ダンジョン攻略 第四層 前
「うーんと、次の階層が最後かな?」
「だと思……ローズ!」
「……セーフ。何これ……火?」
「あの速度で火を飛ばせるのは……あー、わかったかも。四層のボスが」
四層に降りて、歩こうとした瞬間。矢のような何かが、私達目掛けて飛んできた。何とか反応ができて、水魔法を糸のように展開してがんじがらめにした。
かかったものを確認してみると、火?だった。紫にぼうぼうと燃える、小さな火。何となく察しはついたかも。ってかこのゲームにもいたんだ、知らなかった。
「うん、私も何となくわかったかも……って第二波!」
小さな紫の炎と言えば、ねぇ?……と思ったらまーた飛んできた。……なるほど、第四層は定期的にボスからの攻撃が飛んでくるシステムなのか。いちいち一回一回凌ぐのも面倒臭いし……もう早いことボス部屋まで行った方が……
「……リリー後ろっ!」
「え?」
多分もう折り返し地点くらいまでは進んだのに、一切敵が出てこない。そう思った矢先の事だった。いつの間にか、リリーの背後に全身を甲冑で包んだ男が立っていた。何とか間一髪で男の時間を止めれたけど……ほんとに危なかった。まさか、私やリリーが反応できないなんて。
「これは……影武者?」
「恐らくそうだろうね。見た目がそれすぎる」
「まともに戦ってみてどうかってところだね。解いていいよ」
「おっけー、わかった」
時間停止を解く。すると、そこにいたはずの影武者?らしきものはいなかった。
「なるほど……じゃあ、こういうことね」
「ぐっ……無念……」
何となくリリーも察したみたいで、後ろに剣を振り下ろす。……多分、特性か何かで必ず相手の背後を取るようになってるんだと思う。それで、油断した隙に攻撃……的な?
「ちょーっとめんどくさいかもね。この魔物は」
「いつ現れるかとかもわからないからね」
「早い事進んでった方がいいよね、行こう」
もう気にしないことにして、進んでいく。それからも繰り返し小さな炎と影武者らしき魔物を上手いこと対処して、ボス部屋の前に着いた。
「着いたわけだけど。……第四層、絶対今までよりも強い。気を引き締めていこう、リリー」
「うん、わかってる。さ、行こう」
ボス部屋へと続くドアを開ける。そして見えたのは、無数の紫の小さな火に、それを操っている尻尾の生えた少女。呼び名は沢山あるんだけど、私はこの呼び方が一番好きだからこう呼ぶことにしている。
「やっぱりそうだと思ったよ。妖狐妲己」
妲己……まぁ有名な呼び名で言うならば九尾。他にも玉藻前とか色々あるけど、人の魂を好む性悪な妖怪。
この世界にもいたんだ。二次創作のイメージがかなり強いけど、この世界でも狐火を主な攻撃手段としてる。
「ほう?妾の事を知っておると」
「そこそこ有名だからね」
「細かいことは気にしないで、早速じゃが……そなた達の魂はとても美味しそうじゃ。今まで食ってきた人間の中でも妾を大きく満たしてくれそうじゃのう」
「そう簡単に食べられるとでも思う?」
「もちろん、思っとらんよ。じゃから……ひとまずそなた達を殺させてもらおうかの」