悪役令嬢達VS襲撃者メサーク
「へぇ……大層な余裕だね、メサーク。去年は私とリリーがいるだけで逃げ帰ったくらいなのに?」
「去年とは訳が違うのです。私だって自己鍛錬や試行錯誤を大きく積み重ねてきましたからね。……さぁ、かかってきなさい」
攻撃が全部初見なのが凄い不安だけど……ジークがいるから大丈夫……かな。それじゃあ早速私の方から一発。新技を早速披露しちゃおうか
「炎よ、我が手に集え」
私の手が炎で包まれる。ちなみに不思議なことに、一切熱くはない。次に、手から溢れる炎を魔力で変換させ、槍状にしてそれを掴む。そして手に速力強化、腕力強化をかけて……思い切り投げる。私にはネーミングセンスがないので名付けるならそのまま単純に「炎槍・改」とかでいっか。これはいつも私が使う槍系とは違い、動作が増えるのだが、その代わりに手で掴んで投げるため、槍と手で強化魔法が二重に適用される。
「……やはりまだ少し私も侮っていたかもしれませんね。流石です……目で追えませんでした。ではそうですね……こちらも魔界の技を見せてあげましょう」
炎の槍はメサークに当たった、当たったのだが……というかメサークを貫いたのだが、不思議なことにメサークから一切血は出てないしぴんとしている。……どういう仕組みなのか分からないけど、面倒臭いな。
「黒き闇よ、槍となりて穿て!」
……あれ、普通の魔法と変わらな……いや、違う!何、これ……体が勝手に槍の方に進んでる!!磁石!?
「……えっちょっ、ローズ!?何してるの!?」
「体が、思うように動かせない!」
「意外と勢いある、なぁっ!」
間一髪、リリーが槍を弾き飛ばしてくれた。これは……一体?
「不思議がっているようですね。では教えて差し上げましょう。私は、一度攻撃を受けた相手の体に催眠をかけることが出来るのです。と言っても、『自分から被弾しに行く』くらいの催眠しか出来ませんがね」
「体に……催眠?」
「はい、精神ではなく体に、です。ので……意識はあっても体は私の攻撃へと向かっていく。ですから本当は個人戦が望ましかったのですがね」
「ふーん、いいのかな?そんなに情報教えてさ」
「構いませんよ、どうせ対処は出来ないですし」
実際タネを知ったところでって話だ。攻撃……は恐らく物理も魔法も関係ないだろう。さて、どうしたらいいものか……
「闇魔法なら、僕の出番ですよね。……光よ、溢れだせ!」
「……先程の発言、撤回します。光魔法の使い手がいるとは……まずいことになりましたね」
「やっぱりジークの情報は一切入ってないよね!」
「そうですね……このままいけば直ぐに負けるか。嘘をついたこと、先んじてお詫びしましょう。私はこれにて撤退させてもらいます。変わりは……"彼女ら"に」
「なっ、待て!」
メサークが去っていくと同時に、影のような黒いオーラに包まれた女二人と男一人が現れた。……なるほど、闇魔法ならそんな芸当もできるのね。
「これは……私達の影、か」
「どれくらいの強さで作られてるか分からないけど……一回自分自身と戦ってみたかったんだよね」
「自分とはいえ、油断は禁物ですから……気張っていきましょう」