少女達との出会い
「んー……暇だ~……」
「もう学校は無いからやることも特にないしね~……あ、そうだ」
卒業式から二ヶ月ほど経過した五月中旬。ここ数日ずっとそうだったのだが、特にやることがない。こう……この世界、家で遊べるゲームとかもないし……ゴロゴロしてるだけだと超暇。
「ん?どうしたの?リリー」
「折角ならさ、ちょっと旅してみない?」
「旅?」
「そ!私達は今までずっとクロッセオ、アダリエ、スジャミーしか行ったことがなかったでしょ?多分本来のストーリーが変わった事で、色々な場所が変わってると思うんだよ」
「あ、いいかもそれ!楽しそう!移動も私の転移魔法使えばすぐに行けるし」
「そうと決まれば行こう!折角だし、マイ達も誘って……」
とリリーと話していると。ヒュゥゥゥゥゥという普段あまり聞かないような、何かが落下してくるような音が聞こえてきた。
「リリー、何か落ちてきてる!!」
「えっとあれは……隕石?いや違う、あれ魔族だ!!」
「落下地点は……アダリエだね、行くよリリー」
「うんもちろん!」
なんで急に魔族が……?というか、あのまま落ちられたら絶対街に被害が出るから急ぎ行かないと。幸い口だとか着替えだとか移動だとかは一瞬で済ませれる。
よし、ぱぱっと止めちゃおう!
「落下地点は多分ここだよ!」
「おっけー!じゃあちょっと私が一発、行こうかな。……解刀緋桜三ノ解・炎波刃!!」
「なっ、なっ!?」
リリーが落ちてくる魔族に炎の衝撃波をぶつける。すると魔族は勢いを弱めてそのまま落ちてきた。
「何故人間に俺が……いや、それよりもあのガキはどこいった!!」
子供……あぁ、そういえば転移してきて直ぐに逃げてって言ったんだっけ、私が。それで確か……そこの宝石屋?に入っていったのを見た。
「無害な魔族だったらどうしようって思ってたけど……ちゃんと害あるタイプでよかった」
「そこの女二人……お前らのせいでガキを見失っちまっただろうが」
「だから、責任取れって言いたんだね?」
何となく察した。あの子は追われている身で、助けないといけない訳だ。じゃまぁ助けるんだけど……一個実験。
「リリー、もしやるならさ、私にやらせてよ」
「んー……おっけー。でもやりすぎないようにね、ローズ」
「な、なんだこれは……体が動かねぇ……」
「ローズ、何かした?」
「うん、実験。面白そうな魔法?の応用を見つけたから」
私の能力だとなんでもやり放題だから、魔法の融合等々も可能というわけで。闇魔法を上手いことやって作った『威圧』。私が敵対視した相手を対象に、効果としては動けなくさせる他恐怖心を強く刺激したり能力の大幅な低下などがある。
「……で、やる?」
「ちっ、撤収だ」
そう言うと、魔族は転移魔法で戻っていった。……なるほど、転移魔法使えるのか。厄介だな。
「……もう行ったよ。大丈夫?」
「あの……ありがとう、ございます」
「お姉ちゃん、ありがとう」
完全にいなくなったことを確認して、私は宝石屋の方に目を向ける。すると、中から少年と少女が少し不安そうにして出てきた。
「君達、名前は?」
「僕は……レアラ、です。そしてこっちが、妹の……」
「ニア、です」
レアラにニア……うん、全く聞いた事ない名前だ。
見た目だけで判断するのもあれだけど……多分レアラが十三歳、ニアが十二歳って感じかな?
「レアラにニアだね、覚えたよ。私はリリー。リリー・クレスアドル。で、こっちが」
「ローズ・コフィールだよ。いきなりだけど、ちょっと質問しても……」
「……っ!ローズ様!リリー様!」
少し質問しようと思ったら、私達の名前にやけに反応をした。これ、多分私達に何か解決して欲しい問題があるパターンだよね。まぁどの道助けはするんだけど……聞きたいこともあるし、ちゃんと聞こうか。
「私たちは、あなた方を探していました!」
「まぁそれも含めて、だね。聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
「はい、もちろんです!なんでもお聞きください!」
「じゃあまず……二人はどこから来たの?それに、追われてたようだったけど」
とりあえずこれを聞かないと何も始まらない。二人がどこから来て、何故追われているのか。それらを踏まえた上で、私達を探していた理由も聞きたい。
「僕達はここクロッセオよりも遠くにある、リービアという街から来ました」
「リービアか……確かあそこは砂漠を抜けたすぐそこにある街だったよね。だいぶ前だけど行ったことあるよ」
リービア……初めて聞いた。私外の世界にはかなり疎いからなぁ。行ってみたいかも。……いやまぁ多分行くことになるんだろうけど。
「はい。砂漠と言っても、特に魔物がいる訳ではなくここ数年は平和に暮らせていたのです。ですが、つい先週に狐の化け物が街に現れて、それから街をめちゃくちゃに破壊し始めたのです」
うわー……凄い定番の流れだ~……ってそれよりも狐の化け物?え、妖狐族?
「もしかして、さっきのあいつもその狐の指示?」
「はい。その狐の化け物は魔族達を従えて、街の人々を誰一人とて逃すことなく始末するようにと命令をしました。なので、私たちはずっと追われてたんです」
「それで、どういう経緯かは知らないけど私達の事を知って、助けを求めに来たって感じ?」
「狐の化け物が言っていたのです。『ローズ・コフィールとリリー・クレスアドルとの戦闘は避けろ。あれは貴様らには到底勝てるような相手ではない』と」
まぁやっぱ魔族には私たちのことは知れ渡ってるよね。私の場合、アリアを従えてるから妖狐属なら尚更ね。
「その狐の化け物について何か情報はある?」
「お母さんが言ってたの。予言?っていうんだっけ。『満月の晩、月より出でし黒き狐が月を喰らう』って」
「なるほど……その狐は満月の夜に現れる感じか」
【……さて。アリア、何か知ってることは無い?】
【話を聞く限りだと、恐らく兄上の仕業じゃろう。……最近大人しいと思ったらローズらを避けて蹂躙を楽しんでおったとは】
【アリアの、お兄ちゃん?】
【あぁ。実力も妾より上で、妾よりも遥かに冷酷で残忍な性格をしておるが……まぁそなたらの敵ではないじゃろう。それに加えて……その小娘の言う通り、奴は満月の晩でないと真価ははっきできないのじゃ】
【おっけー。じゃあちょっと倒してくるから、何かあったら頼んだよ。お母様達を守ってね】
【……了解した】
「」