母と子、先輩と後輩 一
「さ、食べましょうか。ここら一体は魔獣とかが多く生息するから、他のよりも美味しいはずよ」
「おぉ……全部美味しそう!特にこのステーキとか!」
「ずっと前から変わってませんよね、先輩。好きな物を見る目がとてもキラキラしてます」
今は、レクファー邸の一室でみんなで食事を取っている最中だ。シャクヤの言った通り、どれもこれも見るからに美味しそうで、とてもいい匂いのものばかり!
そして実際に超美味しい!やっぱり魔獣の肉は入手難易度高いだけあってかなり美味しいね!
「意外と子供っぽいんですねぇ、ローズちゃん」
「ええ!ローズったらあんなに強くてかっこよくて頼りになるのに、普段はとても幼くて可愛いんですの!」
「ちょ、ちょっとイリア!?」
私、そんな子供っぽいかなぁ?……いやまぁ確かに、リリーの方が大人っぽいとかそういう気持ちはあるんだけど……私が子供っぽいとか自分で一回も思ったことないから……
「ふふっ、あなた達みんなとても仲がいいのね」
「うん!私はちゃんとみんなとあったのは二年前だけど……それでも、みんなとの思い出はいっぱいあるから」
「そういえば……みんなって私とリリーの話って聞いたの?」
「ええ、聞いてますわ。えーっと……峰華?」
「リリー様……紗蘭様?が話してくれました」
「ローズでいいよ。今の私はただのローズ・コフィールなんだから」
「私もリリーでいいよ」
ぐっ……唐突な名前呼び!!オタクとして叫びそうになるぅ!っていうか紗蘭が話してくれてたんだ。
……二人だけじゃないけど、きっと本当のローズ様を知ったらみんな驚くだろうなぁ。
「あら、みんな食べるの早いのね。もう既にお風呂は湧いてるから……先入ってくる?」
「んー……貰おっか!」
「そうだね!それに、みんなでお風呂入るの久しぶり!」
「ローズ様、はしゃぎすぎはダメですよー?」
うん……心当たりがありすぎる。ここに来てからも……来る前も。以前紗蘭の家で泊まった時もはしゃぎすぎちゃったし……なんでだろ。お風呂にそんな効果なんてあったっけな?
それから途中でシンが乱入してきたりとあったけど、私にしては珍しく大人しめに風呂を終えた。……はー、気持ちよかった。
「……すぅ」
「イリアったら、もう寝ちゃったみたいだね」
「イリア様も随分と無茶されてましたからね」
「それを言うならマイもかなり無理してたはずでしょ?」
「私はまぁ……この後お母様と話したいこともありますし」
今は寝室。空き部屋の大きなベッドの上で私達はまた話していた。イリアはすぐに寝た。そして、コンコンと部屋がノックされる。
「マイ、今いいかしら?」
「噂をすればなんとやら、ですね。行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
シャクヤがマイを呼び出して、部屋には私とリリーとイリアだけがいることになった。
「……ようやく、二人きりになれましたね」
「うん、そうだね」
「私も、先輩に沢山話したいことがあるんです」
「奇遇だね。私もだよ」
「えっと、その……先輩の……ぐすっ、先輩のばかぁ!」
「さ、紗蘭!?」
「なんで、なんで先に死んじゃうんですかぁ!しかも寝ぼけて酔っ払って急性アルコール中毒って!」
「それは……ほんと、我ながらダサい死に方だなぁって思ってるよ」
「私、わたし……どれだけ泣いたと思ってるんですか……押し付けがましいですけど、わたしの光は先輩だけだったんですよ?」
「……ほんと、ごめん。私が先に死んだから……そんなくだらなくて馬鹿らしい理由で死んだから、紗蘭もたくさん苦しい思いしたんだよね。紗蘭と戦ってる時に見た景色。あれを見て……とても、胸が痛くなった」
「でも……また、先輩と出会えて良かったです。先輩がローズ様の中に入ってるって気づいた時、今にでも舞い上がりそうなほど嬉しかった」
「あ、そうそう。紗蘭はいつから私の事、気づいてたの?」
そう言えばと思い、頭の隅に浮かんでた質問をする。
紗蘭はいつから私のことに気づいてたんだろ。
「二年前……初めてお泊まり会をしたあの日、お互いに質問し合ってたじゃないですか」
「してたね、そういえば。後半から段々と限定されたシチュエーションになってきて……」
「以前から、少し疑いはあったんです。あのナンパの時の過呼吸とか、ご飯に対する目付きだとか、その優しさとかが先輩に酷く似ていたので」
「なるほどね……それで、確信したんだ。ローズ様の中にいるのは私なんだって」
「はい、そうです」
「流石紗蘭だね。昔からずっと鋭い」
「先輩が分かりやすすぎるだけですよ。先輩以上に優しくて、子供っぽくて、頼りになる人を私は知りませんから」
「ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃん。……じゃあ、次は私ね。その……」