表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/37

水の都「カルム」 ②


「っ!すごい……」

「わぁ!とってもきれい!!!」

「……すごいわ」


目の前にはとても幻想的な世界が広がっていた。

頭上から水がかなりの量落ちてきている。

ただ、ガラスのような透明なもので半円に区切られているから、もちろん濡れない。

そして、180度どこを見てもその水が流れて滴り落ちているのが見えた。

うーん……あえて言うなら水族館が一番近いかも。

さらに、太陽の光がその水を照らすため、光がうねって見えて……それがとてもきれいだ。


「そうだろ!この町一番隠れスポットさ。みんなにこれを見せたくてこの町に来た」

「ロイ、やるじゃん。僕は結構気に入ったよ」

「ロイさん!!ありがとうございます!!とっても感動してます」

「マツリちゃんにそう言ってくれたなら、頑張って馬車を運転してよかったよ!」


マツリはその場を動かない。

あまりに綺麗なので見とれているのだろう。

そしてアザレアも少し言いよどみながらもロイに言う。


「……まぁ、人間にしてはやる方じゃない」

「相変わらずお前は素直じゃないなぁ。人間の世界も悪くはないだろ?」

「そうね。人間というよりか、環境には罪はないからね」

「まぁ、その環境を生かせるのが人間のいい所ってことだな」


アザレアは人間を完全には認めなかった。

まぁ、魔王が人間の世界をきれいだとすぐに受け入れるわけもないか。

仕方ないことではあるが。


僕は風景に見とれていると、剣を持った青年がこちらに近づいてきた。

青年はラフな格好をして、剣以外は何も持っていないようだ。

かなりイケメンに見えるものの、顔は全く笑っていない。

というか、僕に用でもあるのか??

そして話しかけてくる。


「すみません、つかぬ事をお聞きしますが……その後ろのメイドのお二方はあなたの従者でしょうか?」

「はぁ、そうですが何か?」


僕が従者を連れるような風貌には見えなかったとか?

まぁ、確かに風格とかはないけど。


僕が声をかけられているのをロイが見ていて、眉をかなりしかめている。

アザレアも気づいたようだが、助けようとはせず、見ているだけ。

おい、見ているだけじゃなくて、助けろよ。

ただ、この青年はじっと僕の方を見て話す。


「あなたは……あの二人が魔族だとわかったうえで雇っていますか?」

「……そうだな。それが何か?」


シラを切り通せないと思ったので素直に答える。

というか、アザレアの魔法で作ったカチューシャのおかげで魔族とは気づかれないはずなのに……

僕が答えた瞬間、青年は剣を構える。


「理由次第では、僕はあなたを切らなければならない。なぜ魔族を?それもここまで高度に隠してまで」


なるほど。魔族が嫌いなタイプの人間ということか。

うーん、どうやって答えたものか。

すこし悩んでいたが、まだこちらに気づかずに周りを見ているマツリが見えて、自然と答えが漏れ出てしまった。


「……大切な仲間だからっていうのはダメなのか?」


青年は呆気にとられる。

そして剣を握りなおした。


「そうですね……申し訳ございませんが、ダメです。魔族は人間の敵ですから。では、行きます!」


青年はこちらを剣でこちらを切ってくる。

いやいや、野蛮だし危ないって!

助けてくれると思ってロイとアザレアを見たが、ロイもアザレアも動こうとしない。

おいおい……助けてくれないの?


目の前を剣が通っていく。

いや、当たったら死ぬって!!

あと、いつもみたいに剣が遅く見えない!!


「待ってくれ!!この二人は何もしないって!!」

「ダメです!魔族に例外なんて許すことはできません!!」


目の前の青年は剣をさらに振ってくる。

そして僕の脇腹に剣がぶつかった。

痛いと思う間もなく、その勢いで僕は壁まで吹き飛ばされる。

そして殴られた場所に鈍痛が走る……呼吸ができない。

青年は僕のところまで歩いてきて声をかける。


「今日はこれまでにしておきます。必ずあの二人をこの町から追い出しておいてくださいね」


青年は倒れている僕を放置してどこかに立ち去っていく。

クソっと思いながら、僕は意識をそこで失った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ