魔界に最も近い国「ゼラニウム」
「うーん。やっぱり外の空気は最高だな!」
「そうですね!私もそう思います!!」
ロイとマツリは全身を伸ばしながら話す。
確かに会議の空気は重くて、外の空気がおいしく感じる。
特にガゼットとの話し合いは大変すぎた。
ロイとマツリの様子を見ていたアザレアはため息をつきながら話しかける。
「あんた達ねぇ……今からが本番よ」
「やれやれ、真面目もここまでくるとダメだな。息抜きできる時にのんびりしておかないと」
アザレアの発言にロイが首を振りながら答える。
いつもならアザレアの発言の方が正しいが、今回限りはロイに賛成だったりする。
ちょっとのんびりしたい気分。
ただ、アザレアがちょっとピリついてるようだから、止めておかないと。
「ダメとは言わないけど、僕とマツリちゃんは慣れてないのもあってやっぱり疲れたかな……」
「まぁ、マスターが言うなら……」
少し怒りを鎮めてくれたようだ。
その様子を見ていたシズクが僕たちに話しかけてくる。
「ヴァルさんのお気持ちもわかるのですが、アザレアさんのおっしゃることもその通りなので、まずは魔界の町に一番近い人間の町『ゼラニウム』まで行きましょうか。おいしいお店も知っているので、そこで打ち合わせと休憩ということで」
「おいしいお店!?何の店ですか!!」
「うん?パンケーキっていう食べ物のお店だよ」
「ぱんけーき?なんですかそれは??」
マツリが目を輝かしながら聞いている。
一緒にいて分かって来たけど、マツリって案外食いしん坊だったりする。
とはいえ、パンケーキの話しを永遠にされるのも困るので、ここでとめておこう。
「マツリちゃん、パンケーキの話はまた後で。で、ヴァルさん、どうやって行きますか?」
「うん?もちろんワープだけど」
「え?ワープできるんですか?」
馬車の中の話から、てっきりこの町からワープが使えないものだと思っていた。
「あぁ、この町へのワープは無理だけど、この町からのワープは可能だよ」
「そうなんですね」
顔は平静を装って言ったものの、内心は驚きを隠せない。
いや、ワープでこの町へは来れないけどワープでこの町から出れるとか……
全く原理はわからないけど、魔法って便利過ぎない?
「じゃあいきますよ!」
シズクは魔法を唱える。
周りが光に包まれた。
少し懐かしい感覚に襲われる。
・・・・・・
気づくと、全く見たことのない風景が広がる。
先ほどまで近くにあったバカでかい塔はなく、それどころか高い建物が見当たらない。
そして、これまでの町にあった城壁というものもない。
これまで見てきたどの町よりも質素だ。
「これが……魔界に一番近い町?」
僕は自然と言葉が出ていた。
魔界と一番近い町であれば、城壁ががっつりあって敵の侵入を絶対防ぐ感じになっていると思い込んでいた。
そのあてが外れて、驚きを隠せない。
ロイとアザレアも少し訝しんでいるようだ。
アザレアはともかく、ロイもこの町には来たことがなかったのか。
「ぱんけーき!どんな食べ物なんだろう!!早く食べたい!!!」
僕たちの驚きをよそに、目の前にいるマツリはパンケーキを連呼している。
その様子を苦笑してみていたシズクはマツリに話しかける。
「マツリさん、さっそく行きましょうか。パンケーキが待ってますよ」
「はい!!ぜひお願いします!!」
マツリは元気よく返事をする。
メイドの格好もあってとっても可愛いし、シズクと仲良くなって少しほっとする。
僕たちはシズクの後について、町の中を歩く。
そして森の中にある店にみんなで入った。




