デート、その後
「……んー、私もそれくらいからもう好きだったかも。だってリリーが私を変えてくれたんだよ?」
「それを言うなら私だって。ローズには何回も救われたし、そのおかげでもうちょー大好き」
「……あはは、やっぱりまだちょっと実感ないかも。嬉しすぎて」
「それはわかるかも。……でも意外だったな、ローズからきてくれたなんて。もちろん、言葉にできないくらい嬉しいんだけど」
「なんて言ったらいいんだろうね。結果としては今世一番喜ばしくなったんだけど、最悪だったっていうか」
「最悪?」
「なんかね、リリーの背中を見てたら勝手に体が動いて腕を掴んじゃって……それで、言いかけたところで意識がはっきりとしてきて」
雪が降る街を、リリーと手を繋いで話しながら帰ってく。……あぁ、これが私の心から望んでいたことなんだな。手を繋ぐなんて以前からずっとしてた。けど、リリーと付き合えたからなのか……いつもよりリリーの手は暖かく感じるし、いつもよりもずっとドキッとする。
「そっか。……あー、もう気持ちを抑えなくてもいいからなのかな。手繋いでるだけでも凄いどきどきするね」
「ね。私もすごいドキドキしてる」
「先に言っとくと、ローズが思ってるよりも私ずっとローズにドキドキしてたから」
「それを言うなら私だってずっとドキドキしてたよ」
……ちょっと可愛いなって思っちゃった。けど、口にしたら多分リリーにからかわれちゃうから黙っておこ。と、そんな感じで話していたら家に着いた。
「よーし着いた!!」
「改めて……ローズのメイドになってよかった。だってずっと、ローズと一緒にいれるんだから」
「それは私もだよ。リリーがメイドになってくれてよかった。もうゲーム本来の展開なんて微塵もないけど」
「これからも、ずっとずっと一緒だよ」
「うん、もちろん。……勝手にいなくなったら、恨むから」
「私がいなくなると思う?一人じゃなーんもできないのに」
多分、他の人が見たら重いって言われると思う。けど、私からしたらそれがとても嬉しい。初めてできた恋人。沢山愛したい、愛して欲しい。
「おかえりなさいませ、お嬢様、リリー様」
「アベル、ただいま」
「その様子からして……ふふ。どうやら、奪われてしまったみたいですね」
「……はい、奪わさせてもらいました。お嬢様は私のものです」
「おめでたいですね」
階段からアベルが降りてくる。……リリーの切り替えもそうだけど、アベルも察するの早くない!?
「今宵はクリスマスですし、何よりお二人はまだ交際を始めたばかりですしね。……リリー、今宵は完全オフで構いません。どうぞごゆっくりなさってください」
「それはありがたいですね。ありがとうございます」
「リリー、ちょっと先行ってて」
「はい、承知しました」
そういえばアベルにお礼を言えてなかったので、ひとまずリリーを先に部屋に行かせる。
「アベル、ありがと。アベルのおかげで気持ちを伝えることが出来たよ」
「いえいえ。私はあくまでお嬢様の背中を押す……いや、お嬢様の背中に触れただけです。そこから踏み出したのはお嬢様ですよ」
「そっか。……ありがと」
「お嬢様。そんなふうに笑顔を易々と振りまいてちゃダメですよ。誰もがころっと落ちてしまいます」
「アベルって、そんな事言うようになったんだ」
「お嬢様のおかげですよ。俗に言う、『恋は盲目』というやつです」