悪役令嬢対海の怪物
セイレーンの指示に反応して、あちらこちらに倒れている生徒が起き上がった。みんな無表情で、本当に操られてるみたいだ。……さて、どうしようかなぁ。あまり誰も傷つけたくはないんだけど……かと言ってセイレーンを攻撃しようとすると盾にしてくるでしょ?
それで持って放置してたらしてたで攻撃してくる……
「お人形さん達、遊びましょ!ローズ・コフィールを攻撃しなさい!」
「これくらいなら……うん、まだまだ全然これでいける!」
また、セイレーンの指示で起き上がった……ざっと三十人くらいかな?が、私に向けて魔法を放ってくる。が……あまりこういう言い方はしたくないんだけど、所詮はモブだ。だからどんな魔法を使ったとしても風魔法で全て切り裂けてしまう。
「なるほど……あなた、規格外の強さを持っているのね。ここ千年近く生きてきた中で風魔法をそんなふうに使うのはあなただけだわ。……やっぱり、お人形さんは磨いて綺麗にするのが大事よね。ラ~ラ~……」
はぁ、強化魔法か……面倒臭い。セイレーンが歌を歌い、それを聞いた生徒達が赤く光った。……いや、魔法ともまた違うものか。
「もう流石に風魔法だけで対処しきるのは難しいか。だったら!……え、嘘!?魔法の制御ができない!……痛いっ!」
水魔法で怪我にならない程度のダメージを与えようと思った瞬間、水魔法が暴走して、私の中で爆発した。……戦えないほどではないが、右腕が大きな傷を負ってしまった。……危ない、あと一秒でも魔法の制御を取り戻すのが遅かったら右腕が切断されてたところだった。
「あなた、さっき私と戦う前に私の歌を聴いたでしょう?……あの時からもう、戦いは始まっていたのよ。流石に心を操ることは出来ないから魔力を暴走させることが手一杯だったけどね……さて、そんな魔法も使えない状態でどう楽しませてくれるのかしら?」
「完全に油断してたよ……まさか、魔法を封じられるなんてね。……普通だったらもう体術でも行けたけど……強化されてる以上は迂闊に肉弾戦も出来ないしな」
「みんな、今よ!一斉攻撃!」
流石に今喰らったらだいぶまずいな。……下手したら足が使い物にならなくなるリスクもあるけど……念の為、速力強化を……
「……くっ、やっぱりダメか……でも、幸いかすり傷程度で済んだ!」
案の定使えなかった。が、幸い直ぐに魔法の行使を辞めたので太ももら辺に切り傷一つで済んだ。とりあえず逃げ回ってなんとか魔法は回避出来た。けど……もうすぐ第二波がくる!
「……ん?あら、ターゲットが二人も揃ってくれるなんて、今日はついてるわね」
「ターゲット……もしかして!」
セイレーンの上はシャクヤかメサーク。それで持って二人が因縁付けてるのは私……と、リリーだ。つまり……
「遅くなってごめんねローズ!もう事情は聞いてるよ!」
「良かった。リリー、来てくれたんだね」
「どう?ローズ、戦えそう?」
「どうだろう。今は魔法が使えない状態だし、右腕もかなり重傷を負ってる」
「魔法が使えない?……あぁ、セイレーンに操られてるのか。だったら……ローズ、受け取って!」
「これは……魔力増加の指輪?」
「うん!それつけて魔法使ってみて!大丈夫、安全は私が保証する!」
リリーと合流できた。多分他の生徒からリリーも話は聞いているんだろう。で、リリーは私に魔力増加の指輪を投げた。私は普通の適正だから……魔力は一.五倍か。……これで何か変わるのかな?
「炎よ。……ってあ、撃てた!」
「なるほど、話に聞くとおりリリー・クレスアドル……あなたは相当頭が冴えるのね。よく気づいたわね、私はさっきの魔力を操るので手一杯だった事に」
「私の狙いは別に違ったんだけど、そう解釈してくれたなら私の狙いはそれってことでいいよ。……流石にただの生徒に向かって剣は危ないから……体術でやるか!」
「まぁいいわ。どのみち撃てたとしても所詮ロウソクの火だもの。リリーはお人形さんで足止めしてればいいし……」
指輪をはめて炎魔法を放つ。すると、セイレーンが言ったようにロウソクのような小さな炎だが撃てた。一方、リリーは生徒達の相手をしてくれている。殴りに手刀に回転蹴り……等。魔法と違ってさ、物理は見てても痛そうなんだよね……
「……あれ?もう誰も動かせないわ……」
「私の事聞いてたならわかるでしょ?私、超早いから」
「私にも見えないスピードで次々と気絶させていったのね。流石だわ。……それじゃあ、私が直々に相手をしてあげるわ!……ラ~」
セイレーンは歌を歌い、次々と私達に音符をぶつけてくる。あるあるだよね、音に関連したキャラクターの攻撃手段が音符なのって。……にしても、これ触ったら多分爆発するよね?それか精神を操られる。
「よーし、じゃあもう私も本気で行こっと。私に応えて、神秘の剣!」
「あ、なんだ。普通に回復魔法使ったら直せるじゃん」
リリーの指輪のおかげで回復魔法が使えるようになり、そのおかげで魔力制御がかなり楽になった。……よし、反撃開始だ!
「リリーには本気を出されて、ローズも元の実力を取り戻されて……ふふ。どうやら私の千年はここで終わりみたいね。でも……それもいいかもね。もう何百年も誰かを待つ必要もなくなるもの」
「……ねぇセイレーン、最後に何か言うことはある?」
「そうね……あなた達の強さも、優しさも、私が初めて恋をしたあの人に似ていたわ。千年待っても出会えなかったあの人に。ありがとう、私は満たされたわ。……どうせ死ぬんだし、別に言ってもいいわね。目的は知らないけど……あなた達を狙っている一番の黒幕は、シャクヤ・レクファーよ。わかるのはただ一つ、あなた達をとても恨んでいるということだけ。……もう、思い残すことは何もないわ。さぁ、早く私を消して頂戴」
「教えてくれてありがとう。たくさんの人を弄んだ大罪はあるけれど……っていうか、まさか敵対してる魔族に情が湧くなんて思ってなかったけど。千年もよく頑張ったよ。お疲れ様、セイレーン。ゆっくり休んでね」
驚いた。何故なら、途中でセイレーンの目付きが変わったからだ。かつて……中学の時、鏡で見た何もかも全てを諦めている目をしていたから。リリーも一瞬驚いたような顔をした。でも、またすぐ元の表情に戻ってセイレーンに話しかけていた。本来、魔族は殺す必要は無い。というか、本当はリリーも殺すつもりはなかったと思う。だが……セイレーンがそんな目をしていた。『もう生きたくない』『生きているのが苦しい』……そんな目を。どうしていきなり敵対していたのにそんな風になったのかはわからない。
「どこからが本人の意思で、どこから……いや、いつから操られていたのかもわからない、か。にしてもそっか……黒幕はシャクヤか」
リリーは、神秘の剣で優しくセイレーンを切り裂く。本当に満たされたのだろう、どこか嬉しそうな顔をしてセイレーンは私とリリー、二人の魔晶石に吸われていった。
「……シャクヤって、確かマイのお母さんだったよね?一体なんで私達を……」
「わからない。昔のマイの話を聞く限りだと、もし仮に恨むとしてもそれはマイなはずなんだけど……」
「ま、今はそんな事考えててもしょうがない、か。……行くよ、ローズ。試験はまだ終わってないからね」
「確かにそうだね。……あれ、セイレーンってリリーと私の両方に吸われてったよね?この場合どうなるんだろう。ていうかポイント配分は?」
「さぁね。でも……多分私の勝ちだよ」
リリーと話しながらゆっくり元の位置に戻り、私達は両方の生徒会試験を終えた。
どっかでまたセイレーンの話も書きたいなぁ~




