悪役令嬢の生徒会試験 実力編
筆記試験が終わって、それから数日が経った。多分、筆記の方は満点だろうから特に気にしなくていいか。
そして今日は実力試験の日。筆記試験ならまだしも、実力試験は内容次第では余裕でリリーに負ける可能性あるんだよなぁ。
「ローズおっはよー!!」
「うわっリリー!?急に抱き着いてきたら危ないよ!」
「あっはは、ごめんローズ!久々にローズと力で勝負できるから嬉しくてさ!」
「でもそうだね!でもリリーとちゃんとした勝負をするのは久しぶりだね!」
「お互いに頑張ろうね!……敵同士だけど!」
「うん、頑張ろうね!……敵同士だけど!」
確か……集合場所はグラウンドだったよね!よし、それじゃあれっつごー!
「よし、皆さんちゃんとそろっていますね。それでは試験を始める前に、生徒会試験、実力試験の説明をしますね」
ルールは簡単だ。グラウンドに密接している森に溢れかえっている魔物を討伐して得点を稼いでいき、その得点数を競う試験だ。基本的にはスライム一点、ゴブリン一点、骸二点の得点配分になっている。が、中には数体ジャイアントと呼ばれる強さ、大きさ共に数十倍になっている個体がいるらしく、ジャイアントを倒せば十点なんだとか。倒した魔物は配られた魔晶石に記録されるため、不正とかもできないようになっている。……大体、こんな感じだ。
「それでは、皆さんの健康を祈って……用意、始め!」
「極力ローズとの奪い合いは避けたいから、ローズは私の反対行って!」
「わかった!」
合図と共に私たちは森へと突入する。そして、森を進んだすぐ先には分かれ道があり、私は右の道、リリーは左の道を選んだ。左の道を歩いていると、三体のスライムが出てきた。ちょっとほかの人には申し訳ないけど……よし、殲滅開始だ!
「よし、じゃあまずは三点だね」
にしても……無詠唱って本当に便利だなぁ。こういっちゃなんだけど、風魔法を纏って走ってるだけである程度の敵は倒れていく。極力どこにいるか分からない他の人達には当たらないように意識してるけど……思いっきりやりたいなぁ。
「お、ジャイアント発見ってげ……骸かぁ。まぁ勝てないことは無いし、全然いっか。……おっと、危ない危ない」
それから森を歩くこと数分、巨大な骸を見つけた。ほんと勝てないことはないんだけど、面倒臭いんだよねぇ骸って。魔法通じないから物理でやらないといけないし……その癖して意外と硬いから殴ったら殴ったで手痛いし。
「確かに一撃は重くなるけど……その分、一挙手一投足が通常個体よりも遅い!……はぁっ!」
飛行魔法を使って飛んで、身体強化魔法で力をあげて、思い切り骸の頭を殴る。……やっぱり痛いんだよなぁ。骸はカラカラっと音を立てて崩れ落ちて、淡く光って魔晶石に吸収されていった。……よし、十点!
リリーは今どんな感じなんだろう?普通に骸とかだとリリーの方が私の倍早いからな。しかも、剣魔法を解放していたなら尚更ね。
「……にしても、妙だな。ここ数分、ほんとに誰とも会ってない。もしかしてみんなリリーの方行ったのかな?……いや、違う!魔物の魔力を感じる!」
普通、スライムやゴブリン、骸等の雑魚はそもそもに魔力が小さい為一切感知することは出来ないのだが、マイとかリリーとか、かなり強い部類の魔力は感知することができる。……確信はある。今私が感じた魔力はリリーのでは無い。リリーのと違って、かなり禍々しい。つまり……魔物の魔力で間違いない。
「じゃあ……強力な魔物がこの森にいるってことか。気をつけて進んでいこう。……いやいや、まさかそんな、ね?」
まさかね。流石にメサークの仕業って訳じゃないよね?学校側が用意した魔物だよね。……でも、あの先生から説明は受けてなかったしな……
「……あ。ローズ様!!」
「あ、良かった……って君、その傷どうしたの!?大丈夫!?待ってて、すぐ私が治すから!」
またゆっくりと先へ進んで行くと、一人傷だらけの女子生徒と出会った。……ひ、酷い!体中あちこちに切り傷ができてる!それに、呪いのような痣も出来てる!
「……よし、とりあえずはこれで大丈夫だと思うよ。それで……何があったのか、教えてくれる?」
「ありがとうございます、ローズ様。はい、お話致します。……結論から言います。先程の傷や呪いは、全てこの森の奥にいるバケモノの仕業です」
「バケモノ……?」
「ローズ様がご存知かどうかは分かりませんが、この森の奥……要するに試験範囲ギリギリのところに湖とまでは行きませんが、そこそこ大きな池があるんです」
「奥に池があるのは前リリーから聞いたよ。それで?」
「まずそもそもに、気づいたら私達はその池のところに飛ばされてたんです。そして、その池のところに、いたんです。……人の上半身に、鳥の下半身を持った怪物が」
「……人の上半身に、鳥の下半身……」
「はい、その怪物はずっと歌を歌っていました。少し怪しいと思い、私は距離を置いてたんですが……間近でその怪物の歌を聞いたみんながおかしくなって、一斉に私を攻撃し始めてきたんです。それで、どうしたらいいか分からなくて私はとにかく逃げてここまで来たんです」
歌で惑わす……惑わすって言うより操る感じか。それでもって半人半鳥でしょ?……ってなったらもう、あれしかいないじゃん。
「はぁ……セイレーンか」
「あの怪物は、セイレーンというのですか?」
「うん。セイレーン……別名"海の怪物"。聞いた人間の心を自由自在に操る不思議な歌を歌う怪物だよ。……教えてくれてありがとう。ここら辺の魔物は私が一掃したから安全だと思うから、先生の所でちょっと休んでて」
「はい……あ、ローズ様はどうなされるんですか?」
「決まってるでしょ。もちろん、セイレーンを討伐してくるの。運にもなるけど、リリーと合流すれば私達は誰にも負けないからね」
「そう、ですか……ローズ様は私達の救世主ですね。本当に、ありがとうございます。それと……お気をつけて」
……完全にこれは人為的なものだ。そもそもセイレーンは綺麗な海にいるとされているはずなのに、何故か池にいる。それに、あの子は気づいたら池に飛ばされてたって言ってた。……はぁ。私にならいいんだけど他の人達に迷惑かけるのはやめてもらいたいかなぁ。
「ラ~ララ~ラ~……あら、思ったよりも早く来たのね、ローズ・コフィール……良かったわね、私がお人形さんで暇潰しを始める前に間に合って」
「なるほど……私が来るのが遅かったら、あちらこちらで倒れてる人達で何か遊ぼうとしていたと?」
「まぁ、簡単に言えばその通りね。けど、あなたが間に合って防げたからよかったじゃない。さて……私は上からあなたを傷つけるように言われているの。だから無駄話はここまでにして、始めましょうか。……起き上がりなさい、あなた達」
私は池に辿り着く。そして……いた。歌い終えたばかりの薄黄色の髪をした、上半身は人間、下半身は鳥の怪物……セイレーン。っていうか……やっぱりメサークかシャクヤどっちかの仕業なんだね。あと私狙われてるのか……




