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中央国家「カトラス」 ①

「もう馬車は暇!我慢できない!!私は勝手に行かせてもらうわ!!!」

「アザレアさん、もうすぐ着きますから」


アザレアが不満たらたらな状況をマツリがおさめる。

水の都「カルム」を出てから、ずっとこんな調子だ。

どこかで見たことある風景にため息しか出ない。


前に乗った馬車よりも数倍大きい部屋着きの馬車に四人で乗っている。

今回は、シズクが手配してくれたおかげでロイも部屋の中でのんびりしている。


「もう何回聞いたことやら……メイドなのに我慢ってものを知らないなぁ」

「クソバトラー……表に出なさい。今日がお前の命日にしてやるわ」

「望むところだ。表に出ろ、このクソメイド」

「二人ともやめてください!!」


マツリは大声で言う。

二人とも少ししゅんとしていた。

ロイもアザレアもマツリには頭が上がらないなぁ。

この世界の勇者と魔王だっていうのに。


そしてふと思った事をロイに聞いておく。

「ロイ。中央国家ってところ、別にワープで飛べば楽じゃないの?」

「あのなぁ、中央国家にワープで飛べるわけがないだろ」

「どうして?」


その質問に対しては、前で馬車を引いている人の隣に座っているシズクが答えてくれる。

シズクは今回の中央国家への案内人らしい。

元勇者一行を案内人に使う僕たちって……

色々な人に怒られても、何も言い返せない気が。


「ヴァルさん。それはですね、中央国家には魔法障壁が何重にも展開されているからです。つまり、ワープで中央国家に飛ぶと、その障壁に高速で当たるので痛い目に合うってことです」

「つまり、単純に壁にぶつかるってこと?」

「ニュアンス的には合っています。ただ、ぶつかった後はちりも残らない可能性がありますが」


なんだ、RPGとかだと行ったことのある街はいつでもワープで飛べるのに、異世界だと色々制約があるものなんだなぁ。

そう思っていると、シズクは僕たちに声をかけてくれる。


「見えてきましたよ。あれが中央国家、カトラスです」


シズクが指さす方向には、かなり高い塔が一本そびえたっていた。

そしてその周りに街があり、町の周りは全て城壁で覆われている。

うん、確かに人間界の中心ですというアピールが激しい建物だ。


「そうそう。あんな感じだった。いやー、懐かしい」


ロイはそんなことを言っている。

懐かしい?

前にシズクもいるため、小さな声で聞いてみる。


「ロイ。懐かしいってことは、ここに来たことはあるのか?」

「もちろん。一応、勇者に指名されるのはこの町だからな。この町に来たことがない勇者っていうのは絶対にいない」

「なるほど」


勇者って指名制であることを初めて知った。

それこそRPGだと、君は勇者だ!ってところからスタートな気がするけど、この世界だと指名制なんだな。

神のお導きとかそういう世界だと思っていたわ。


あまりにも暇すぎるのか、アザレアはシズクに話しかける。


「シズクさん、私たちはどなたにご招待されている感じなのかしら?」

「言っていなかったか。中央本部だね」

「中央本部?つまり、この国で一番偉い人が来るって感じ?」

「そうだね。正確に言えば、魔族との戦いで一番トップの人だね」

「……なるほどね」


アザレアの目はスッと細くなる。

そりゃ、魔王としては目の敵か。

その場で切り殺したいまであるかもしれない。

とはいえ、横に勇者がいる状態でそれを許してくれるかは別だが。


「まぁいいわ。着いたら起こして」


そう言うと、アザレアは寝転がって寝始める。

僕もこの後にごたごたがあることを考えると寝ておきたい。


「僕も寝ようかな」

「えぇ~ヴァルさん寝ちゃうんですか?」


マツリが寝るのを引き留める。

……これはまずい流れだ。

ここはきっちりと断ろう。


「いや、この後が大変かなぁと思って寝ておきたいんだ」

「あっ、マスター。前の町で買ったカードゲームを始めますか。カード配りますね」


おいおい、ロイよ。

話しを聞いていたか?


「ヴァルさんのターンですよ。早く切ってください」

「そうだぞ、マスター。マツリちゃんを待たすなよ」


この二人は無限の体力を持っているのかなぜかずっと元気で、長時間遊びに付き合わせられるから、嫌だったのに……


結局僕はそのあと、カトラスに着くまでずっとボードゲームをする羽目になった。


4時間ぐらいボードゲームをしていたところ、馬車が止まる。


「到着しました。カトラスの中央本部塔です」


シズクは僕たちに伝えてくれる。

ずっと遠くから見えていた塔の真下に到着した。

僕たち四人はそこで降りる。

豪勢な馬車が止まったからか、少し周りにいる人たちから物珍しそうな顔で見られる。

ただ、マツリはそんなこと全く気にせず、塔の大きさに興奮している。


「すっごく大きいですね!高さが全くわからないです……」


本当にその通りだ。真上を見上げても、先端が全く見えない。

そびえたつ壁といっても間違いない。


「行きますよ。ついてきてください」


シズクはそう言うと、中に入っていく。

僕たちはシズクについていった。


中はかなり広く、右に行ったり、左に行ったりしてほぼ迷路のようだった。

一番驚いたのは、縦方向に行きたい場合は音声認識のワープ場所があって、そこで何回か言うとその階に瞬時に飛ばされることだった。

僕やマツリはもちろんのこと、アザレアでさえも音声認識でワープできる技術にはかなり驚いているようだった。


そしてほぼ最上階近くの部屋にたどり着いた。

そしてシズクはその部屋をノックする。


「シズクが戻りました。ご連絡のあったヴァル一行の皆様をお連れ致しました」

「うむ。入れ」


部屋の中から低く、渋い声が聞こえる。

シズクは小さく僕たちに聞こえる声で話す。


「これより先に俺は参加できない。この先は君たちの場だ。幸運を」


僕は汗ばんだ手を服で拭いて、ドアノブに手をかける。

そして、扉を開いた。


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