戦争を止めろ! ①
戦場のぽっかり空いた場所に、適当な感じで座っている場違いなバトラーがいる。
うん、戦場にあの格好で居てくれるのは助かる。
マジで目立つから。
とはいえ、そこに行くためにも戦場を駆け抜けないといけない。
けど、僕の能力はそこまで高くない上、マツリは戦闘向きではない。
「行くわよ」
そう言うと、アザレアは自分自身に球のような防御魔法を張る。
その防御魔法は僕やマツリにも張られた。
魔力がほとんどわからない僕でも、これがかなり強固なのは見ればわかる。
さっき町に展開したものとはけた違いだ。
「アザレア。魔法を使ってもいいのか?魔族ってばれるぞ」
「はぁ、あんた何を言ってるの……ここは戦場だから、魔族の魔力とか誰も気にしてないわよ」
確かにそうだ。魔族とばれるとか以前に、目の前に大量の魔族がいる。
そりゃここで魔法を使っても誰の魔力かなんてわからない。
アザレアがロイの方にどんどん進んでいくので、僕とマツリも離れないようについていく。
その間、四方八方から魔法や弓矢などが飛んでくるが、防御魔法にすべて防がれる。
「この魔族め!!!」
「くそ人間なんて始末してしまえ!!」
とか言いながら直接攻撃してくる兵士や魔族はいるものの、その攻撃もすべて弾く。
剣での攻撃だと防御魔法で剣が折れ、魔法の攻撃は跳ね返す。
アザレアの魔法すげぇ……
マツリも色々な攻撃を受けて毎回驚いているものの、誰の攻撃も受けていない。
そうこうしているうちに、ロイの場所までたどり着く。
ただ、急に人間も魔族もいなくなって戦場らしくない。
そこでのんびりと座って何かを見ているロイに声をかける。
「ロイ、こんなところで座って何をしているんだ……というより、なんでここら辺は誰もいないんだ?」
「……」
ロイは返事をしない代わりに目の前を指さす。
僕はそちらの方を見る。
すると、目の前で男と女の二人が戦っている。
「マスター、あのメイドの魔法か何かで守られてるだろ?」
「そうだけど」
「それがなかったら今頃、細切れか氷漬けになってるぞ」
「?」
意味が分からん。
そう思っていたら、急に自分のバリアがはじける音がした。
「これで一回死んだな」
という言いながら、急にロイは自分の剣を振る。
何かが当たった音がしてかなり遠くで爆発が起こる。
「もしかして、ここで戦っている二人の攻撃が飛んできて、誰も入れなくなっているってこと?」
「そういうこと。メイドにちゃんと感謝しておきな」
そう言いながらあくびをする。
凄い戦いをしているのはわかるが、誰が戦ってるんだ?
アザレア、ロイと同じくのんびりしながらロイの横に腰を落とす。
「あれは……リズね。あの戦闘狂の女が苦戦しているなんて、珍しいわね」
「あれが噂に聞く氷結のリズか。うちのシズクと対等に戦うとはすごいな」
いやいや、四天王と元勇者パーティーが戦っているのに、この二人はのんびりしているんだ?
「ロイ、アザレア!二人を止めなくていいのか?」
「なんで止めるのよ」
「なんでって……戦争のあの二人が戦争の中心じゃないか!早く止めて戦争を止めさせないと」
僕は慌てて話すものの、ロイもアザレアものんびりとみているだけだった。
そしてロイとアザレアはゆっくりと口を開く。
「確かにそうなんだが……なんか俺も同じようにずっと戦って来たけど、結局こういう個人戦はどっちが勝っても負けても、結局戦争は終わらないんだよな」
「そうね。戦況という意味では変わるけど、戦争自体はすぐには終わらない。何なら、まとめ役がいなくなるからもっと荒れることがある」
「おっ、メイド。気が合ったな」
「その言い方、腹が立つけど、そうね」
……二人の言っていることは正しいのかもしれない。
この二人のどっちが勝っても、もし止めたとしても戦争が終わるとは思えない。
何なら、残った一人が他を殲滅するから死者が増えるだけかもしれないのだ。
でも、そしたらどうすればいいのだろうか……
すると、ロイがアザレアに呟くように話す。
「目の前の戦いって、もしかしたら俺とお前が戦っていたのと同じなのかもな」
「どういうことよ」
「魔族を目の敵にした人間と、人間を毛嫌いしているだけの魔族。でも理由なんてそれぐらいしかなくて、別に戦争なんかしなくても解決できたんじゃないかと思って」
「……そうね。今回の一件で少しそれは思ったわ」
そして二人は黙って、目の前の戦いを見る。
二人は自分の戦いと目の前の二人の戦いを重ねて見ているのかもしれない。
そしてロイは不意に立つ。
「決めた。この戦争は止めよう」
「ロイ、さっき言ってたけど二人を止めるだけでは、この戦争は止まらないんじゃなかったのか?」
「そうだな。だが今回の戦争を始めた、あのリズっていう四天王ですら最も恐れている奴がここにいるじゃないか」
四天王でも恐れている奴?誰のことだ??
僕は考える。
するとアザレアは立ち上がって僕の頭を叩く。
「いたっ!」
「本当にあんたは怖いもの知らずね。昔の私だったら、とっくに燃やしてるわよ」
アザレアは笑いながらも僕に話しかける。
なるほど。
確かにいたわ。
「じゃあ行ってくるわね。いい感じのタイミングでそっちの奴を気絶させて」
「あいよ。任された」
そう言うと、アザレアは急にいなくなった。
あまりのスピードに僕とマツリは目をしばしばさせる。
ロイはあくびをしながら、剣の準備と準備体操を始める。
僕にはこの後どうなるのか全くイメージができていなかった。
そしてロイが中央で戦っている二人の元に歩きはじめる。
僕とマツリもおいていかれないようにロイについていく。
シズクとリズの近くまでもう少しというところまでたどり着く。
「魔族め……はぁぁ!!!」
「早く諦めなさいよ!この人間風情が!!」
戦場でぽっかり空いた真ん中で、シズクとリズが罵り合いながら争っている。
あまりに激しい戦闘でこちらには全く気付いていない。
ロイはその様子を気にせず、静かに目を閉じた。
そして数分後、この戦場に轟音と共に雷が轟く。
その瞬間、ロイが動いた。




