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初めての町「バルトニア」 ④


「ヴァル!暇すぎて死にそうだ!!」

「ロイさん、落ち着いて。話をまずは聞きましょうよ」


集まってすぐにロイが叫んだが、マツリがなだめる。

この三日間で相当仲良くなったようだ。良かった。

ただ、僕はこの三日間歩きっぱなしで疲れたケド。


「ロイ、三日間ちゃんとマツリちゃんを守ってくれてありがとう。まずは情報共有を始めよう」


僕は自分のポケットからメモを取り出す。そして読み上げる。


「まずは、ロイ。お前は完全に指名手配されていた。宿で隠れていたのが正解だった」


ロイは指名手配されたことが嬉しかったのか、隠れてばれていないことが嬉しかったのか、敬礼をして僕に笑顔を見せる。

アザレアはそれを見て、ため息をついている。


「でだ、本題だがこの町では確かに奴隷が許されている。この町の長が数年前に着任してからそうなったようだ」


ロイから打って変わってギリッという音が聞こえる。

怒り狂ってないだけ進歩しているか。


「この町の人間としては、この状況が良いか悪いかは判断が分かれている。が、それ以上に今の長は金で動くタイプらしく、一部の奴には好かれているが、ほとんどの奴には嫌われているようだ」


アザレアも首を縦にうなずく。

情報としては一致しているようだ。


「ただ、今の長が金で傭兵軍団を作っているため、意見しようものなら牢屋にぶち込まれる状況っぽい。で、あの酒場にいた大男のドーズとその取り巻きもその傭兵軍団の一員ってわけだ。だから、酒場で他の奴が見て見ぬふりをしていたってことらしい」


マツリは自分がされてきたことを思い出してしまったのか、涙がこぼれている。

ドーズには僕が鉄拳制裁を下してやる。

で、アザレアの方に目線をやる。アザレアは少しうなずいて話し始める。


「私が集めた情報からも、ヴァルが言った事と一致しているわ。で、その首輪の外し方は、この町の長が持っている鍵で外すしかない。この町を勝手に出ても、その首輪を勝手に外しても、爆発するそうよ」


アザレアはマツリの頭をなでて落ち着かせながらも、ごまかさずに話した。

顔はいたって冷静のように見えるが、額と撫でている手からはうっすら血管が浮き出ている。


「ついでに言うと、この町には百人程度の魔族の奴隷がいるそうよ。それも絶賛増加中とのこと」


アザレアは吐き捨てるように言った。

マツリは下を向き、ロイは声にならない叫び声をあげている。

とりあえず、落ち着かすためにも僕から話そう。


「アザレア、ありがとう。とりあえず、この町の奴隷を全員解放することが今回の目的でみんないいかな?」


ロイとアザレアは頷く。

マツリも自分の首にかかっているものが何かわかったため、顔はかなり蒼白だが頷いた。

やっぱりマツリも怖いのだろう。

こんな顔にしたことを後悔させてやる。


するとロイが声をあげる。


「つまりだ。この町の長をボコボコにすればすべて解決ってことで間違いないな!」

「あんたねぇ……相変わらずの馬鹿だね」

「うるせぇ。俺はそんな難しい事は考えられないんだよ!」


あぁ、知ってるよ。

口には出さないものの、アザレアと目で意思疎通しておく。

これ以上かまっていても何も進まないから、我慢するようにと。

アザレアはため息で答えてくれた。そして僕に尋ねる。


「三日前にも全く同じ事聞いたけど、ヴァルは何か作戦でもあるわけ?」

「そうだな。一応無いわけじゃない」

「本当!?どんな作戦よ、教えなさい!!」

「さっすが、ヴァル!俺にも教えてくれ!!」


ロイとアザレアは俺に聞いてくる。

うーん、結局ロイと似たような作戦になるからあんまり言いたくないんだけど……



・・・・・・



「ガハハ!!!ヴァル、最高だな。その作戦、俺は乗ったぜ!!」

「はぁ、もっといい作戦かと思ったわ……ほとんどロイと同じじゃない」


ロイとアザレアは全く対照的な反応をする。

うん、そんな反応になると思っていた。

でも、この作戦じゃないといけない理由を伝えないと。


「この町の膿は出し切らないといけない。この町の人たちのためにも……そして奴隷として働かされている魔族のためにも」


そう。この町をよくするため。

そして、奴隷にされている魔族のため。

正直面倒だけど、乗りかかった船だから徹底的にさせてもらう。

この腹立たしさを全部ぶつけて。


「……そうね。その通りだわ。じゃあ、私は準備していくから、後はよろしく」

「そうだな!俺も一筆書かせていただきますか!」


アザレアは外に準備をしに出ていき、ロイは手紙を書き始めた。

その様子を見ていたマツリが僕に話しかけてくる。


「あのぉ……」

「どうしたんだい?」

「……ありがとうございます。こんな魔族の私たちのために」


マツリは下を見ながら、消えゆくような声で話す。

こんな可愛い子にこんな顔をさせた奴はやっぱり顔面殴らせてもらおう。


「気にしなくていいよ。僕にとっては魔族であろうが、人間であろうが気にしないから」


マツリは返事をせずに涙を流す。

あのドーズという大男の顔面は三発殴ることにするか。


「わたし、てっきり人間は全員魔族のことを嫌いだと思っていました。でもこの三日間、ロイさんといっぱいお話して、考えが変わりました。人間にも素敵な人がいるんだなって」


マツリは両手を自分の胸の前で組んで祈るように話す。

ただあいつ、僕が初めて会った時は間違いなく魔族を滅ぼそうとしてたけど……。

さすがに今は言えない。


そして、一つ気づく。

ちゃんと聞いておかないと……。


僕はマツリの頭をなでて、ニコッとする。

マツリも涙を流しながらも、ニコッと返してくれた。

そして僕はとある確認をするために、外へ向かった。

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