夢の始まり 2
ライブハウスに着くと、まだそこには数人程度しか来ていなかった。それもそうだろう、僕が最近一押している歌い手はまだ世間から見れば無名も無名。SNSのフォロワーも1500人くらいでYouTubeの登録者も数百人。でも、正直なところ僕はこの人はこんな所で止まるような人ではないと思ってるし、何か一つでもきっかけさえあれば爆発的に伸びるんじゃないかななんて素人目に思ってる。でも、何故だか僕が推してる人達は有名無名関わらず推し始めた時から必ず伸びているので、自意識過剰かもしれないけど僕の見る目はあながち間違いじゃないかな、とも思っている。
まぁ、ライブを見るときにそんなところを気にする必要もないので純粋に楽しもう、とか考えているうちに整列が始まったので結梨と並ぶ。
「ワクワクするね!私、こういうライブに誰かと来るの初めてだから」
「まぁ、確かにこういう規模感のライブハウスのライブってインディーズのバンドとか駆け出しの歌い手、後はまぁ地下アイドルとかが多いからね」
「そう!そうなの!……まぁ、1人で来たことも1回か2回しかないんだけどね?」
「いやいや、その一歩を踏み出せてる結梨は強いよ」
「えへへ、そうかなぁ?」
「うん、言い方が悪いけどこの辺のファンの層って結構ディープだから結梨みたいな綺麗でおしゃれな女の子は1人だとかなり勇気がいると思うんだ」
「……」
「結梨?」
「朔人のばーか!」
「何急に!?」
何か怒らせることを言った覚えは1ミリもないのに急に頬を膨らませたかと思ったら目を逸らされてしまった。女の子って難しいなぁ……
そんなことは置いておいて、時刻は18時になり、今日見に来たライブ「Rookie's anthem」が開演した。
実を言うと、今回見に来たきっかけは一押しの歌い手が出るからこのライブを選んだ、ではなくて僕がたまたま仲良くしている歌い手さん主催のライブに誘われたので見にいくことにしたら僕の一押しの歌い手さんも出演していた、というわけなので今回はあまり他の出演者の人たちの予習とかもできていないけれど、だからこそ純粋に楽しもうと思っていた。
「わくわく」
結梨は、とてもそわそわしていた。人と行くのが初めてって言ってたからだと思うけど、楽しげな顔はしてるのでほっとしている。
そして、僕が今一押ししている歌い手の「エア」さんが歌い始めた時、僕には2つの衝撃が押し寄せた……




