母と子、先輩と後輩 二
「いっぱいいっぱい、ごめんね。気づくのが遅かったのもそうだけど……何より、私沢山無茶しちゃった。ずっと、ずっと怖かったよね、紗蘭。数え切れないくらい、私は死にそうになった。その度に、胸が裂ける様な思いをしてたんだよね」
「……すぐにでも泣き崩れそうなくらい怖かった場面は数え切れない程にあります。気づくのが遅かったのもほんの少しだけ怒ってます。でも、それでも先輩はこうやって生きててくれた。私に気づいてくれた。それが、私からしたら何よりの幸せなんです」
「紗蘭は昔から変わってないね。紗蘭が私にかけてくれる言葉は、全部暖かくて安心する」
「そういう先輩こそ、昔から変わってませんね。話してるととても楽しくて、元気いっぱいで……でも、言葉に出来ないほど頼りになって」
私、紗蘭からそんなふうに思われてたんだ。まぁ、私の事どう思ってるかなんて聞いてなかったしね。それは、凄い嬉しいかも。きっと私は、リリーじゃなくて紗蘭に恋をしてるから。姿名前は違くても、紗蘭は紗蘭だから。
「ふふ、そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとう、紗蘭」
「こちらこそ、ですよ?先輩」
懐かしいな、この感じ。なんて言えばいいんだろう……とにかく本当に紗蘭と話してるって感じがする。
「あ、そういえば……紗蘭も、最初はローズ様を救う為に色々してたんだよね?」
「はい、そうですね。とりあえず鍛えて……黒魔道士をやっつけて」
「私もね、黒魔道士やっつけようとしたんだけど、既にリリーがやっつけちゃってて……びっくりしたよ。『なんでリリーが!?』って。初めてあったあのパーティーの日もそうだったし」
「パーティーの時は私もびっくりしましたよ。だって、先輩が本来は一緒にいるはずのないイリアと一緒にいるんですもん。しかも、イリアはかなり懐いていたみたいですし」
あの頃は……とにかく色々と凄かったなぁ。口調がバラバラだったり、とにかく自分の破滅を避けることに精一杯で。結果としてマイやイリアを救えれたんだけどね。
「確か、リリーの方から話しかけてきたんだよね。『あなた、私をじっと見てどうしましたの?』って」
「今思えば、お互いに上手な演技でしたよね」
「うん。私もだけど……あの時は本当に紗蘭だなんて微塵も思わなかったな。寧ろ、紗蘭は今何してるんだろって思ってた」
「私もです。微塵も先輩だなんて思いませんでした」
たまにはこういった昔話をするのもいいよね。リリーも含めて紗蘭との思い出は数え切れない程あるし。
「それから五六年くらいは会ってなかったよね」
「はい、私はリアンと沢山旅してました」
「えっと、修行のため?」
「そうですね。最初私は、『ローズ様を破滅エンドから救う為に私がローズ様より強くなればいい』って考えでしたので」
「だからか、私が知ってるリリーより数十倍強かったんだ」
「そもそもに、本来だと入学して間も無い頃リリーは超適正に気づいていませんしね」
「あ……じゃあ、今思うと、あれは聞き間違いじゃなかったのか」
「聞き間違い?」
「ほら、初めて生でノープ先生を見た時」
「あー、あの本音をこぼしちゃった時ですか。……って事は、先輩も?」
「あはは……うん、私も本音出しちゃった」
三年生になってから、変に私達の中で影が薄くなってるノープ先生も、初めて見た時は本当に綺麗だと思ったんだよね。それで思わず私も美しいって言っちゃったんだっけ。
「ふふ、こうやって先輩と明るい気持ちで昔話できるの嬉しいです」
「だね。紗蘭と過去の話することなんて大抵暗い話が多かったからさ」
「あ、そうだ。関係ない話になりますけど、折角先輩は私の超適性もコピー出来るようになったんですから……二人の会話、聞いちゃいません?」
「それいいね、面白そう!やろ!バレる心配もないし!」