衝突 三
マイセンパイ達、大丈夫か?あのシンとかいう奴、見た感じかなりやべぇ奴だったし……って違ぇな。オレらは目の前に集中しねぇと。
「これが影……以前リリーから話は聞いていましたが……」
「実力は本人とそう変わんねぇんだとよ。じゃあそうだな……ラーベルは俺が引き受ける」
「でしたら、私はイリアを」
「よりにもよってオレがマイセンパイかよ……マイセンパイ、多分こん中だと一番つえーじゃん」
「安心してください、レイス。終わり次第私達も手助けします」
「ひとまず死ぬなよ!」
ま、しゃーねぇか。以前のままなら時間停止を使って簡単に倒せるんだろうが……確か最近リリーセンパイ達と稽古をしてるみたいなんだよな。つまり……油断したらすぐ足元をすくわれちまうと考えるのが妥当か。
「幸い、この大広間もかなり広いですから味方撃ちの心配性もなく、心置きなくやれますね」
「あぁ。思う存分暴れようぜ!」
直ぐに各々散開して、誤射がないように距離を置く。各個撃破が望ましい、か……
「一発様子見で……やってみるかねぇ!」
時間を止める。五秒という制限時間はあるが……それでも、この能力のおかげで何とかオレは強くなれた。
以前なら対応出来なかった炎の鞭。果たして、対応されるかどうか。
「……な、掴まれた!?」
「レイス!」
「オレの事は気にするな!大丈夫、何とかしてみせる!」
……時間停止が効かないのか。なるほどな。この能力の欠点に今初めて気づいたぜ……。"実体がある"ヤツしか時間停止は効かない、と。……待てよ?つまり、これかなりやばいんじゃね?
「……」
「やれるだけやってみるかぁ。オレだって何も変わってねぇわけじゃねぇから……よっ!」
「……」
完全に真似だが、ローズセンパイの炎を剣や鎖にして飛ばすヤツ、あれをしてみた。結論として上手く飛んで行ったが、水魔法に打ち消された。はぁ……なるほど、魔具もセットなのな。
「じゃあコイツは……どうだっ!」
「……っ」
「おっしゃ、命中したな。……なるほど、攻撃が当たった箇所から消えてく仕組みか……っておい、再生してね?」
同じくローズセンパイの真似で、炎魔法だけの弾丸を飛ばす。いくら風魔法が使えないオレでも、超高速で飛んでいき頬を掠めた。そして当たった箇所が、霧が晴れるみたいに消えていったのだが……一瞬にして再生した。
「おいおい……こんなのどうしろってんだよ」
「……」
「うわっ熱っ!?」
油断禁物、だな。油断したせいで一発肩に貰っちまった……にしてもおい、熱すぎるだろ……ぜってぇこれ火傷したって。
「……咲け」
「マジかよ……ここでそれやってくるか?」
影のマイセンパイが手を広げる。次の瞬間、当たりは四方八方に咲き渡る黒い花畑になっていた。……これは覚えがある。二年前、武術大会でイリアセンパイに対して使ってたやつだ。……流石にこの量を爆破されたら俺も厳しいんだが?
「……レイスっ!時間を止めろ!」
「リアン!?あぁ、わかった!」
リアンに言われて時間を止める。そして、リアンに触れる。触れた相手は動けるようになってるからな。まぁ……オレが味方と認識してるヤツのみだが。
「思ったより早く片付いたんでな。助太刀させてもらうぜ!……水よっ!」
「そいつは助かる!言っとくが、センパイはまだ本気を出してねぇ。それに、再生もしてくる」
「再生の原因はもう突き止めてある。イリアとラーベルだ。だから再生に関しては問題ない。一番は……」
「オレらで本気のセンパイに勝てるかってところか」
リアンの魔法が花畑を包み込み、ドガァァァァンっと大爆発を起こす。いやほんと、リアン様々だわ。……あれ喰らってたら絶対死んでたってマジで。
「……見た感じ、時期にラーベルも終わるな。つまるところ三対一になるが……」
「油断は禁物、だろ?」
「あぁ、流石レイス。わかってるじゃねぇか。……どうやら向こうも本気で来てくれるみたいだしな」
「……解放」