卒業パーティー
「卒業生、お疲れ様。ローズ、スピーチ凄かったわよ。それに、リリーも」
「ありがと、お母様」
「ありがとうございます」
お母様の提案で、私達みんなで卒業パーティーをする事になった。
「まさかオレまで呼んでもらえるとはな。卒業するわけでもねぇのに」
「レイス、せっかく呼んでもらったんだから楽しもうぜ。ていうか楽しまないと俺が全部飯食っちまうぜ?」
「それは私達が困るのでやめてください、兄様。まぁですがそうですね。折角呼ばれたのですから、楽しみましょう、レイス」
「……わかってるっての。じゃ、それじゃあ全力で楽しむとするか!!」
「やっぱり未だに貴族の方々のパーティーというのは慣れないな……」
「そいやぁ完全に忘れてたが、ジークは平民だったな。平民のパーティーってどんな感じなんだ?」
「内容はほとんど変わりませんが、色々と規模がここより小さい感じです。手料理だとかお菓子とかでやりますし」
「たまにはそういうのも悪くないかもしれませんね。皆でやれるのであれば楽しいでしょうし」
私達はもちろん、ジークに……それからシャクヤにシンなど、私達と関わり深い人を呼んである。今は夕食のバイキングで、レイス達がわちゃわちゃしてるのが目に入る。
バイキング……そういえば私達って貴族なんだった。完全に忘れてた。いやまぁ、正直なところ貴族とか平民とかそんなのは一切気にしてなかったから……ね?
「コフィール婦人、本日はお誘い頂きありがとうございます」
「あら、サヴェリスさん。こちらこそ、お越しいただきありがとうございます。うちのローズがだいぶお世話になったみたいですし、是非楽しんで行ってくれると嬉しいわ」
「いえいえ、そんな……寧ろ私の方がお世話になっているくらいで」
「まぁ、あの子らしいわね」
そういえばお母様とシャクヤが話してるとこってあんまり見た事なかったかも。なんか新鮮だな。
「このマフィン、美味しいですねぇ~」
「聞いた話によると、チョコマフィンとマカロンはローズとリリーの手作りらしいですわ!」
「あ、ちょっとシン!食べ過ぎです!!」
「お嬢様も沢山食べればいいじゃないですかぁ~」
「さ、私達も楽しもっか」
「うん、そうだね」
「いやぁ、こうしてると思い出すなぁ。前にも言ったけど、ローズと初めて会った時のこと」
「ラーベル主催のパーティーだったよね。最初すごいびっくりしたのを覚えてるよ」
見渡す限りどこも沢山の笑顔に溢れていて、こっちまで幸せになってくる。……そばにリリーもいてくれてるし。
「……そうだな、じゃあまずはご飯食べよう!!お腹すいてるし!」
「うん、そうだね。よーし、いっぱい食べよ!!」
「我儘言っていい?一個」
「ん?なぁに?」
「私のチョコマフィン、食べて欲しいな」
「ふふっ、もっちろんだよ!!」
それから、沢山リリーや皆と食べて、話して、踊って。まるで夢のような時間が少しずつ過ぎていった。
「……もう後ちょっとで終わっちゃうのかぁ」
「パーティーなんて、いつでも開けるよ。そうだなぁ……次やる時は今日以上に誘っちゃおっか。コナツとか、ジンとか」
「いいね、それ。今度はもっともっと誘ってやりたい!」
「よし、じゃあ最後の最後まで精一杯楽しむよ!」
時計の針が十時を指し、パーティーは終わりを迎えた。まだ楽しい気持ちが胸に残っており、何かに動かされたのか気づいたら何故かバルコニーにいた。
「……あれ、今日はいつもより早いね」
「あはは……気づいたら動いちゃってた。そういうリリーこそ、よくわかったね」
「何年一緒にいると思ってるの?わかるよ。ってあぁ、そうだ。その……プレゼント用意したんだけど」
「え、ほんと?」
まさか、リリーもプレゼントを用意してたなんて。
そう、実は私も卒業パーティーを開くとお母様から聞いた時に直ぐにリリーにプレゼントを渡したいと思って、用意していたのだ。
「うん。卒業祝い……的な?」
「これは……ヘアピン?」
「うん、薔薇のヘアピンだよ。この前売ってるの見つけちゃってさ」
「あのさ、リリー」
「なぁに?ローズ」
「奇遇だね。私もだよ」
「え、あ……そうだったんだ。ありがとう、すごく嬉しいよ」
「私はこれ、百合のヘアピン。リリーに渡したかったからさ、いっぱい探し回ったんだ」
以心伝心……なのかな。私もリリーも、お互いに名前の由来となった花のヘアピンがプレゼントだった。
……これからずっとずっと大事にしよっと。
「そこまでしてくれてたんだ。……だったら、尚更嬉しいな。好きな人にここまでされちゃったから」
「私だって嬉しいよ。って言うか、論点ずれるかもだけど好きな人から貰ったものはなんでも嬉しい」
「ね、早速一緒につけようよ」
「うん、いいよ」
早速開封して、お互いに髪につける。……リリー、すごい似合うな。短くなった髪がより引き立たせてる感じ。……綺麗。
「……似合ってるよ、リリー。言葉にできないくらいに、綺麗」
「ローズこそ、似合ってるし、超綺麗。……薔薇みたい」
「それならリリーだって、百合みたい」
「ローズ……その、もう一個プレゼントがあるんだけど……貰ってくれる?」
「何でも貰うよ。リリーがくれるものなら」
そう言った直後。リリーが思いきり私に抱きついてきた。……えっと、これは……そういうこと、でいいんだよ、ね……?
「……ローズ。卒業おめでとう。愛してるよ」
予想通り、そのままリリーが唇を合わせてきた。
未だにちょっと照れちゃうんだよなぁ。私、本当にリリーには弱いし。
「……は、はい!これでプレゼントはおしまい!私はそろそろ戻るよ!」
「……」
「えっと……ローズ?」
まただ、また体が勝手に動いた。体が勝手に、リリーを抱きしめた。……少しでも慣れるためにも、もうこのままいっちゃえ!!
「私だって、負けないくらいに愛してる」
「んっ……」
自分の唇を、リリーの唇に重ねる。……ほんの少しだけ、濃くなっちゃった。……私、明日リリーの顔見れるかな……
「えっ、あ、あの……」
「……私も、もう戻ることにする!!」
「う、うん……戻ろっか」