兄妹
「……はぁ。本当に馬鹿じゃのう、兄上は」
「まさか、お前にこんな姿を見せる日が来るとはな」
「以前、ローズと引き分けた、と言ったじゃろう?あれは嘘じゃ。妾の提案で引き分けということにしたまで」
「つまり……本気でやりあっていたら負けていたと」
「それはわからんが……兄上の場合は、百負ける原因があった」
「そんなものはわかっている」
「兄上が思ってる以上にリリーとローズはお互いを愛し合っておるのでな。愚弄されたとあれば情なんて秒で消え去る。……調子に乗った弊害じゃな」
砂漠の地面に大きく空いた、月光が差し込む穴の中にアリアは舞い降りて、ロクロに話しかける。……なるほど、アリアの方がずっとまともだったんだ
「まぁ、どの道負けておったじゃろうな。ローズには適合と適応がある故、どんな技であろうとも二度は通じん」
「手数で負けるか」
「なかなかに面白い奴じゃろう?」
「私が初めて敗北した相手だからな。しかも、人間と来た。面白いと言わずしてなんと言おうか」
「さて。これに懲りて、大人しくしていることじゃな。どこに手を出そうと遅かれ早かれローズらには伝わるからの」
「……はぁ、大人しくしているとしようか。こんな目に遭うのはこりごりだ」
……意外と話せばわかるタイプなのかな?それとも、私達に負けたから大人しくなったのかな?
「ローズ。そろそろできそう?」
「うん、えっと……ほいっ」
会話が終わり、アリアは屋敷のほうに戻っていった。……かんっぜんに忘れてた。アリアも転移魔法は使えるんだった。まぁいいや。とりあえず、街の修復だ。
治癒魔法と時間魔法を組みあわせて、街をロクロが襲撃してくる前に戻す。元の形は知らなかったけど、リリーの記憶を少し見させてもらってそれを頼りに戻していく。それから十秒ほど経過して、ボロボロの街がまるで嘘のように綺麗な街が出来上がっていた。沢山の家に、雑貨屋などの店、それから街の大部分を担う発電所等々。あとは、ここにみんなを戻せば完了だ。
【マイ、準備が整ったよ。みんなに伝えてくれる?】
【了解しました、ローズ様】
実はちょっと前にマイ達に話をつけて、リービアの人達を一時的にサヴェリス邸で預かってもらうことにしていた。マイなら魔法通信もできるし、何かあっても大丈夫だし。さて、それじゃあ後は強制転移をしておしまいだ。
【皆様も準備が整っているみたいです。いつでもどうぞ】
【おっけー!ありがと!】
転移させるのはざっと三十人くらい。そこそこ魔力を持ってかれるけど、その対策として魔力を解放しているから問題は無い。ロクロとの戦いのダメージもそんなに無いし、全然行ける。
「せーの、ほいっ」
「戻って……あ、見てお兄ちゃん!街が!」
「す、凄い!街が完全に戻ってる!」
「ありがとうございます、ローズ様、リリー様……本当に、なんとお礼を申せばいいものやら」
「ニア、レアラ……本当にありがとう。あなた達が見つけてくれなければ、きっとこんな光景は見られなかったわ」
転送すると、街の人々が次々と驚き出す。そして街の一番偉い人かな?が、私達に頭を下げてきたり、あとはクレスがニアとレアラを優しく抱きしめてたりしていた。……まぁこれで、上手くいったなら良かった。
「いえいえ、私達はただ頼まれたことをこなしただけですよ。そして、これからこの街の皆さんが何事もなく過ごせそうでよかったです」
「助けていただいた身であれですけど……折角ですし、今晩泊まっていかれてはどうでしょう?我が街の全てを持っておもてなし致します」
泊まりか……んー、どうしよう……いや、でも放っておくのは不安だからな……一晩くらいならいいか。お母様にも後で話しておけばいいし。
「では、お言葉に甘えさせていただきますね」