魔族からの攻撃 ③
おじいちゃんは人だかりができている方向とマツリの間に立ち、周りにいた露店街の人に向かって吠える。
「おまえら……恥ずかしくないのか!!」
周りの群衆はうーんという顔をしている。
その中の一人がおじいちゃんに話しかける。
「長老。ただ、相手は魔族だぜ」
「魔族じゃと。だからどうした?」
「……そいつは俺たちの敵だってことだよ」
「ほぉ。お主にとっては、ワシの腕を治したお嬢ちゃんと、この町を守るための防御魔法を展開しなおしてくれたお姉さんが敵じゃと言いたいわけじゃな」
「……」
おじいちゃんと話していた人が黙る。
その場にいた人間はだれ一人と声を出さなくなった。
おじいちゃんはマツリやアザレアのために怒ってくれているのだろうか。
そしておじいちゃんは、ゆっくりと群衆に向かって語り掛ける。
「儂達はこの露店街の住人じゃ。毎日色々な人を見ておるはずじゃ。そのお主たちがの目は節穴だったのかのぉ……」
人々はまだ誰も一言も声を出さない。
魔族からの攻撃が防御魔法に当たる音がなっているはずなのに、
この場だけはあまりに静かすぎて、つばを飲み込む音すら聞こえそうなぐらいに感じた。
さらにおじいちゃんは話す。
「このお嬢ちゃんとお姉さんは……わしとわしらの町を守るために動いてくれたはずじゃ。そしてそれをお主たちのその目で見ていたはずじゃ。人を守る、助けるということに人間とか、魔族とか関係あるのかのぉ……」
おじいちゃんは目を細める。
すると、さっきおじいちゃんに話しかけた人がアザレアとマツリの方に向かう。
そして頭を下げた。
「さっきはすまなかった。俺が間違っていた。あんたたちは長老と俺らや俺らの場所を守ってくれた。本当にありがとう」
その言葉が出た瞬間、周りにいた人たちが一斉に口々に謝りながら頭を下げる。
その様子を見ていたアザレアはポカンとしていた。
これまで、人間に憎まれることしかなかったアザレアが、人に感謝されて混乱しているようだ。
そりゃ魔王が人間に感謝されるなんて、普通に考えればありえない話か。
そしておじいちゃんがアザレアとマツリの方に向かう。
「すまんかったのぉ、お嬢ちゃんとお姉さん。悪く思わんでくれ。そして繰り返しになるが……儂を助けてくれて本当にありがとう」
おじいちゃんは深々と頭を下げた。
マツリはおじいちゃんの方を見て話しかける。
「いえ、助けたかっただけなので。そしてごめんなさい。魔族であることを隠していて」
「そこは気にせんでええ。元からお嬢ちゃんが魔族であることはわかっておったわ」
「……どうして?」
「頭を撫でたとき、角があったからのぉ。そりゃ誰でもわかるわな。でも、そんなことは些細なことじゃ。気持ちが一番重要なんじゃ」
おじいちゃんは笑い、そしてマツリの頭を右手で撫でる。
マツリは涙を流しながらニコッと笑う。
このおじいちゃんはすごい人だったのかもしれないと僕は感じた。
この場を収めるだけでなく、魔族という種族を全く気にしていないことに。
アザレアの方を見ると、マツリとおじいちゃんの二人を見る目がすごく暖かなものになっていた。
僕はアザレアに話しかける。
「アザレア。やっぱり魔族軍を止めに行こう……ロイだけじゃ心配だ」
「奇遇ね、マスター。私もそう思っていたところよ……こんなおじいちゃんに痛い思いをさせた分は、ちゃんとお返ししないと。あと……」
アザレアは話すのをやめると、魔法詠唱を始める。
詠唱はすぐに終わり、防御魔法の方に放つ。
防御魔法が数重になった。
「これであのバカの対防御砲撃も貫通できないでしょ」
「そりゃ安心だ……マツリちゃん、アザレア行くよ」
マツリとアザレアは僕の方に集まる。
僕は集まっている人たちに話す。
「皆さんは念のため家で待機していてください。僕たちは今からこの攻撃を止めてきます!」
一瞬だけしんとなる。
そして一斉にワッと声が上がる。
「よろしく!!!」
「魔族のお姉さん!よろしく!!」
「この町を頼んだ!!」
「おじいちゃんは任された!!」
そしておじいちゃんが呼び止める。
「そうじゃ。リーダーの方よ。ちょっと来てくれんかの」
「はい?」
僕はおじいちゃんの方に向かう。
おじいちゃんは何もない所に魔法で文字をサラサラと書いて、それを胸元から出した手帳に移す。
そして書いた部分を破って僕に渡してきた。
「これを。人間の兵士どもに会った時はこれを渡しなさい。少しは役に立つじゃろうて」
「ありがとうございます!」
僕はその中身を見ずにポケットに突っ込む。
町の声援を背中で受けながら僕たちはロイを追って、砲撃されている方向に向かった。




