悪役令嬢と襲撃イベント、再び
ジークのおかげで、二日くらいして抱えていた不安も自己嫌悪も全部消えた。……にしてもそっか、闇魔法か。確かにそういえばゲームの方でもローズ様に闇魔法ってのはなかったから分からなかったな。耐性……つけた方がいい気がするけどどうやってつけるんだ?
「リリー、おはよ!」
「おはよ、ローズ!良かった、また元気になったんだね」
「うん。あと……やっぱり本当に私は闇魔法の体制がないみたい」
「じゃあ尚更シャクヤとメサークには気をつけないとだね」
「そう、だね……今のままだと私は絶対すぐに堕ちる」
リリーと話していると、頭に電流でも流れたかのような感覚が走る。……この感覚はまさか!?
「はぁぁ、またか。……ローズ、感じたよね」
「うん。リリーも感じたって事は……そういう事だよね」
「まーた、襲撃だ」
「しかも去年とほぼ同じ時期だしね。いや、私が復活してよかった」
まぁ、襲撃イベントだよねぇ。本当に私が復活してよかった。リリーだけに任せる訳には行かないし、何より私も何かしたい。……で、はいはい魔笛ね。落ち着いて対処できるようになったもののほんと心臓に悪い。
『ローズ様、今魔笛の音が聞こえた気がします』
『去年と同じだよ、マイ。メサークかシャクヤのどちらかが私とリリーを狙って襲撃を仕掛けてきたの』
『襲撃ですか……今回は僕も戦います。この前の事を踏まえると何かあった時のためにも光魔法を使える僕がいた方がいいと思いますし……もちろん、足でまといになる気は毛頭ありません』
『ま、私とローズ二人でやるのも面倒だしね。助かるよ、ジーク。あと、これは全員に聞こえるようにしてるから……そうだなぁ。尊敬団の皆は守りについてくれないかな。マイとイリアの指揮に指揮権を渡すから、そこは二人に任せたよ。よし……大体、あと十分ってところか』
こういう時にリリーがいてくれると助かる。私は確かに魔法こそ使えれど指揮能力とかはそんなにないからなぁ。っていうか……あれ、今回は皆にも感じとれたんだ。
「念の為……よし、ちゃんと魔力は練れるね」
そしてそれから十分後、襲撃が始まった。
「よし、来たね……とりあえず先ずはこの……ざっと数えて千体くらいの魔物を殲滅するところからか」
「繰り返し聞くけどローズ、調子は大丈夫?」
「うん、オールオーケーだよ。魔法も上手く使えるしコンディションもバッチリ」
「よし……じゃあローズ、ジーク、行くよ!」
「うん!」
「はい!」
前から思ってたけど先生は何も思ったりしないんだね。……そこだけはシナリオ通りに動くよう設定されてるのかな。案の定窓から思いっきりジャンプして、飛行魔法で浮遊する。試しに一発、先制攻撃を!
「水よ、波となりて洗い流せ!」
「……うんうん、これでこそ私達の知ってる"最強"のローズだ」
「これ、もしかしてローズ様一人でよかったのでは?」
魔物自体はそんなに変わってはいないので、水でゴブリンとスライムを一箇所に集める。まぁ、百体くらいは溺死したけど……それでもかなり強化されてるな。
よし、じゃあ……
「喰らえ、落雷っ!」
「おぉ流石。一気に六割くらい殲滅したじゃん。じゃ、残った三百体の骸は……私に任せて!」
「うん、お願い!」
……って言った時にはもうみんな片付いてた。はっやいなぁ。
「っと、危ない……久しぶりだね、メサーク」
木陰から紫色に禍々しく輝く槍が飛んできた。はぁ……流石にまだシャクヤが姿を現す訳では無いか。
「来訪者様、お久しぶりですね」
「もうご挨拶って言い訳は通用しなくなったよ。……目的は何?」
「そうですねぇ……では、遊びたくなった、とでも言っておきましょうか」
「遊びたくなった、ね……さ、魔物はもう蹴散らしたよ。次は何が来るの?」
「次?今回は次などありませんよ」
「え?」
「いや、でもそうですねえ……よし。では、この私。メサーク・シェロツが次の襲撃者ということで……御相手致しましょう」