表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/37

和平交渉当日 ②

町を出ると、ずらっと千人以上の人間が並んでいた。

そしてその一番前に、一人の男が立っている。

その男が叫んだ。


「お前たちか!!魔族なんかと和平を結ぼうとしている愚か者は!!」

「そうだが……お前は?」

「俺はケイト。この世界の勇者だ!!」


僕はロイの方を見た。

ロイは相変わらず眠そうに欠伸をしていて、興味なさそうだ。

僕はその勇者と名乗る男に尋ねる。


「で、その勇者様が何の御用で?」

「わかったことを。魔族との和平を許すわけがなかろうが!!」

「はぁ」


僕は興味なさそうに返事をする。

その返事にケイトは怒ったのか、顔を真っ赤にして怒鳴る。


「お前……許さん。お前もろとも皆殺しだ!!兵士よ、突撃!!」


ケイトに指示された兵士は武器を持ってこちらに向かって来た。

普通なら慌てふためくところだろうが、僕たちは誰も慌てていない。

そして僕は言った。


「アザレア、ロイ。とりあえず、ボコしてきて。町の外だし、何してもいいよ」

「マスター、了解。俺、結構イラついていたんだよね。新人の勇者見ていたら」

「私もよ。あんなヘッポコが勇者だったら、もう人間の町は魔族の物になってるわね」


アザレアとロイは指の関節を鳴らしながら立った二人で歩いていく。

僕とマツリは何もすることなく、二人を見送った。

そして僕が初めて二人と出会って、山賊と戦った時の光景が広がった。


ロイの方に向かったやつは、天高く飛んでいき、

アザレアの方に向かったやつは、ぺちゃんこにされていく。

その様子を見ながら、昨日のロイに教えてもらった話を思い出していた。



・・・・・・



「明日の調印式、中央国家から勇者が送られてくるらしい」


馬鹿げた話だと言っていたはずなのに、ロイは真剣な目でそんなことを言う。

僕は全く意味が分からなかった。

横にいるマツリも同じ気持ちなのか、頭の上にハテナマークが見えるぐらいの顔をしている。

僕はロイに念のため尋ねた。


「ロイ、お前って勇者だよな?」

「当たり前だろ」

「……なら、どうして勇者がもう一人いるんだ?」


ロイはハァとため息をついた。

いや、変なこと言ってるつもりはないのだが……

ロイは僕の方をしっかり見て話す。


「別に勇者っていうのは称号のようなものだ。だから俺がいなくなり、勇者がいなくなったのであれば、新しい勇者を選定してもおかしくないだろう」

「……勇者って、選ばれて決まるものなの?なんか神に選ばれてとかじゃなく??」

「あのなぁ……神に選ばれてとかだと、その勇者が一人死んだら人間界は魔族に滅ぼされておしまいだぞ。あと、神に選ばれました!とか言うやつがたくさん出たらどうするんだ?」


確かに。その発想はなかった。

僕がRPGとかのゲームのし過ぎなのかも。

マツリも同じく納得したようだ。

黙って聞いていたアザレアがロイに尋ねる。


「それはそうと、なんでそんな情報が手に入るのよ」

「シズクが教えてくれた」

「シズク?あのお前の元一行だった?」

「そうだな」


ロイはポケットから玉を取り出した。


「この玉は通信機なんだよ。俺ら勇者一行が離れて行動するときはいつもこれを使っていた。ホットケーキを食べた後に黙って渡されたから受け取っておいた。あいつ、やっぱり俺が勇者であることを知っていた上で黙っていたっぽいからな」


思い出した。

確かにロイはシズクから玉を受け取っていた。

あのとき、ロイがシズクをジロッと睨んでいたのは、勇者であることがばれていたことに気づいたからか。


流石にアザレアの魔道具で勇者であることが隠されているとはいえ、勇者一行だと隠しきれなかったのかもしれない。

アザレアは不審な顔をしながらロイに尋ねる。


「それ、罠の可能性は?」

「ないな。シズクが俺たちに新しい勇者が来る嘘を伝えても何もメリットがない。しいて言うなら、俺への嫌がらせぐらいか」

「……そうね。なら、信じましょう」


アザレアは納得したのか再び黙る。

そしてロイは僕の方を見て聞いてきた。


「でだ。マスター、何かいい案あるか?」

「いい案?何に対してだよ」

「明日来るであろう勇者に対してだよ。この場合、軍隊を引き連れた勇者っていうのが正しい言い方かもしれないが」


いや、君たちがいれば何の問題ないだろ。

僕はそう言いかけたが、ロイはいたって真剣な眼差して聞いてきている。

この町の魔族を確実に守りたいという気持ちがあるのかもしれない。

少し悩んで、そして僕は二つ案を思いついた。


「そうだな。一つはいつも通り、ロイとアザレアには敵が来そうな場所に罠でも仕掛けておいてもらおうかな」

「了解した」


ロイがすんなり話を聞いてくれる。

ここまでの旅で、僕に対して信頼を少し持ってくれたのかもしれない。

ここまで黙っていたマツリが口を開く。


「ヴァルさん、もう一つは何になるのでしょうか」

「あぁ。今からやるのは大変だけど、こういう時は相手の裏をかけばいいだけだから……」



・・・・・・



ふと目の前の戦場を見てみる。

ロイとアザレアの無双が広がっていた。

ただ、この世界の勇者と魔王と言えども、相手に勇者がいるためか疲れているようだ。

技の切れが無くなってきている。

そろそろ、お出ましになるはずなんだけど……


僕がそう思っていると、ロイとアザレアが戦っている場所からかなり遠くにたくさんの人影が見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ