囚われた先で
「ここは一体?……あぁそっか。私、シャクヤに捕まっちゃったんだ」
私は、目を覚ました。どれほど経ったかは分からない。そして、ちゃんと拘束も徹底されてる。私が今はめられている手枷だってとても頑丈に作られているし、魔法も受け付けない性質を持っている。……私の目の先にはガラスがある。つまり。私、実験体にでもされるのかな……なんて考えていると、こつ、こつと誰かが歩いてくる音が響き渡る。
「あら、思ったよりも早く目覚めたのね。嬉しいわ」
「……シャクヤ」
「そういえば自己紹介がまだだったわね。私はシャクヤ。シャクヤ・サヴェリスよ。なんて、そんなこともうあなたは知っているのでしょう?ねぇ、『茨 峰華』?」
「な、なんで私の名前を……!」
「さぁ、何でかしらね。っと。そんな事は置いといて……目覚めたのなら始めましょうか」
「……!?」
体がゾクゾクして……とても心が怯えているのを感じる。それと同時に、今まで感じてきたものとは比にならないレベルの嫌な予感が体全身に襲いかかってくる。
「メサークから聞いた話だとあなたは闇魔法の耐性が無いそうね。それにメンタルも弱い方と聞いているわ。だから……」
「う……ぐっ、あぁぁぁぁぁぁ!!」
「私があなたを可愛くしてあげるわ。可愛い可愛い、特別なお人形さんに……ね」
「はぁ……はぁ……」
シャクヤが闇魔法を発動する。シャクヤの闇魔法は他とは違う、まるで電撃のような焼き付くさんとする勢いで全身を駆け巡るタイプの魔法だ。
流石は、闇魔法の使い手。すぐに意識が飛んでしまいそうになる。影の私とは比べ物にならないほど、胸が苦しい。
「あら、本当に弱いのね。まさかこの程度でそこまで苦しそうにするなんて」
「な、何が目的なの……?」
「うーん、そうね。あなた達を殺すことも目的のひとつだけど、それはあくまで一番の目的の為に必須だからなの」
「一番の、目的……?」
「えぇ。私は……徹底的にあの子を……マイを、苦しめたいの!産まれたことを後悔させてやりたい!」
「ぐっ……ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
何だろう……心が、心が変だ。何でだろう、何でこんなにも苦しいのに、笑えてくるんだろう。私、そんな趣味は持ってないんだけどな。
「な、なんの為にそんな……」
「自己満足よ、自己満足。あの子が産まれてくるまでは私も清い人間だと思われてたのに……あの子が産まれてきたせいで、私が闇魔法の使い手であることが露見してしまったし……そのせいで周りからの評価も、信頼も、これまで積み上げてきたものが全部台無し」
「……でも、自分の子供なんじゃ」
「そろそろ頭に来るわね。うるさい」
「あぁぁぁぁぁぁ!!ぐ……ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
あぁ、ダメだこれ。私、狂ってきてるんだ。だからこんなにも笑えてくるのか。もう、別にいいや。リリーも、マイも、みんなも……どうなったって、別にいいや。私が壊したって、別にいいや。今はただ、心の求めるままに……狂い続けよう。フフ……アハハ。
「フフ……フフフフ……アッハハハハハハ!!」
「あら、もう狂っちゃったのね。まぁ、その方が都合がいいわ。でもそうね……念には念を込めて。一日に三回、あなたに魔法を打ち込むわ。もし、私の機嫌を損ねるような真似をしたら……その時はもっと酷くなるかもね」
あぁ、なんて面白いんだろう。なんて楽しいんだろう。狂う事がこんなにも幸せだったなんてね。ずっと続いて欲しいかも。もし……もし、私のこの幸せを壊すような人が現れるのなら、誰であろうと……殺しちゃっても、別にいいよね。