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魔族からの攻撃 ②


「アザレアさん!大丈夫って言ってたじゃないですか」

「そうね。ただ、あの攻撃は防げないわね……あのバカの攻撃は……はぁ」


アザレアはため息をついた。

何か知っているようだ。


「アザレア、今の攻撃は?」

「あれは四天王のリズの対防御用砲撃魔法ね。あのバカは……」

「それはそうと、とりあえず逃げよう!!」


僕は提案する。それにマツリもアザレアも頷く。

すると、目の前を魔族の魔法が飛んでいき、町に当たる。

そのがれきが昼間に購入した屋台を直撃した


「「おじいちゃん!!」」


マツリもアザレアもその屋台の方に一目散に向かう。

屋台は完全に壊れ、下がどうなっているかわからない。

すると、がれきの下からうめき声がする。


「……うぅ」

「おじいちゃん!!今助けるから!!」


僕とアザレアとマツリが協力してがれきを除く。

アザレアは魔法が使えないからか、いつもより疲れているようにも見える。

がれきを取り除き、おじいちゃんを引きずり出した。

命は大丈夫そうだ、ただ……


「おじいちゃん、腕が……」

「なぁに。仕方がないことじゃて」


マツリは途中で話すのをやめてしまった。

おじいちゃんの腕はがれきで神経を押しつぶされたのか、だらんとなって動かすことができないようだった。


「お嬢ちゃんの頭を撫でてあげた、右手で撫でれなくなっただけじゃ」

「そんな……」


マツリは目を伏せ、手をギュッと握っている。

こればっかりはどうしようもない……

ここでマツリが魔法を使えば、恐らく手を治すぐらい簡単なのだろう。

ただ、それと引き換えに周りの人間に魔族であることがばれる。

それだけは避けなければ。


マツリは意を決したのか、僕たちに話しかける。


「おじいちゃんの腕を治します!」

「マツリちゃん、それはまずいって!」

「はぁ!?マツリちゃん、自分の言っている事わかってるの?」


僕とアザレアはマツリを問い詰める。

マツリは僕とアザレアの目をまっすぐ見ながらマツリは答える。


「ここで助けなかったら……私は一生後悔することになる!大丈夫。私の一族の魔法までは必要ない。一般的な回復呪文でどうにかするから!」


マツリは呪文詠唱を始める。

アザレアはもう何も言わない。

僕も何も言えなかった。




すると、呪文詠唱をしているマツリの方に外から魔法が飛んでくるのが見えた。

かなりのスピードで飛んでくる。




恐らく魔族が町を破壊するために放っている魔法の一部だろう。

ただ、このままだとマツリに当たるコースだ。

呪文詠唱をしているマツリはそもそも気づいていないし、避けたとしてもおじいちゃんに当たる。


そう思った瞬間、周りの世界がゆっくりになった。

あぁ、またこの感覚か。

前のシズクとの戦いでは出てこなかったこの感覚。

アザレアの方を見ると魔法に気づいているものの、自分が魔法を使えないことに気づいて何とか手だけ伸ばしている。


結局僕が助けるしかないのか。

僕は前と同じくマツリの前に立って壁になった。

壁にになった瞬間、時が普段の速度に戻った。


「グフッ!」


僕のお腹あたりに魔法が当たり、少し吹き飛ばされる。

ただ、ストレートパンチを受けているぐらいの痛さだったので、どうにかなりそうだ。


「いてて……本当に勘弁してほしいよ。魔族の攻撃。」

「そうね。私も限界だわ」


アザレアも僕の様子やマツリの様子を見ていて我慢の限界に達したらしい。

杖を取り出して、魔法詠唱を始めた。

そしてマツリもアザレアも詠唱が終わる。



マツリの方は、おじいちゃんの腕を治し、

アザレアの方は、この町の防御魔法を展開しなおした。



おじいちゃんは右腕をゆっくりと動かす。

さっきまで動かなかった腕が急に動くようになって、かなり驚いている。


「おじいちゃん、腕はどうですか?」

「……あぁ、奇跡が起こったとしか考えられん。ありがとうよ、お嬢ちゃん」

「いえ、どういたしまして!」


まつりはにこやかにおじいちゃんに笑顔で話しかける。

良かった……これでどうにかなったか。


ただ、周りにいた露店街の人たちが口々に話し始める。


「あれ……もしかして魔族か?」

「あの魔法の感触は、確かに魔族の物だったぞ」

「でも、宝石屋のおじいちゃんを助けていたぜ」

「いや、何か脅す材料に使おうとしているのかも……」

「でも、防御魔法を展開した理由は?意味が分からなくね?」


そして周りにいた人の中からヤジが飛ぶ。

「おい魔族!さっさとこの町から出ていけ!!」

「そうよ!気持ち悪いわ!!」


一つのヤジが出始めると、一斉に罵声が飛び始める。

……どうしてなのだろう。

おじいちゃんを助けようと必死にした二人に、出てきた言葉は罵声だった。

これが頑張った二人にすることなのか?


僕は唇を噛む。

アザレアはその様子を見て、笑ってくれた。


「マスター、あなたの気持ちだけで私は嬉しいわ……ただ、この世界の人間はこんなものよ」


アザレアは慣れているのか、涼しい顔でいる。

ただ、マツリの方は下をずっと向いていて、じっとしている。

どう思っているのかわからない。


僕がマツリに声をかけようと思った瞬間、怒号が飛んだ。


「お前ら!!!!自分の見たことを信じることもできんのか!!」


周りのヤジを含めてピタッと止まる。

怒号の方を見ると、さっきまで腕を確かめていたおじいちゃんだった。

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