悪役令嬢と美人メイド
不思議な事に、本っ当にあれから何も無く三ヶ月が過ぎて私達は三年生にあがった。未だ、嫌な予感は消えていない。相変わらず、日に日に強くなっていってる。そのせいか、最近はかなり寝つけなくなってきてる。……眠る事まで、怖くなってきている。本当になんなんだろう、この嫌な予感は……。
「はぁ……リリーが、傍にいてくれたらな」
「失礼します、お嬢様」
「アベル、どうしたの?こんな遅くに」
今は……二時。また今日もあまり寝付けない。だから、頑張って寝ようとしてた時、アベルが私の部屋に入ってきた。
「お嬢様が心配なのですよ。最近のお嬢様はずっと苦しそうな顔をしています。それに、何かに怯えているような顔もしています」
「あ……私、そんな顔してたんだね」
「クマにはなってないですが……奥様も、公爵も、大変心配しておられます。もちろん、私も……」
「そっか。アベルも、お母様も、お父様も、心配してくれてるんだね。……心配させてごめんね」
「謝らないでください、お嬢様。それで……やっぱり、その原因というのは話したくないですか?」
「あー……うん、そうだね。ごめん。話せない」
「そうですか。なら、私から一つだけ。周りをしっかりと頼ってください。マイ様でも、イリア様でも、リリー様でも……誰でも構いません。お嬢様の事情を理解していてかつ、お嬢様が信頼できる人に……頼ってください」
「うん、わかったよ。ありがとう……アベル、私から一つお願いしてもいい?」
「はい、何でしょう」
「一緒に、寝て?」
「……かしこまりました」
私って本当にダメダメだな。……にしてもそっか、そんなに顔に出てたんだ。またいつか、落ち着いた頃にお母様とお父様にちゃんと説明しないとだね。
「お嬢様、ハンカチです」
「え?どうして急に?」
「自覚がなかったのですね。単刀直入に言いますと、お嬢様は今……涙を流されています」
「私、泣いてるの?」
「はい」
え?待って、どうして私泣いてるの?……あ、頬が暖かい。本当だ、私、泣いてるんだ。情けないなぁ。ま、いっか。きっと明日には元に戻ってる。けど……もし明日も顔に出てるようなら、嫌だな。リリー達まで心配させちゃう。
「ありがとう、アベル。ねぇ……抱きついてもいい?」
「はい、それで少しでもお嬢様が楽になるのでしたら、構いませんよ」
アベルがベッドに入ってくる。……久しぶりだな、アベルと一緒に寝るのは。子供の時以来かな。
……にしても、やっぱり暖かいな。誰かに抱きつくのは。これなら、すんなり眠れるよ……
「すぅ……すぅ……」
「安心して、寝ちゃいましたね。ふふ……こういう所は何年経っても子供のままですね、可愛いです。本来なら私も部屋に戻るべきなのでしょうが……今日は、私もこのまま寝ましょうか」