されないよう隠蔽魔法と保護魔法をかけた準備室にて、一人で放課後の自習中。またいつあの男がやってくるかは分からないが、少なくとも出来る範囲で彼女は守ってあげなければ。


「なるほど、いい先生なんだね」

「うん! いいよなぁーエリオット、俺も後二年後くらいにチームに入って、ブロッカーになってチームを守りたいぜ!」


 それはそうと彼らが口々にするブルームレース、実は魔法学校界隈では最も人気のスポーツの一つなのは間違いない――というより、私自身もプロチームのブルームレースを見に行くくらいにはコアなファンだ。

 ルールは至って簡単で、箒を使って空を飛び、スタートから順番に空中に描かれる魔法の輪を通り、誰か一人でも最後のゴールの輪まで全てをいち早くくぐりきればそのチームが勝利となる。

 誰か一人でも――という言葉には当然裏がある。魔法学校でも人気とあるこのレース、妨害もルールとして当然のように許可されている。流石に魔法学校レベルだと制限もあるだろうが、それでも箒と魔法が飛び交うこの競技、白熱しない訳がない。


「先頭を走るストライカーと、追走する護衛役のブロッカーはブルームレースでは最も人気のポジションだからねぇ……っと、話が逸れちゃったか」


 元々の目的を忘れてはいけない。ブラウンについてもっときな臭い噂とか聞いて無いものか。


「別に変な噂とか聞いたこと無いなー。ていうか、どうしてブラウン先生のことを調べているんですか? あの人何か怪しいことでもしたんですか?」

「いやいや、特にそういう訳じゃないんだけど……」

「でも、僕はあの先生が気になるっていう気持ち、分かる気がする」


 これは後で知ったことだが、どうやらグリフィスの一族は妙に勘が働く時があるらしい。

 その名も洒落が効いていて、一部では正義“勘”とも呼ばれているとか。


「そう? エリオットも先生に言われて気になってるだけじゃないの?」

「いや、なんとなくなんだけど、前々から変な感じがするんだ。あの先生」

「それっていわゆる、勘ってやつ?」

「そう言われたらそうなんだけど……」


 自信なく語るエリオットだったが、それは私にとっては大きな勇気として受け取ることができた。


「そうか……ありがとう、エリオット。君のおかげでちょっと自分に自信が持てたよ。私の思い過ごしかなって思っていた所だったからさ」

「そんな! あくまで僕の勘ですから!」


 一通り話を聞くことができた私は、オマケとしてお菓子を更に多めに彼らのポケットに突っ込んであげることにした。


「また今度、話をしてくれるかな?」

「先生の為ならいつでもどこでも! これだけお菓子を貰えるなら僕いつだって駆けつけるよ!」

「ネイサンはずっとお菓子を食べてばっかりだったじゃないか」


 呆れた顔のエリオットだったが、彼もまた私の疑いに何か引っかかりを覚えたようで、改めて私との情報交換の約束を交わす。


「僕の方でも、ブラウン先生について調べようと思います。このことは――」

「勿論、誰にも喋ってはいけないよ。喋ったら君達のお腹に詰まっているお菓子が破裂することになるからね」

「っ!? ぼ、ぼぼぼ僕、絶対に喋らないよ!」

「もしそうなったら、ネイサンは風船みたいに膨らんじゃうだろうね」


 私の冗談に笑顔を浮かべながら、エリオットとネイサンは教室を去って行く。


「……さて、今日もリリーを寮まで送り届けるとしようか」


 校長直々の呪いは、私ですら破れない。それは事前に下調べしてある。

 ……もう少しで俺が晒し者にされるところだったが。


「あの寮の呪いは強力だ。あのブラウンという男が不用意に触れようものなら――」


 ――晒し者一直線は間違いないだろう。というよりも、そうなってくれた方が俺としては気が楽なのだが。

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