聖夜交わる想い
あの後、何となくリリーも察してくれたのか何事もなくその日を終えて、それ以降あの夢を見ることは少なくなりまたリリーとはいつも通りになった。
そしてあれから三ヶ月が経過して、今は十二月二十四日。そう、クリスマス。そして私は今……
「んー、やっぱクリスマスなだけあって人が多いね」
「だね。はぐれないようにしないと」
リリーと、アダリエにデートに来ている。昨日、リリーが『珍しくマイ達は予定があるみたいだからさ、今年のクリスマスは二人っきりで楽しんじゃお』って誘ってくれた。いつもクリスマスは四人でパーティーをしているのだが、今年はマイもイリアも家族と過ごすらしい。
「手、繋いどこっか。割と冷えてるしね」
「うん、そうだね。……やっぱリリーの手、暖かい」
「ふふ、嬉し。ありがと」
「いえいえ」
「あ、見てローズ。新しく服屋さんができてるよ」
「ほんとだ。ちょっと寄ってこっか。オソロコーデとかしてみる?」
「んー……うん、する」
まず最初に入ったのは服屋。今まで見た事なかったから、つい最近できたばっかなのかな。
「できれば暖かいのがいいからな~」
「だったら、これとかどうかな?えっと……パジャマになっちゃうけど。モコモコしてて可愛いし、あったかいと思う」
「パジャマ……うん、いいね!色も可愛いし、そういえば私パジャマ持ってなかったし。……じゃあひとまずこれは決定でいいね。今日から早速着よっか」
店内をふらふらしてると、モコモコしてるパジャマが目に入ってきた。見た感じサイズも良い感じだし、色もピンクと白、水色と白の水玉模様だし。何より、最近はずっと朝も寒い事が多くなってきたからあったかいふわふわのパジャマが欲しかった。
……その後も、お揃いのヘアバンドや上着など、沢山買って私達は店を後にした。
「ふー、いっぱい買っちゃったね」
「ね。棚に入りきるかな」
「あれなら私が大きくするよ?」
「じゃあ、ぎゅーぎゅーだったらお願いするよ。それじゃあ次行こっか、次」
「うん、そうだね」
「次は……あそこなんだけど、さ」
次リリーが不思議そうな顔をして指を指す。リリーが指さした方を見ると……え、ゲームセンター!?なんでこの世界にゲームセンターが!?
「ねえリリー、あれってもしかしなくてもさ」
「うん、ゲームセンターだね」
「この世界にゲームセンターってあるんだ……」
「なんかアダリエは運営陣の地元がモチーフになってるらしいから……クロッセオの方より都市開発っていうか……進展?が早いんだと思う」
「それにしてもゲームセンターかぁ……どんなのがあるんだろ」
「どうだろうね。ここも新しく出来たみたいだったからさ」
そんなことを話しながら、私達はゲームセンターに入っていった。
「凄い……私達の知ってるゲーセンそのものだ……」
「あ、でもところどころ違うっぽいよ」
見渡す限りどれも昔に遊んだことのあるゲームばかりだった。けど、ところどころ変わってて魔法を用いるものがかなり増えていた。
「あ、見てローズ!ホッケーだよ!!」
「ほんとだ!懐かしいね。やってく?」
「うん、やろやろ!」
急にリリーがはしゃぎ出して、何事かと思えばホッケーを見つけたらしい。……可愛いな。そういえば紗蘭とゲームセンター行く時は絶対ホッケーしてたっけ。昔の記憶がどんどん蘇ってくるな。
「……よし、負けないよ」
「ふふ、私だって負けないから!!」
「それじゃあ……よーい、どん!!」
お互いに軽めの強化魔法を使い、時間いっぱいまでやりあった結果、千五百対千四百で私が勝った。ホッケーで……しかも三分でこんな点数行ったの、初めて見た。ちょっとやりすぎちゃったかも。
……とまぁ、そんな感じでホラゲーやら格ゲーやら色々遊び尽くした。
「あ、プリクラだ。ローズ、最後に撮ってこ!!」
「いいねいいね、撮ろ!!」
そして結構な時間が経ち、最後にリリーの提案でプリクラを撮ることにした。……あれ、プリクラってどんな感じだったっけ。久しぶりすぎて覚えてないや。
『それじゃあ最初はピースから!三、二、一!』
あー、思い出した。このテンポよく撮るのとか、カメラ見てねーだとか、何となく思い出した。
『がおー、こわ~いオオカミさん!三、二、一!』
……狼ポーズのリリー、超可愛い。
『さぁ、二人ともくっついて!』
「これくらいかな?」
「うん、多分それくらいだと思う」
『最後は二人でハートのポーズ!三、二、一!』
これはちょっと恥ずかしいかも。前世のプリクラはこんな感じじゃなかったから……それに、私がリリーを意識しすぎちゃってる。
『おしまい!デコレーションルームに移動してね!』
五枚くらいか。を撮り終えて、隣に置いてあるデコレーションルームへと移動する。私、可愛くデコれないから苦手なんだよなぁ。
「こうして……あ、猫耳つけちゃおっと」
「わ、すごい。可愛い」
「でしょ。私プリクラ好きだからね」
リリーに色々と教えて貰いながらも、無事にデコを終えて印刷されたのを取る。
「これ、大事にするね」
「うん!私も大事にする!」
プリクラも終わって、外に出ると辺りはもう暗くなっていた。今は……大体六時か。
「おー、ちょうどいい暗さにちょうどいい時間だ。ローズ、お待たせ。今日のメインディッシュだよ」
「メインディッシュ?」
「そ、超メインディッシュ!!……クリスマスツリーだよ!」
リリーの後を歩いていくと、白・緑・赤に光るクリスマスツリーが目に入る。……綺麗だなぁ。
「改めてローズ、今日はありがと!お陰様でいつもより楽しいクリスマスを過ごせたよ」
「うん、どういたしまして。……あれ、雪?」
「わ、初雪だ!!エモいね~」
「ね」
……いつまで、私はこの気持ちを隠しているんだろう。好きって、言いたい。リリーに好きって、言いたい。
「来年も行こうね!」
「うん、絶対いく」
「よーし、それじゃあ帰ろー!!」
そう言ってリリーは私の前を歩き始める。……次の瞬間。私の体が、勝手に動いてリリーの腕を掴んでいた。……あれ、なんで?体が、口が、言うことを聞かない。
「ローズ?……どうしたの?」
「あの、リリー……」
「?」
「だ……」
「だ?」
……もう、こうなったら言うしかない。届けるしかないんだ、私の気持ちを。大丈夫、今なら言える。
「……大好き。私と、付き合って。……くだ、さい」
「はぁ……もう。遅すぎるよ、ばーか」
「あはは……ごめん。遅くなっちゃった」
「あぁ、それで答えだったよね。……もちろん、喜んで。今までずっと、これからもずっと。私は、ローズが大好き」
「はぁ……これでもう、隠さないでもいいんだよね。我慢しないでもいいんだよね」
「うん、いいよ。私も隠さないし、我慢しないから」
「それじゃあ……」
クリスマスツリーに照らされる人々。しとしとと街を白く彩る初雪。……そして、交わる唇。付き合って初めての、キス。これが、幸せの味……なのかな。すごい幸せだ。
十二月二十四日。私はこの日を生涯忘れない。だって、一歩進んだ日だから。
「リリー、大好きっ!」
「ふふ。私も大好きだよ、ローズ」