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旅日誌の始まり ②


「俺ってバトラーの服、似合ってない?一度着てみたかったんだよなぁ~」

「私もメイド服、似合ってるかも~やっぱり私は何着ても似合ってるタイプだわ~」


おいおい。なんだこの自信過剰な二人は。

とはいえ、確かにロイもアザレアも似合っていた。


「じゃあ行きますか。マスター」

「そうね。マスター行くわよ」


二人がしれっと聞きなれない言葉で僕を呼ぶ。

何を言っているんだ……


「なんで僕がマスターなんだ?」

「えっ、そりゃお前の手助けを俺たちがするんだろ?じゃあマスターで間違ってないと思うけど?」

「そうよ。私たちのマスターなんだから」


この二人に旅の手助けなんてお願いした、過去の僕を全力で殴りたい。


「さぁ、人間の町まで行くぞ。ちょっと遠いからテレポート使うからよろしく!」

「ちょっと!私、魔族なんだけど!!」


アザレアは文句を言っていたものの、ロイは呪文を唱える。

次の瞬間には、光に巻き込まれて気づいたら周りが平原の場所にたどり着いていた。


で、話は初めに戻る。


・・・・・・


二人の喧嘩は町に行く間に少し落ち着いていた。

さすがに4つ目の山を消し飛ばしたときにやりすぎなことに気づいたのだろう。


あれだけ動いたというのに、二人とも服装が全く乱れていない。

これがバトラーとメイドというものか、と少し関心。

いや、中身は勇者と魔王だが。


二人をよく見てみる。

ロイは黒を基調とした、執事の英国紳士のような燕尾服を着ている。

帽子はないが、黒の蝶ネクタイがびしっと決まっている。

そして手には白い手袋が。

同性の僕から見ても、普通にかっこいい。


アザレアは白を基調とした、ざ・メイドのカッコをしている。

カチューシャが少しだけ大きいようにも感じるが、まったく違和感はない。

足が少し出すぎの気もするが……本人が良いのであればいいだろう。

とっても可愛い。


ロイもアザレアも黙って立ってる分には完璧なバトラーとメイドに見える。

それも、とびぬけてかっこいい&可愛い。

ただ、争うと見てられないなぁ……



山を越えて町までもう少しかと思った時にロイとアザレアが、だらけた声で話しかけてきた。


「マスター、面倒ごとだぞー」

「ホント、人間ってバカだよね」


何を言ってるんだ?

そう思っていると急に声をかけられる。


「おい、そこの小僧!!とまれ!!荷物と有り金、全部おいていきな」


急に木々の間からぞろぞろと人が出てくる。

ざっと30人以上はいるようだ。

僕が気づかないうちに、山賊に囲まれていた。


「親分、やっぱりこの道はいいですね。カモが多くて」

「今日はラッキーだ。こんなお付き人と歩いているボンボンが通るとは」


なるほど。二人が言っていたことはこの山賊のことか。

というか、ボンボンねぇ。確かにそう見えるか。

ただ、金なんてこっちの世界に来たばっかりでまったく持っていない。

面倒事はこれ以上ごめんだ。


「すみません、お金も何もないので通してもらっていいでしょうか」


事実をそのまま伝える。

その言葉に周りの山賊は高笑いする。


「あはは!こいつら、金も持ってないらしいですぜ」

「お坊ちゃまには、金が何かもわからないか」


まぁ、言いたいように言ってくれれば。

ここはロイもアザレアも同じ意見のようで、まったく聞いていないし暇そうにあくびしてる。


「こんな弱っちそうなバトラーを雇って、おままごとですか~」


ピキッ!という音が聞こえた気がする。

その横からクスクスと笑い声が。


「おい、そこのメイドもさっさと俺たちにご奉仕しろよ!取り柄はなんもないのか?」


バキ!っていう音が間違いなく聞こえた。

その横からゲラゲラと笑い声が。

うん、逃げる準備はもうできた。


「こんな何もできなさそうなバトラーとメイドを雇って、何がしたいの……」


煽っている途中の山賊が重力に反して真横に吹き飛んで木に当たって止まる。

あまりの一瞬の出来事に場が凍った。


「すみません、弱いバトラーの弱いパンチが当たってしまって。もちろん、お怪我はありません……よね?」


ロイは手の関節を鳴らしながら淡々と話す。

煽るのうまいなぁ。


「この野郎!!」


近くにいた山賊がロイに攻撃を仕掛けるが……そいつも重力に反して真横に吹き飛ぶ。


「あら。ごめんなさい。ご奉仕しようと思って、か弱いメイドの魔法を当てて差し上げたのですが……痛かったですか?」


アザレアも右手パーにした状態で口の前にあてる。

煽ってるねぇ。やっぱり権力者ってのは、煽り能力が高いのかも。

というか、か弱いとは程遠い気がするケド、言ったらどうなるかわからないので、言わない。


「っ!!!やっちまえ!!!!」


親方が声をあげた。一斉に山賊が攻撃してくる。

こうなると思っていたから、すでに僕は二人からすでに逃げていた。

もちろん、山賊が怖いのではなく二人が怖いから。


そこからは1分もかからなかった。

山賊が可哀想と思うぐらい悲惨な状況が広がった。

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