開戦
「ひとつ塩を送りましょう。ここ、断戦のダンジョンは唯一私の全力が出せる場所。今までと同じとは思わないことです」
「上等だよ!どこまで知ってるかわからないけど、私もリリーも前とは違うんだから」
「やるよ、ローズ!」
メサークがどこまで今の私たちを知っているのか。何も知らないのか、はたまた私の覚醒も知ってるのか。
本気のメサークとやるのは初めてだから、ひとまず適応は通用しないことになる。一撃アウト系を初見で食らわされたらそれこそもう終わりだ。だからできるだけ警戒はしておこう。攻撃系統は今まで通り闇魔法……の中でも主に影で間違いなさそうだな。
「あぁ、ローズ様の適応でしたらしっかりと把握してますよ。……はぁっ!」
「……腕が!?」
「リリー!!」
メサーク闇魔法を手刀に纏わせて振り下ろす。一見、難なく避けたように見えたものの、次の瞬間にはリリーの腕から血が流れていた。メサークが今行ったのは影攻撃……要するに影と実体を重ねる影縫いのようなもの。これは、意識しないとめんどくさい攻撃かも。
しかも今ちらっと見えたけど、段々とここを照らしてる月が満ちていってる。長期戦になればなるほどこっちが不利になってくか。
そしてまぁ案の定私の能力は知られてたか。はぁ……このめんどくささや厄介さに強さなど全てがラスボスよりも上をいってるあたり流石は裏ボスだな。
「影縫い!!」
「技名を言ったら回避されることくらい、日本人のあなたならよくおわかりでしょう?」
「消えた……いや違う、リリー後ろ!!」
「それはもう、上の影武者で慣れてるのっ!!」
中々にメタい事を言ってくる。微々たるものだが日本に干渉できる……と言ってたから多少日本の知識があるのはわかってたけど、まさかこんな皆が疑問に思うようなメタい所まで頭に入ってるとはね。
っていうか影移動?影移動なら影に潜るからかえって影縫いに引っかかるはずなのに。リリーの背後に移動したのだが、それに関してはすぐにリリーが反応してノーダメージで対応できた。
「不思議でしょう。何故私が影移動できたのか。これも簡単な話ですよ、こちらの影縫いで相殺しただけです。いわゆる『目には目を、歯には歯を』ってやつですね。それにプラスして、私の場合は主に人の影に潜って移動するので」
「よし、やろう。……姿を見せて!緋桜!」
「緋桜ですか。これはまた面白い。そうですね……私も、あなた方と同じようにするといたしましょう。影の刃」
これは影攻撃……じゃなく、影と同化する程に真っ黒な衝撃波を放つ感じか。
「光の風!!」
「はぁっ!!」
「体が……おや、少し貰ってしまいました」
風魔法と光魔法をあわせて影の刃を凌ぎつつ、メサークに妨害を仕掛ける。闇魔法の使い手……の中でも特にメサークのような影を軸とした人は、かなり光魔法に弱いという傾向がある。ので、光の風をメサークにも浴びせた。結果、メサークの反応速度が低下しリリーの緋桜がメサークの肩を掠めた。
「やはり厄介この上ないですね、光魔法まで使えるというのは。では、そうですね……私も少々本気になりましょうか」
メサークの頭から二本の黒い角、背中から漆黒の羽が生える。うわー、ゲームとかアニメでよく見るやつ!生で見ると敵ながらかっこいいなー!!
「これでも私は裏ボスですからね。そう簡単に倒せるとは思わないでくださいよ?」