いつもと違う日々 一
それからまた時間は経ち、学校を終えて今は下校する途中。マイ、イリアと別れて、リリーと一緒に帰っている。そう、今日からもうリリーは私のメイドなんだ。ゲームの展開考えるとちょっとおかしな話だけどね。無理やりメイドにするのが本来の展開なのに、主人公側からメイドになるなんて。
「お帰りなさいませ、お嬢様。あら、リリー様も。その荷物は一体?」
「ただいまアベル。丁度良かった。リリー、今日からうちのメイドだから」
「よろしくね。アベル……様」
「……え?」
「えっと、実は……」
家に着いたら、たまたまアベルが家の外をほうきではいていたので、リリーの紹介をする。すると、アベルは目を丸くして驚いていた。ので、勝負の件を話した。
「どうりで……お嬢様は燃えていたわけですね」
「うん、それで私は負けちゃったからね。だから、ちょっと荷物もってきた」
「そういう事でしたら……このメイド長代理アベル・スターリアが、誠心誠意教育係を努めさせて頂きます」
「アベルが教育係するなんて珍しい。いつもは他の子達に頼んでるのに」
「リリー様なら基本なんでもこなせそうなので、私がやります。という事ですので、準備が終わり次第メイド部屋までいらしてください。いいですね?……リリー」
結構アベルは仕事のオンオフが激しい子で、どれだけオフの時に慕っていてもオンになったらひたすら仕事人間になる。どれだけ目上の人間だろうと仕事の、下の立場の人間には敬語は外れるし結構ズバズバ言うようになる。一切公私混同はしない子だ。……まぁ私にはしてるみたいだけど。
「失礼します、お嬢様」
それから二時間くらいして。ちょっとぐったりした様子でリリーが私の部屋に来た。
「あれ、リリー。アベルは?」
「アベル様でしたら、お仕事が残ってるみたいでそちらの方に取り組むとのことです」
「……リリーに敬語使われるのは違和感しかないなぁ。二人だけの時は崩してもいいよ。これは私からの命令ね」
「流石にアベル様もローズが決定したことなら何も言わないと思うけど……」
「郷に入っては郷に従え、だよ。私と二人きりの時はいいけど、アベルがいる時はちゃんとアベルの指示に従ってね」
「うん、わかった。じゃあ今だけは、いつもみたいに」
今更だけど……リリーのメイド服、超可愛いな。武術大会で髪切って短くなったのも含めて、まさに絶世の美女って感じ。こんな超可愛い子が私の専属メイドなんて……嬉しすぎて死んじゃいそう。ほんっとに大好き。
「ねぇローズ。そういえばお風呂ってまだだったよね?」
「え?うん、そういえばまだだったな」
「私もまだ入ってないんだ。だから……一緒に入ろ?二人でさ」
……ちょっと待ってちょっと待って!!あれ?リリーってこんな積極的だったっけ!?いや、別に私はいいんだけど……いいんだけどっていうか嬉しいんだけど、距離の詰め方がいつもと違う気がするんだけど……??
「……いいよ。行こっか」
「ふふ、ありがと」
……ってことで私は今、リリーとふたりで入浴をしている。……みんなで何回も泊まったはずなのに、なんかリリーと二人きりでお風呂入るのはちょっと……いや、だいぶ恥ずかしいな。
「お嬢様、お背中お流ししますね~」
「リリー、それ言いたいからやってるでしょ」
「ごめいとーう。ってことで大人しく私に背中を流されてね」
う……あぁ、やばいやばいやばいやばい!!すごいドキドキするんだけど!?リリーってこんなにずるかったっけ!?た、タオル越しに胸が背中に当たって……
「ローズが考えてること、答えてあげよっか?」
「え?」
「……当ててるんだよ?」
え、ちょ、あの、まって……り、リリーが本当に積極的すぎるし……なんかいつもよりもえっちだし、本当に何があったの……??
「リリー……どうしたの?なんか変だよ?」
「……正直な話ね。今の私、ちょっとはしゃぎすぎちゃってるのかも。こうやってずっと前から私の唯一の憧れで、理想で。私にとってはそんな太陽みたいな先輩と、ずっと一緒に入れて……私が先輩の身支度を沢山して。たくさん、お話出来て。それが、何よりも嬉しすぎて。……迷惑だったよね、ごめん」
「迷惑なんかじゃないよ!!本当に、迷惑なんかじゃないよ。むしろ、とても嬉しい。私だって、ずっと一緒にいたかったから。こうしてお世話してもらえること自体嬉しいし……起こして貰えて、髪も整えて貰えて。そんな明日が、明後日が。リリーに仕えてもらえる毎日が。私はきっと何よりも幸せで、言葉にできないくらいに楽しみ」
「……本当にずるいな、ローズは。それから……鈍すぎるよ」
最後の方はなんて言ってたか分かんなかったけど、私にしては珍しくリリーを照れさせれた。……ていうか。リリーの方が、よっぽどずるい。今日だけで何回ドキドキしたか。