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中央国家「カトラス」 ②


目の前にはサングラスを付けて座っている筋肉質な男と、そのそばで立っている細見の男の二人が部屋の中にいた。

僕にとっては果てしない緊張感が漂っている部屋に感じた。

つばを飲むことすら意識しないと難しいぐらいに。


他のみんなはどうなのかと思い横目で見る。

右にはロイが、左にはアザレアが見えた。

二人とも全く緊張はしていないようで、いつも通りに見える。

ただ、臨戦態勢なのか、剣や杖の近くに手を伸ばしている。

その様子を見てなのか、細見の男は僕たちに声をかける。


「そこまで緊張しなくていい。別に君たちを攻撃したり、食べたりはせんよ」


全く緊張感のない言葉で話しかけてきた。

いや、その言葉で緊張感が緩むわけないんだよなぁ。

そう思いつつ、僕が先陣を切って話しかける。


「お招きいただき、ありがとうございます。僕がこの小さな旅団をまとめているリーダー、ヴァルと申します。お見知りおきを」


すると、サングラスの男が口を開く。


「わざわざ遠い所から、来てもらってすまなかった。私はこの中央国家「カトラス」の軍隊本部を統括しているガゼットだ。そしてこの横にいる男がジン」

「始めまして。ジンと申します」


ジンは深々と頭を下げる。

こちらも紹介しないといけないか。


「よろしくお願いします。僕の右にいるバトラーはロイ、左にいるメイドはアザレア、その横にいるメイド見習いはマツリと言います」


三人とも深々と頭を下げる。

所作含めて、まごうことなきバトラーとメイドにしか見えない。

すると、ガゼットが話しかけてくる。


「頭をあげてくれたまえ。ロイ君と……魔族のアザレア君、マツリ君」


僕を含めここにいるメンバーは誰も眉をピクリとも動かさない。

そもそも呼ばれた理由はこの二人が魔族であるからだと思っていたからだ。

三人は頭をあげてガゼットの方を見る。

さて、そろそろ本題に入りますか。


「ガゼットさん。僕たちは慣れあいをしに来たのではないと思っています……僕たちに何の用ですか?」


ガゼットは背もたれに体重を乗せる。

そしてゆっくりと口を開いた。


「君たちには……魔族との和平を取り次ぐために魔界に行ってほしい」

「?」


あまりにも場違いな言葉が聞こえた気がした。

ここは人間の国家の中で一番大きい国家「カトラス」

その中でも軍隊のトップが目の前にいると思っていたのだが……


ロイはガゼットに話しかける。

「マスター様が驚かれているので、もう少しお話を聞かせていただけませんか?どうして和平を取り次ぐという発想になったのかも含めて」

「あぁ、すまなかった。話が飛躍しすぎたかもしれんな……まず、現状の人間側と魔族側の話しを先にしよう」


ガゼットは葉巻に火をつける。

その葉巻をふかしながら話を続ける。


「ここからは秘匿情報が多いので、外に言うのはご法度と思ってほしい。人間側についてだが……一番の戦力だった勇者が行方不明になっている」


行方不明というか、目の前にいるけど。

突っ込みたいものの、僕は顔をピクリとも動かさない。

ただ、横にいるバトラーの方を見たくてたまらなかった。

怪しまれないように、少し驚いておいた方が良いか……


「……僕は初耳ですね。いつから勇者とは連絡が取れなくなったのですか?」

「1ヵ月程度か。勇者が勇者パーティーを置き去りにして魔王城に行ったきり何も帰ってこなくなったらしい。シズクがそれを話してくれた」


まてまて。新しい事実が出てきた。

ロイの奴、自分のパーティーを置いて単独で魔王城でアザレアと戦っていたのか。

そんなの聞いてないぞ。

何をしゃべってもボロが出そうだから、ガゼットに話を振ろう。


「なるほど。逆に魔王側については?」

「魔王側も勇者が行方不明になってから一向に姿を見せなかった。我々としては勇者と魔王が刺し違えたと思っていたのだが、お主たちがカルムの戦場にてみただろうと思うが……魔王が確認された」


確認されたというか、目の前にいるけど。

確かに、僕がこの世界に来なければ、ガゼットの言う通りになっていた可能性もかなり高い。

ただ、運命はそうはならなかった。

僕が二人の戦いを止めてしまったから。

そのせいで勇者と魔王と世界を旅しているわけだが。

ボロを出さずに話す内容を考えていたところ、アザレアがフォローを入れてくれた。


「つまり、人間側に勇者がいなくて、魔族側に魔王がいる……状況としては最悪だから、和平を進めたいと」

「その通りだ。俺にはこの世界の人間を守る義務があるのでな」

「……で、人間と魔族のパーティーを組んでいる私たちにお声がかかったというわけね」


アザレアはしっかりとした口調で淡々と聞く。

ガゼットは自分の吸っていた葉巻の火を灰皿に押し付けて消し、答える。


「その通りだ。我々人間部隊で魔族の町に行ったところで良くなることはあり得ない。であれば、人間と魔族のパーティーが行く方が理にかなっていると思うが?」

「そうね。私もそう思うわ……で、どの町に行けばいいのかしら?」

「そこらへんは、ジンに一任している。ジン、頼んだぞ」


ガゼットはジンに話しかける。

ジンはガゼットにお辞儀をして、我々の方を向いて話す。


「この部屋では色々ご説明するための物が足りないため、別室をご用意しております。そこでお話をさせていただければ」


まぁいいか。

このトップの話は聞けたし。


「承知した。みんな、行くぞ」

「頼んだぞ。人間の未来は君たちにかかっている」


ガゼットは部屋を出て行く僕たちに声をかける。

僕たちはジンについていく形でこの部屋を出た。


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