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水の都「カルム」 ①


「何日ぐらいご滞在予定でしょうか」

「うーん。1~2週間ぐらいを予定しています」

「承知いたしました。荷台の中も見ても問題ないですか?」

「えぇ。もちろん」


水の都の入国口で入国審査をしていた。

もちろん、馬車を操縦してくれていたロイが対応してくれている。


入国審査官が僕たちの荷台の方に近づいてくるのがわかる。

そして扉が開かれる。

僕、アザレア、マツリと入国審査官の目が合う。

入国審査官はニコッとして扉を閉めた。


「可愛らしいお方ですね……はい、入国問題ないです。ようこそ。水の都「カルム」へ!」


そう言うと、国の門が開く。

馬車ごと中に入っていく。


「少しドキドキしました。魔族ってばれたかもって思いました……」

「大丈夫よ。私が作った特別魔法なんだから」


僕から見る限り、マツリの顔は固まっていた。

逆にアザレアは完全にあくびするぐらい緊張感はなかったが。

それはそれですごい。

すこし馬車が走り、止まった。


「宿に付いたぞ!みんな出て来てくれ~」

「ようやくね……本当にゆったりだったわ」

「まぁまぁアザレアさん。着いたんですからいいじゃないですか」

「そうだよ。アザレア。一応はロイが馬車操縦してくれたんだから、感謝しないと」

「まぁ、今回は感謝しようかしら」


やっぱり素直じゃないなぁ。

僕とマツリは見合わせて苦笑した。


宿にチェックインして荷物を置いた。

とりあえずどこか見に行こうと思って外に出たものの、この町の名所とかご飯屋さんとか全くわからないから、どこに行けばいいかわからん。


「みんなー。こっちこっち!行くよ~」


ロイが手招きしている。

どこかに連れて行きたいようだ。

僕もアザレアもマツリも行くところがわからないので、とりあえずついていく。

すこし歩くと、そこには様々な露店が立ちならぶ場所にたどり着いた。


「ここがこの町一番の露店街。色々なものが売っているから見てみな。お金は俺が代わりに払うから、欲しい物を見つけたら行ってくれ」


なるほど。確かにお金の価値とかは全くわからない。

10円玉とかならわかるけど、そんなものがこの世界にあるわけがない。

結局財布を握っているロイにみんながついていく形になる。


色々なものが露店で売られている。

食べ物、置物、中には壺なんかも売られていた。

すると、マツリがとある露店の前で止まる。


「わぁ……とってもきれい」


マツリが見ているのは涙型のクリスタルがピンポイントになっているネックレスだった。

クリスタルの色は水色で透き通っている。

確かにとてもきれいだ。

すると、露店のおじいちゃんが声をかけてくる。


「お嬢ちゃん、一度つけてみるかい?」

「良いんですか?」


露店のおじいちゃんがネックレスを取り、マツリに渡す。

その様子を僕はマツリに素直な気持ちを伝える。


「マツリちゃん、とっても似合ってるよ!」

「マスターさん、ありがとうございます!」


マツリはニコッとして、首からかけられたネックレスを手に取り、まじまじと見る。


「このクリスタル、青が透き通っていてとっても美しいですね」

「そうじゃろう。この水の町じゃから、青を基調にしたものが多いんじゃ。中でもその商品はかなり人気だからね。あまり入荷できないんじゃ」


ホントかなぁ……と思いつつも、このおじいちゃんが嘘を言っているようにも見えない。

マツリはネックレスをおじいちゃんに返す。

その様子を見ていた、アザレアはマツリに声をかける。


「欲しいなら欲しいって言っちゃいなさい。買うのはあいつだし」

「いえ、やっぱり高いかなぁと思うので……」


その声を聞いたロイはおじいちゃんに、こそっと何かを尋ねた。

それに対してこっそりと何かを言葉を変える。

ロイは顔を少ししかめる。

思ったより高かったのかなぁ。


ただロイはその顔をスッと隠し、にこやかな顔でマツリに話しかける。

うん、バトラー合格だね。


「マツリちゃん、それ欲しいかい?」

「いえ、高いと思うので……大丈夫です」

「馬鹿ねぇ。人の好意は受け取るものよ」


マツリはやはり悩んでいるようだ。

そこに露店のおじいちゃんが声をかける。


「お嬢ちゃん。そこのメイドのお姉さんが言う通りじゃ。別にこの商品を買ってほしいからいうんじゃないけど、人の好意は受け取っておきな。それを他の方法で返せばいいだけさ。あんたなら、その笑顔だけで十分元は取れるからのぉ」


おじいちゃんはマツリの方に行きペンダントを首からかけてあげ、ニコッとして頭を右手で撫でる。

その笑顔に引きつられマツリもニコッとする。


「……わかりました。ロイさん、このペンダントお願いします!」

「あいよ。おじいちゃん、これお願いね」


ロイはお金をおじいちゃんに渡す。

おじいちゃんはお金を数える。


「まいどあり。おまけしちゃおうかな。あぁ、そこのいいこと言ったメイドのお姉さん、これを」


おじいちゃんは指輪型の物を一つ渡す。

よく見ると、ペンダントについていたのと同じようなクリスタルがついていた。

ペンダントの物と比較するとかなり小さいが。



「あんた、このお嬢ちゃんの上司みたいなものだろ?服装的に。このお嬢ちゃんの笑顔を守ってやってくれ。わしからのお願いじゃ」


アザレアは、あまりに意外だったのか固まってしまった。

よく考えると、魔王がただの人間からプレゼントをもらうなんて確かにあり得ない。

何なら、こんなものすべて買えるだけの財力も持っていただろう。

とはいえ、今は僕のメイドだからそんなことはできないが。

さて、背中を押しておこう。


「アザレア。もらっときな。人の好意は受け取るものなんだろ?」

「そう……ね。頂こうかしら。おじいちゃん、ありがと」


アザレアは指輪を受け取る。

そしてニコッとしておじいちゃんに笑顔を見せる。

おじいちゃんは照れながらも返事をする。


「よせやい。照れるじゃないか……大切にしておくれ」

「はい。もちろん」


そう言うと、指輪を身に着けた。

僕はアザレアにも素直に思った事を伝える。


「アザレア。似合ってるな」

「マスター……恥ずかしいからそれ以上言わないで。燃やすわよ」


そう言いつつ、アザレアは少し嬉しそうだった。

ロイは手を叩いてみんなの注目を集める。


「ハイハイ!次に行くよ~」


そう言うと、すたすたと露店街を抜けていく。

見失わないようにと僕含め三人は追いかける。

そして目の前に大きなトンネルが現れた。

「ここが本日のメイン。行くよ~」

という言うと、ロイがずんずんと中に入っていく。

何があるんだ?と思いつつも追いかける。


そのトンネルを抜けると……僕たちは自然と声が出ていた。


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