ダンジョン攻略 第三層
「……え?ギガオークを五体も?」
「うん。難しいかもって思ったんだけどね、第一層のボスがドロップした武器使ったら何となくいけちゃった」
「えぇ……っていうか二層でそれなら私はただの約立たずなんじゃ……?」
「いや?リリーは戦ってくれるだけで役に立ってるよ。ほら、忘れた?私たちの武器」
「……私達の武器?」
「連携だよ。何年も前から理解し合ってるんだから、お互い行動の一つや二つは読めるでしょ?」
「うん、そうだね。ローズならこうするかもってのはなんとなく読めるかも」
「それに、リリーがそばにいてくれるだけで私はたくさん頑張れるからね」
「え?あ、うん……ありがと」
リリーと合流できたので、いつもみたいに話しながらゆっくりとダンジョンを進んでいた。……なんだろね。こうしてリリーがそばにいてくれるだけで、いつもよりもずっと安心できる。力が湧いてくる。
「にしてもそっか……いや、そうだよね。魔法無効の骸がいるんだから、そりゃ物理攻撃無効の敵がいてもおかしくはないよね」
「あいつに出てこられたら、私もう何も出来ないんだよね~」
「あ、いた。しかも三体か……」
歩いていたら、三体のそのゴーレムと遭遇した。何してくるか分からないからな……リリー曰くデバフもかけて来るみたいだし。よし、先手必勝!時間を止めて魔法を浴びせるに限る!
「三体まとめて、焼き払えっ!」
炎を熱光線として三体のゴーレムに浴びせる。恐らく魔法耐性はそんなにないのだろう、瞬く間にゴーレム三体は灰になった。それを確認して、時間停止を解く。
「せめて止めるなら一言言ってよ。急に体動かせなくなるから、地味にびっくりするんだよね」
「あっはは、ごめんごめん。リリーの話を聞くに何してくるか分からないし面倒だなーって思って。先手必勝だよ」
「相変わらず超強いね。頼りにしてるよ?ローズ」
「うん、私に任せておいて。守ってあげる。……っと、ここがボス部屋かな?」
歩いていたら、恐らく十メートルくらいはある大きな扉を発見した。……明らかにこの先はボス部屋ですよーって言ってるようなものだよね、これって。
「うわ、なにあいつ!でかすぎるでしょ!」
「しかも多分また物理通じないから私何も出来ないじゃん!!普通のもいるし!」
大きな扉を開けると、そこには扉よりも少し大きなゴーレムがいた。しかも取り巻きに普通のゴーレムが五体いるし……何よりでかすぎるでしょ!
「リリー、剣だして!」
「?とりあえずわかった!」
「こうして……よし、多分これで何とかなるはず!」
リリーに神秘の剣を出してもらい、神秘の剣に光魔法を纏わせる。きっとこれなら、ゴーレムにも通じると思う。後々剣に影響がないように光魔法にしてみたけど、果たして通じるかどうか。
「ありがと!助かるよ!じゃあ試しに、取り巻きのゴーレムを……よし、切れる!ありがとローズ!」
「取り巻きは頼んだよ!大きいのは私がやる!」
飛行魔法で、ボスのゴーレムへと近づいていく。まぁ、途中で攻撃してくるわけなんだけど。
「あれ?思ったより遅い?……いや違う!リリー、飛んで!」
「え?うん!」
なるほど。腕を強く地面に叩きつけて、衝撃波で攻撃してくるタイプなのか。確かにその巨体も合わせれば遅くてもどうしようもないか。
「よし、じゃあ試しに一発……水槍・改っ!」
以前とは違って強化魔法の超適性が着いたので、強化魔法を上乗せした魔法も三倍の強化が入っている。
ので、恐らく水槍でも軽く鋼なら貫ける程度には強くなってるはずだし、実際馬鹿みたいに速度も早くなってた。
「えぇ……?これ効いてないってまじで?じゃあ何?こいつは魔法無効ってこと?」
が、水槍を当てたはずの右腕にはかすり傷ひとつ、なんなら当たった形跡すらも残っていなかった。……考えられることは、魔法無効。よし、じゃあ一回殴ってみるか。
「使わないって言って早速使う事になったけど……まいいでしょ。頑張ってもらうよ、暗影の槍」
折角なら毒が通じるかどうかも確かめておきたい。という事で、殴るのではなく暗影の槍で切ってみる。
「ローズ!倒し終わったよ!何か出来ることある?」
「じゃあちょっとまってて!今色々と確かめてるからわかり次第手伝ってもらうよ!……えいっ」
軽く暗影の槍を振ってみる。すると、思い切り腕は切断され、落ちていった。
「リリー!腕が落ちてくるよ!気をつけて!」
「え、腕!?ってまじじゃん!うわ、なんか湧いてきた!」
片腕が地面に落ちると、また同じように衝撃波が発生した。リリーはそれを思い切り飛んで避けるんだけど、地面を見たら腕が分裂して三十体くらいのゴーレムになっていた。……なるほど、各部位を破壊すると何体も湧いてくるタイプね。
それでもって、肝心の本体には毒は一切通用してないか。リリーには申し訳ないけど、このまま左腕もやらせてもらおうかな。
「リリー、おかわりいくよ!……ってあれ?切れない?」
「えぇ、もう?」
右腕を切ろうとするが、まるで地面を切ってるかのような硬さで到底切れるとは思えない。……ははーん、理解したかも。
「はい、水槍!」
今度は右腕に水槍を打ち込む。すると水槍は、右手を貫き消えていった。そして右手は落ちていった。なるほどね。かんっぺきに理解した。……いや、面倒くさすぎない?
このゴーレムは、恐らくとても複雑な能力というか体をしていて、各部位によって物理攻撃無効と魔法無効が異なる。だからさっきの場合、左腕は魔法無効、右腕は物理攻撃無効という事になる。……いや、わかったところでねぇ。
「ローズ、ちょっとだけヘルプ!思ったより数多い!」
「はいはーい。じゃ、一旦動きを止めまして……」
リリーからヘルプが入ったのでとりあえず大きい方のゴーレムの時間を止める。……あ、これは通じるんだ。えっとどれどれ……ゴーレムの数が大体六十体くらいか。
「まとめて一気に蹴散らすよ。とりあえずリリーには結界張るから」
リリーには強固な結界を展開して、私は魔法無効をコピーする。そうして発動する技は……
「散れ、炎の花弁!」
闇堕ちしたマイが使ってた、爆発する炎の花弁を雨のように散らせてふらせる技。もちろんノータイムで爆発させる。まぁ中々に威力強いからね。リリーの結界壊れちゃった。
「よし、片付けたし時止め解除~って、あ」
「えっと……ボス、倒しちゃったね」
「やりすぎちゃったかも。と、ともかくこれで第三層クリアだね!」
時間停止を解除する。瞬間、ボスの大きなゴーレムが地面に倒れて塵となって消えていった。あー、当たり判定大きいから全部貰っちゃったのかな。それとも、複雑な構造は腕だけでほかは普通だった、とか?
ま、いいや。とりあえず次、四層だ。