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トリック オア トリート

作者: はやはや

 秋真っ盛りの季節。私は公園で文章を書くことが多い。外気に触れることと、さりげない人の気配があることが、集中力や創作意欲を掻き立ててくれるように思う。

 一時間があっという間に経ってしまう。

 十月下旬のあの日もドラッグストアでお菓子とコーヒーを買い、近所の公園に向かった。うららかな午後だった。


 公園には団体の親子連れがいた。どうやらどこかの幼稚園に通う子ども達らしかった。子どもは仮装している。それを見て「そっかハロウィン」と思う。

 その一団から少し離れた所にあるベンチに座り、文章の続きを考えることにした。


 しばらくすると母親の一人が何やら説明を始めた。

 友達のお母さんが公園に散らばるので、そこを回ってお菓子をもらうように、というようなことを話していた。気がつくと母親達も様々なカチューシャを付け、変装していた。


 公園に散らばる母親を追いかけて子ども達があちこちに散らばっていく。


 私は賑やかな気配を感じながら、文章の創作に勤しんでいた。すると、急に隣から可愛らしい声がした。


「トリック オア トリート!」


 びっくりして顔を上げると赤い帽子を被った、ゲームキャラに仮装した男の子が私の側に座っていた。


――え、えぇ?


 しばし、絶句。

 男の子は何かを勘違いしたまま、私がドラッグストアで購入したお菓子を漁り始める。あげてもいいのだが、見ず知らずの人から、お菓子をもらうのは、この子の母親が気味悪がるだろう。


「〇〇君!」


 と呼ばれると男の子は顔をあげ、呼びかけた女の人の方へ向かって走って行った。どうやら友達のお母さんらしかった。


 ハロウィンに全く縁のない私を、一瞬ハロウィンに参加させてくれた男の子。ありがとう。心がほっこりしたよ。

 トリック オア トリート!

読んでいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
「一瞬ハロウィンに参加させてくれた」と捉えているあたりに、はやはやさんの優しさが滲み出ている気がして、なんだかとてもあたたかい気持ちになりました。 いつも素敵な作品をありがとうございます☺︎
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