決着
「ふふ……ははは。まさか仮面が破壊されてされてしまうとは。我ながら大失態ですね」
リリーの攻撃によって激しく撃ち落とされたメサークが全回復しながらそう笑う。そして仮面が割れて、メサークの素顔が明らかになる。その目は黒く、左目にクローバーの紋章が浮かび上がっている。あの目、絶対めんどくさいよね。
「ローズ、行く……え?」
「え?なに、が……」
瞬きをした瞬間。私は吹き飛ばされていた。すぐに吹き飛ばされてることを理解して受け身を取れたから良かったものの、一切何も見えなかった。
「この目は生まれつきのものでして。仮面で封じていたのですが、砕かれてしまってはしょうがない。……気になっているのでしょう?この目に、どんな効果があるのか」
「気になってるって言うか……めんどくさいだろうとは思ってる」
「まぁざっくり言いますと、この目の効果は魔力上限を取っ払うというものです」
「魔力上限?」
「はい。そうですねぇ、更に砕いて言うなら……魔力を底無しにするということです」
え、何それ強くない?要するにあれだよ?柱魔法を二百発連発できたりするってことだよ?
「でその底無しの魔力を身体強化につぎ込むと……こういうことが出来るわけです」
「ローズ!!」
「リリー!!」
また、一瞬の出来事。わけも分からず私とリリーは吹き飛ばされていた。……本当に厄介だ、あれは。
「代償も何もなし。タイムリミットもなし。解除方法は仮面などなにか顔を隠すものを被ることのみ。さぁ、どうでしょう?裏ボスとしては十分にふさわしいでしょう」
「代償なし、か……一か八か、試してみるか」
多分できるはず。同じ人型バグのリリーの技もコピーできるんだから、きっとこれもできるはず。代償は……今は、考えないでおこう。とりあえず発現できるかどうかだけど……
「……まさか。この眼さえも真似してみせるとは。本当にどこまでも力の底が知れないですね、あなたは」
このメサークの発言から察するに、上手くできたのだろう。よし、何とか魔力の底は取っ払った。なら、もう一個試したいものがあるんだけど。
「ねぇリリー、私の実験に付き合ってくれないかな」
「この土壇場で?……まぁでも、ローズの事だからきっと打開できる実験なんでしょ?いいよ、付き合ったげる」
「急いでやるよ。……よし、上手くできたみたいだ」
「なっ!?な、何故リリー様にも眼が……??」
私のしてみたかった実験。それは、このコピーの無限にある能力を付与すること。前世で好きだったアニメキャラのことを思い出して、できるかもと思ってやってみた。結果として、できた。リリーの紫の右目からダイヤが消えて、その代わりにリリーの目には白い百合の花が浮かんでいた。……なるほど。じゃあ私は薔薇かな?
いや、にしても……本当にできることが多すぎるでしょ、この能力。あんな生まれながらにしての特異体質だとか、異なる世界のキャラクターの技とかも真似できるし。あ、でも別アニメの攻撃技はコピーできなかったな。
「あはは……なんかごめんね。できすぎちゃって。とまぁ、それはさておき。決着と行こう、メサーク」
「ローズ、一回私にやらせて欲しいことがあるんだ。試してみたいことがあるの」
「いいよ、きっと今のリリーなら大丈夫だしね。魔力が無限になったから」
「くっ……やるしかないみたいですね!!」
魔力が無限となれば流石のメサークの動きも見える。あー、多分これ終わったらしばらく目が死ぬやつだ。まぁ、いいか。そしてリリーが前に出る。
「じゃあ、試させてもらおっと。……緋桜、抜刀!!」
これもまさに一瞬の出来事なのだろう。リリーは鞘から緋桜を抜いて、一瞬でメサークの元まで飛び上がり、切った。そして高速で戻ってきて鞘に戻した。
今は魔力を視力に費やしてるからゆっくり見えたけど、これそうしなかったらあれだよね。アニメとかでよく見る、少し抜いただけで切れるあれ。
「くっ……がはっ。回復が、できない……?」
「あぁそうだ、言うの忘れてた。メサークの回復ができないってやつ。あれもコピーしてリリーに分け与えてるから」
ついでにね。どうせこのままだと泥試合確定だろうし。さて、それじゃあそろそろ幕引きにしようかな。新しく出来たあの技で、決めよう。
「正直こんなことはしたくなかったけどね。ほんの僅かでも仕留め損ねたらまたすぐ全回復されるのが目に見えてるから悪いけど……とどめ、ささせてもらうよ。リリー、炎魔法を付与するから」
「容赦ないなぁローズは。うん、わかった」
「いいでしょう、受けて立ちましょう」
私は思いっきり魔法をかまえ、リリーは緋桜を持って防御姿勢をとる。
「解刀緋桜・極の解」
「妖舞奥義」
「繚乱緋華!!」
「百炎乱狐!!」
どこからともなく黄色い狐火が現れ、現れては爆発を繰り返す。爆発が煙幕となり、メサークの視界を塞ぐ。そして、視界を奪った隙にリリーが全力で切り裂く。激しい魔法があわさって、大爆発を起こした。
「はぁ……私の完敗ですね。あなた方に付き合って貰ったこの二年間は、楽しいものでしたよ。ありがとうございました。……お母様。これは、私からの置き土産です。どうぞ、お受け取りください」
メサークの体が少しずつ薄くなってく。メサークは段々と薄くなってく手を伸ばし、空に向けて何かを放った。その、直後だった。
「な、何!?この揺れは!!」
「わかった!ダンジョンが崩れようとしてるんだ!」
「置き土産って……そういうことか!!」