Cブロック 準決勝
そして翌日。あんなことがあっても闘技場は一日経てば完全回復なのだから、本当にどんな作りをしてるのかわからない。……と、それより今日は私だ。
リリーに対するプレッシャーだとか、あんな熱い試合を見せられたばかりでかなり気合いは入ってるけど、リリー戦のために残せる手は残しておきたい。
『会場にお集まりの皆様、お待たせいたしました。ただいまより、武術大会Cブロックを始めます』
今日の放送担当は……あれ、レイス?ってことは、今年の司会……っていうか放送担当は、二年生だったんだ。声だけでもわかる。こんなに大人しそうな雰囲気のレイスは初めてだ。っていうか……ちゃんと見てるのね。
まぁ例の如く特に手応えがある訳でもなく、準決勝のリアンまでは以前の私でも手を抜いて楽に行けるので、覚醒で得た力は一切使わずに楽々と勝ち進んでいった。
「あれ、リリー。こんなところで会うなんて奇遇だね」
「奇遇ってか、会いに来たんだけど」
「……え?」
十分の休憩時間になったので、控え室?のような場所まで行く。その最中で、リリーに会ったんだけど……リリーが、私に会いに来てくれた!?
「お疲れ様、って。それだけだけどね」
「ありがと。でも、まだ適応と適合は使ってないんだけどね」
「次はリアンだから使うでしょ?」
「さすがリリー、お見通しだね」
「そういうこと。まぁローズなら何があっても負けないんだけど、頑張ってね」
「うん、頑張ってくる。でも、ひとつも手札は見せないからね?」
「わかってるよ。私も手札はまだ裏返したままだしね。あわよくば見れたら嬉しかったけど」
「でもまぁどの道見せたところで対処はされないからね」
「そういうこと。……行ってらっしゃい」
「行ってきます」
リリーは私に明るく笑いかけてくれる。あぁ、私の大好きな笑顔だ。とても明るい、太陽みたいな光。リリーのおかげで、やる気が湧いてきた。リアンには悪いけど、ぱぱっと決めさせてもらおう。
『休憩も開けたところで、Cブロック準決勝を始めて参りましょう。まずは、選手に登場して頂きましょう』
『まずはこの方、二年経った今でも実力は衰えず。圧倒的な魔力と頭脳で、二年前同様にあっという間に他選手を薙ぎ倒していく我が校が誇る最強の生徒会長。ローズ・コフィール選手』
「悪いけど、そろそろ覚醒した力も使わせてもらうよ」
初戦の時からだけど、やけにレイスが私の紹介に力を入れてる気がするんだけど……それは、私だから?
『相対するはこの方。我らがムース王国の第一王子。二年前は惜しくも破れてしまったが、今回はどこまで行けるのか?リアン・ムース選手』
「そろそろ来ると思ってたぜ。さぁ、全力でかかってこい」
そしてまたいつもどーりに闘技場の中央へと進んでいく。……卑怯だと思うけど、時止め使うとか?んー……それでいっか。それだとなるべく闘技場への被害は抑えられるしね。
『それでは両者、位置について。用意……始め』
「秒で決めるよ。妖舞・乱れ火」
始まった瞬間に時を止める。そして、乱れ火を放ち時間停止を解く。まぁこれくらいならいい……よね?加減はしたし。
「……そりゃあ、ずりぃだろ……」
時間停止を解いたら、すぐにリアンは倒れた。……何が起こったのか分からず、観客席がざわめき出す。……まぁ、これくらいでいいでしょ。一番の問題はリリーだから。きっと、リリーならこれさえも通じないから。
『リアン選手の戦闘不能を確認。勝者、ローズ選手』
さすがレイスだ、一切の驚きもなく淡々と司会の仕事を全うしている。けど、声からわかる。もう少し何か大きなことをして欲しかったと。……まぁあくまでメインはリリー戦だからね。よし、全力でやらないと。