夢の始まり 1
いつからだったんだろう、音楽を好きになったのは。
いつからだっただろう、歌うことが好きになったのは。
いつからなんだろう、僕の夢の形が変わったのは。
それでも僕は、音楽が好き。
まだ冬の寒さが抜けきらない3月の始め、僕はとあるライブハウスに来ていた。
「朔人ー?早く行かないともう整列始まるって!」
「待ってよ結梨。そもそも今日のライブの整列は入場30分前からだからまだ並べないよ?」
「え、そうなん?」
「ちゃんと注意事項とか気にしなきゃだよ?僕達だってそういうところちゃんとしていく立場になるんだからさ」
「はーい」
僕、夏川朔人は、バイト先で仲良くなった歌い手好きの女の子、春里結梨さんと一緒に都内のライブハウスにライブを見に来ていた。結梨さんと同じかそれ以上には歌い手が好きな僕一押しの歌い手さんが出るライブだったから、僕もそれなりに気合を入れていたんだけど、あらかじめ歌ってみたの投稿を聞いて来てた結梨さんの熱量に圧倒されていた。
「でもさぁ?朔人と会えてよかったなーってこういう時感じるよね!」
「んー、なんとなく理由は察してるけどあえて聞くね?なんで?」
「だって、うちのバイト先ってそういうの好きな人ほぼいないじゃん?」
「まぁ、確かに」
「だからさ、チラッと見えた朔人のスマホの再生画面に歌い手の歌みた載ってるの見た時にキタコレ!!って思ったよね!」
僕と結梨が働いてるバイト先は原宿にあるおしゃれ系の居酒屋なんだけど、ここで働いてる他の社員さんだったりバイト仲間だったりは音楽系の趣味とかはあんまりなくて、大体ファッションの話で盛り上がってるから、そういうのに興味がない僕や結梨(結梨は人並みには持ってると思う)はそこの輪には入ってなかった。
そんな中でたまたま自分が一番好きな歌い手であるRougeさんの歌みたをMV付きで聞いてた時に結梨にたまたま見つかって今に至る。正直な話をすると僕もこういった話で盛り上がれる親しい人間も特にいなかったので内心では物凄く喜んでるんだけど、それは絶対に結梨には言わないと決めている。特に理由はないけど!
そんな、誰に対してなのかもよくわからないけど言い訳を頭の中に浮かべながら、僕達はライブハウスに向かっていくのだった。




