地獄の終わり
それからすぐにシャクヤ達も戻ってきて、私達も寝ようとした……けどやはり寝れなかったので、午前二時、私はまたバルコニーにいる……今日はレクファー邸のだけど。正直言って、今日寝れない一番の原因は明確にわかっている。それは……明日からどうすればいいかわからないということ。
一応これでも一ヶ月は行方不明だった訳だし……捜索届けも出されている訳だし。クラスメイトのみんなやファンクラブのみんな、お母様お父様にアベル……どんな反応して接すればいいのかわかんないよ~!!っていうかそもそも普通に帰っていいのかな?
「場所は変わっても相変わらずだね~、ローズ」
「驚きました。まさか、ローズ様とリリー様もここが好きだったのですね」
月を眺めていると、リリーとマイがやってくる。……
そういえばシャクヤも言ってたっけな。マイは寝れない時によくここに来ていたって……完全な盗み聞きだけど。
「うん、やっぱり綺麗なお月様を見ながら夜風を浴びるのは大好きだからね。……ってあれ、マイも寝れないの?」
「なんというか……ここで寝ること自体が久しぶりなので、どうにも落ち着かないんです」
「あー、あるある。お泊まりとかした後に自分の家で寝ると何故か寝れないやつね」
実際、紗蘭の家にお泊まりした後に自分の家で寝るとどうにも寝心地が違かったりなんかソワソワしちゃったりとかしてあまり寝れなかったからな、私も。
「えっと……お二人は以前からバルコニーに?」
「うん。四人でお泊まりする時は大抵イリアとマイが寝た後にね、ローズの家のバルコニーで私とローズで話してたの」
「ここは、本当に素敵な場所ですよね。綺麗なお月様に、揺れる木々に、とても気持ちの良い夜風。この自然が大好きで、私も幼い時から寝れない時はここに来ていたんです」
「私も自然は大好きだからさ。寝れない時……それと、不安になった時とかはいつもここに来てるよ。それで、自然に癒されて……安心して、ゆっくり眠れる」
……え?は?ちょ、ちょっと待って?な、なんで急に涙が流れてきて……しかも止まんないし!
「ろ、ローズ様!?」
「大丈夫?ローズ」
「……も、もう絶対、こうすることは出来ないと思ってたから……なんか急に安心して涙が……」
どうしよう、涙が止まんないし弱音もおまけでついてきた!
「……私も、私もずっと怖かった。もしこれでローズを救えなかったらどうしよう、会えなくなったらどうしようって」
「本当に、ありがとう、リリー。私を救ってくれて」
「ありがとうはこっちの方だよ。ローズを救えてなかったら、きっとこんな風にすることはできてなかったから」
「ふぁむ……お二人と話してたら、少し眠たくなってきちゃいました。私、もう寝ますね。おやすみなさい」
マイが欠伸をして、部屋へと戻っていく。え待って……凄い可愛いんだけど何今の。もはやただの小動物じゃん。
「うん、おやすみ」
「……ちょっと私も眠くなっちゃった。私も戻るけど……ローズはまだいる?」
「うん、もうちょっとだけ」
「そっか。……おやすみ、ローズ」
「うん、おやすみ。リリー」
そして、リリーも部屋へと戻っていって、また私一人になった。
「私を救ってくれてありがとう。いつか、私の気持ち……伝えるね。リリー」
満月が照らす、私しかいないバルコニーにそう零して、部屋に戻ってまたすぐに寝た。……ふふ、これでまた、いつもの日々に戻れるんだ。楽しい楽しい、いつもの……日々に……。