魔族からの攻撃 ④
砲撃のあった方向を追って町を出た。
一面森が生い茂っていて、その前に人間が陣を組んでいる。
そして、その奥の高台では争いの声や魔法が飛んでいるのが見えた。
まずは人間の陣の方に向かいつつ、僕はアザレアに話しかける。
「ロイのやつ、大丈夫かな……」
「マスター、あいつのこと心配しているの?」
アザレアは僕の発言に対して笑って返す。
「あいつは不器用だし、何にもできないし……でも、戦闘だけは私もお墨付きよ」
「なんか、ロイのこと知ってるような口だな」
「ふん……いやでもここ数日争ってたからわかるだけよ」
アザレアはプイと違う方向を向く。
アザレアにも可愛い所あるなぁ。
「マスター……いやヴァル。それ以上何か言ったら燃やすからね」
心の中でも見透かされたのかと思うような言葉。
燃やされたくないから黙っておこう。
「あぁそうだ。マツリちゃんちょっと来て」
「?」
マツリは一度止まって、アザレアの方に向かう。
あれ、どうかしたのかな?
アザレアは呪文詠唱後にマツリのカチューシャに魔法をかける。
「はい。これでまた魔族の魔力は隠したわよ。あんな無茶、今後はダメだからね!」
「アザレアさん……ありがとうございます!」
「いいわよ。さぁ行きましょ」
再び走り始める。
アザレアはやっぱりちゃんとしている。
あのロイと違って圧倒的に。
なんか先行ったロイが心配になって来た。
そして人間陣営が目の前に近づいてきた。
さて、ここからどうしようかな……
人間陣営に近づくと、内部は酷く混乱しているようだった。
とりあえずロイについて話を聞かないと……
人間陣営の外で門番をしている兵士に聞く。
「すみません、旅をしているものなのですが……こちらに剣を持ったバトラーは来ませんでしたか?」
「バトラー?あぁ。来たよ。ただ、関係者以外は入れないと伝えたところ、わかりましたとだけ言って、あっちの魔族がいる方の森の方に行ったよ」
「そうですか。ありがとうございます……で、中が何かひどく混乱しているようですが何かあったんでしょうか……」
兵士は僕の発言に呆れたのか、ため息をつきながら返事をする。
「あんた、町に展開された防御魔法を見てみろよ」
「へ?」
僕は町の方を見る。
さっきアザレアが展開してくれた、何重にもなっている防御魔法が見える。
そしてその防御魔法が、魔族から時々飛んでくる魔法をすべて守っている。
「はぁ……ただの防御魔法じゃないのでしょうか」
「……あんたは魔法にかなり疎いんだな。水の都カルムに元からあった防御魔法はかなり特注品で、それが目の前で砕かれた。それでどうするか対策を考えていたのに、それよりも数倍すごいものが何重にもなって急に復活したんだぞ」
そうなんだ。アザレアがちょいと魔法を唱えただけに見えたけど。
この世界のわかる人には、そのすごさがわかるんだ。
「とてつもなくすごい術者に違いないが、誰がやったかわからない。そして、噂では魔族がやったという情報まで流れている。敵の魔族をどうにかしないといけないのに、そんな気持ち悪い状況で戦えるのか……ということで、色々混乱している」
そりゃ、魔族のトップの術者だから果てしなくすごいとは思う。
たぶんこの世界の五本の指には入るはず。
うーん、本当のことは言えないしどうしたものか……
ふとポケットの中に入っている紙を思い出す。
そうだった。
「すみません、町の露店街のおじいちゃんから紙を預かっています」
「露店街のおじいちゃん……長老か?まぁいい。受け取っておこう」
「それでは」
僕は話を切り上げ、そして兵士が教えてくれた森に入る。
僕はアザレアに話しかける。
「アザレア。あんたの防御魔法、凄かったんだな」
「もちろん。とは言っても、全然本気じゃないけどね。本気出すと、魔族特有のピリピリ感が出ちゃうからだいぶ抑えたわよ」
「アザレアさん!?あれで抑えていたのですか??」
「もちろんよ。マツリちゃんは才能があるから、コツさえつかめばあれぐらいできるようになるわよ」
あぁ、やっぱり魔王って凄いわ。
だいぶ抑えて作って人間陣営を混乱させるとか。
そんな奴が近くにいることが少し怖くなってきた。
見た目はメイドの格好してるから、かわいいけど。
というか、マツリちゃんでもできるの?
軽い雑談をアザレアやマツリと挟みつつ森を抜け、高台を上るとそこは……戦場が広がっていた。
頭に角が生えた魔族と人間の兵士が戦っている。
ざっと魔族が千人、人間が七百~八百ぐらいか。
戦力としてはちょっとだけ人間が押されているようにも見えるけど、負けが決まったというほどの戦況ではない。
ただ、戦場の中心にとても異質な空間を見つけた。
それは戦場の中心なのに、ぽっかりと誰もいない場所が出来ている。
気にはなるが、まずはロイを探さないと……
「マスター、あっちにロイがいるわよ」
アザレアは戦場の中心にある、異質な空間の方を指さした。




