悪役令嬢、覚醒
「……あら、目覚めちゃったのね。あのまま二人で殺しあってくれればよかったのに」
「残念だったね。目覚めちゃった」
【そういえば、先輩】
【んー。今更だし、変わらずローズでいいよ。私もリリーで呼ぶから】
【じゃあ、改めて……ローズ。実はね。運営の方から、ローズの本気について言及があったんだ】
【え?私の、本気?っていうか、私って一度も本気出したこと無かったの?】
【今がその本気っていうか……覚醒?的な状態でさ。新しく二つの能力が加わったんだってさ】
【二つの能力?】
【うん。ローズが得た能力は、超適応と超適合の二つ】
【何その……明らかにチートな能力】
「ま、いいわ。あくまでこれは数十手あるうちの一手に過ぎないもの。次の手を打つまでよ。……来なさい。愛しい私の下僕たち」
「うわっ、ドラゴン!?」
「この前襲撃してきたやつじゃん!」
【折角だし試してみてよ。まずは超適応ね。能力の詳細は、自分が見た魔法、聞いた魔法、記憶の中にある魔法を学習して、対応することが出来る】
【えーっと、つまり?】
【何か新技でもない限りローズはあのドラゴン達から攻撃を食らうことは一度たりとも無いって事だよ。もちろん、私の攻撃だって通じない】
【……一応聞くけど超適合は?】
【超適応とセットになってる能力で、適応した魔法全てを誰よりも完璧に使いこなせるって能力。ちなみに魔法だけじゃないから】
【えぇ……何それ、超絶チートじゃん】
……いや確かにローズ様って最強って設定だけども。普通ここまでする?だって知らない技一撃で仕留めないといけないんでしょ?しかも、めんどくさい事に仕留め損ねたら通じないだけでなく私がそれをコピーすることもできる、と。いや、本当にチートじゃん
【ちなみに言っとくと。もう既に一個適合の効果は出てるよ?】
【え?】
【私の体質。強化魔法の超適正】
【待って、そんなこともコピーできるの!?】
【うん。って事でお試しに……ローズ、一人であのドラゴン二体倒してくれないかな】
【うーん……そうだね。ちょっとお詫びも兼ねて、私に任せて】
「あら、一人で挑むのね。といっても……あなただから、まぁ油断はできないのだけれど」
「一撃で仕留めれそうな技……うーん、そうだなぁ。あ、これとかどうだろう?」
あ、これ本当のやつだ。体の中に何故か光の魔力が流れてるのを感じるし、向こうの行動が何となく予測できる。……最強過ぎない?大丈夫?
「……一閃!」
「グオォォォォォォ……」
「は?」
試しに速力をあげて、手刀を用いた剣魔法を使う。
すると、そのドラゴン達は一瞬にして消え去った。
……使えちゃった。リリーの技……
「これで一手絶たれたわけだけど……どうする?」
「一瞬で倒されたのは少し焦ったけれど。もう既に別の一手は打ってあるの。……マイ達、ほっとくと死んでしまうかもしれないわ……」
「あ、できた。できちゃった」
「えっと……ローズ、何をしたの?」
「レイスの時間魔法の応用でね。その……対象一人だけの時間を止めることって出来ないのかなって思って」
「……えぇ?」
度々思ってた、レイスの時間魔法の難点。それは、周囲全体の時間が止まってしまうこと。でも、今の私ならレイスよりも使いこなせるから……何とかできないかなって思ってやってみたら、出来ちゃった。時間を止める対象を一人に絞ること。そして失礼ながら完全に忘れていた、ジークを安全な場所まで運んでおいた。
「……さて。今のうちに、マイ達のところに行って治しておかないと」
「止めておく必要あった?一秒で行けるでしょ」
「シャクヤの行動を予測するに、影の軍勢的な何かがいると思うんだよね。……ていうかいた」
「どれくらい?……ってえ?、もう終わったの?」
「うん、終わった。えっとね……まず、身体強化で大体速力を十倍にする。で、一瞬だけ全体の時間を止める。ではい終わり」
「使いこなすの早くない?……いや、これも超適合の効果なのか」