次の町へ向けて
魔族との戦争があってから数日たった。
もちろん、完全に町が戻ったわけではない。
特に露店街は今でもいろんなところが壊れている。
一瞬とは言え、魔族の攻撃を受けたのだから。
ただ、アザレアのおかげで大部分の攻撃は防ぐことができようだ。
町の大半は、まったく損傷していないように見える。
そして今は宿屋で朝ごはんを四人でのんびりと食べていた。
「そろそろこの町も見飽きてきたわね」
「そうですか?私はこの国がとても美しいので大好きですけど」
「美しい国であることには変わりないのだけど……やっぱり飽きた」
アザレアとマツリは朝ごはんを食べながら話している。
僕も確かにそろそろ飽きてきたかも。
ロイに一応聞いておこう。
「ロイ、次のいく町は決まってたりするのか?」
「うーん、町はいっぱいあるけど、そこまで行きたいと思う町は無いかな……」
その返事を聞いたアザレアは顔を膨らせながら責める。
「バトラーなんでしょ~。なんかいい場所に連れて行きなさいよ~」
「あのなぁ……人間の国と言えども、こんないい国ばかりじゃないんだ。選ぶ俺の気持ちもわかってほしいけどな」
「むー」
アザレアも自分の魔界のことを思ったのか、何も言い返せない。
そりゃ、どこの国も同じもんか。
治安のいい国もあれば、治安の悪い国もある。
人間も魔族も大差ないようだ。
そんな話をしていたら、宿屋の扉が開く。
僕たちは全く気にせずご飯を食べながら話していたが、一人の青年が僕たちの元に歩いてきた。
「探しましたよ」
「……あんたか」
僕はとっさに言葉が出てしまう。
シズクだった。
そしてシズクは僕の方に先に頭を下げる。
「以前のやり取り、大変失礼した。まずはそれを謝りたく」
「急にどうしたんだ?」
「今回の一件を長老から聞かせていただいた。後ろのメイドのお二方にかなり助けていただいたと」
「まぁな」
僕は何もやっていないものの、冷たく返事をしてしまう。
……お前から受けた、脇腹をケガは忘れていないぞ。
その返事を聞いたシズクは少し苦笑しつつも再度、深々と頭を下げる。
「許してくれとは言わない。ただ、あなたの大切なお仲間を侮辱した件、それだけは本当に謝りたかったのだ。すまなかった」
「別にいいさ。仲間が傷づいたわけじゃない。あとそこまで謝ってくれたんだ。水に流そう」
「ありがとう」
シズクは頭をあげる。そしてマツリとアザレア、ロイの方を向いて再度頭を下げた。
「あなたのお仲間をケガさせた件、申し訳なかった」
「俺は全く気にしてないから」
「いいわよ。マスターが水に流すって言ってるし」
「私も。マスターさんが良いって言ってるので気にしないでください」
「……」
シズクは黙って頭をあげる。
そして、ほんの少しだけ懐かしそうな目でロイの方を見た気がした。
すぐに僕の方を向く。
「あと、もう一つお伝えしなければならないことが……。今回の一件を中央国家の方にお伝えしたところ、直ちに連れてこいとの命令を受けました」
おいおいまじかよ……。
なんか面倒事に巻き込まれてないか?
「その中央国家が僕たちに何か用なのか?」
「……正直わかりません。本来であれば、命令なので有無を言わさず連れて行かないといけないのですが、一応確認しておこうかと。行きたければ丁重にお連れ致します。行きたくなければ、速やかにこの国から出て頂けるとありがたいです」
「なるほど。一応選べるようにしてくれたんだ」
「そうですね。この町の英雄を中央国家に連行とかバカげてますから」
この人、しれっと毒を吐いてるよ……
僕は他のメンバーに尋ねる。
「どうする?僕としてはどっちでもいいけど」
すると、アザレアが暇そうに話す。
「良いんじゃない。どうせ行く国も決まってないし……バトラー、その中央国家ってのは何かあるの?」
「そうだな。人間の国の中でも恐らく一番でかい」
「でかいだけ?」
「うーん……色々なご飯があるぐらいか。他の国からの物資が一番届くから、色々なものが食べれるぐらいか」
「私、行きたいです!!」
マツリはロイの話しを聞いて、立ち上がってまで行きたいアピールをしている。
うん、話の流れ的にご飯目当てってところが可愛い。
あと、行くかは決まったかな。
「とりあえず、行かせてもらおうかな」
「承知した。では、この宿に中央国家行きの馬車を準備させよう。最後に……」
「まだあるのか」
目の前のシズクは僕の目をしっかり見て聞いてくる。
「あなたのお名前を」
「……ヴァルだ。よろしく」
「アヤメと言います。今後ともよろしく」
僕とシズクは握手をした。




