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町と町の移動中 ①


「人間っていうのは、まったりするのが好きよねぇ。なに、あの動物?」

「アザレアさん、私たちを引いてくれている動物は馬っていう動物らしいですよ」

「ふーん。空を飛べばもっと早いから、竜とか使えばいいのにね。」

「あのぉ……魔界でも竜を移動手段にしているのはアザレアさんだけだと思います……」


アザレアとマツリが話をしている。

前の町を出て数日経った。

ロイがぜひみんなに見せたい町があるからと、前の町で馬車を借りて移動している途中だ。

その馬車に小さな部屋のような荷台がついていて、そこに僕とアザレア、マツリが座っている。


ロイはというと、前で馬車を操縦していた。

馬車を操縦する人もお願いしようと思ったのだが、さすがに魔族と一緒にいるのをばれずに移動できなさそうだったので、誰が引くか話し合いになった。


アザレアとマツリは論外。そもそも魔族の町には馬はいないらしい。

僕も馬は見たことがあるものの、操縦したことなんてあるわけない。

で、ロイが嫌な顔をしつつも仕方なく操縦してくれることになった。

ただ、ロイがバトラーの服だから、凄く似合っていたりする。


そのロイが馬車の手綱を握りつつも、後ろも見ずにこちらに話しかけてくる。



「まぁ、メイドにはこのゆったりの旅の良さがわからないんだろうなぁ……。マツリちゃんはわかるよね?」

「マツリちゃんも、私と一緒に竜で飛んでみようか!そうすれば私の言っている事がわかると思うからさ」


マツリがロイとアザレアから問い詰められて困っている。

いや、誰でも勇者と魔王から言われたら困るわ。

どう答えても角が立ちそうだし。

軽くフォロー入れておこう。


「僕はどっちも好きだけどね。前にいた世界では馬もいたけど、空を高速で飛ぶものもいたから。マツリちゃんもそう思わない?」

「そうですね。今のこのゆったりした感じも私は好きです。ただ、アザレアさんの言う竜にも乗ってみたいなぁ」


マツリの返事を聞いたロイとアザレアはどちらもニコニコしている。

二人とも、なぜかマツリにはデレデレなんだよなぁ。


マツリは前回の話からメイド見習いとしてアザレアとかなり似た服を着ている。

まぁ、アザレアとは異なり丈をしっかりして足はそこまで出してない。

そしてちゃんとカチューシャで角が見えないように調整していた。

とても清楚なメイドに見える。

うん、これはモテる。間違いなく。


っと、確認しないといけないことがあった。

僕はロイに話しかける。


「ロイ、次行く町はなんでおすすめなんだ?」

「フフフ、それは着いてからのお楽しみということで」


ロイが焦らす。

それを聞いたアザレアはため息交じりに話す。


「どうせしょうもない町でしょ。人間の町なんだから」

「まぁ、確かにそこのメイドには次の町の良さがわからないかもしれないね~。マツリちゃんは別だけど。絶対楽しめると思うよ!」

「私は楽しみにしてます!人間の町そこまで知らないので、何でも楽しめれそうです!」


マツリの元気な姿を見て、アザレアは反論する気が失せたようだ。

マツリが二人のいい感じに緩衝材になっている気がする。

前までは売り言葉に買い言葉で毎回喧嘩していたし。


アザレアの方を見ると、何か探し物をしている。

あっ、見つけたっぽい。


「そうそう……みんなに渡すものがあったわ」


そう言うと、アザレアはカチューシャと蝶ネクタイを取り出す。

カチューシャをマツリに、蝶ネクタイをロイに渡す。


「あれ?僕はもらってないけど」

「マスターにはいらない物よ」


しれっといわれる。

すこし寂しい。


「渡したカチューシャと蝶ネクタイにはかなり強めの魔法をかけておいたわ、カチューシャの方は魔族の証である角が見えなくなるのと、魔族の魔力をほとんど消す魔法」


アザレアってやっぱりこういうところがすごいと思う。

前の町もそうだったが、まだ人間の町には魔族は浸透していないから、普通に問題が起こりそうだし。

ただ、少し気になったところは聞いておこう。


「少し聞きたいのだが、人間の魔力と魔族の魔力ってそんな違うものなのか?」

「そうね。一般人だとわからないわ。ただ、できる奴になると魔力の痕跡だけで魔族か人間かはすぐにわかる。魔族の魔力にはピリッとしたものが入っているから」

「ふーん。そういうものなんだね。マツリちゃんはわかるの?」

「いいえ、私は全くわかりません」


一般人と出来る奴の区別はわからないが、そんなものなんだろう。

マツリはアザレアから受け取ったカチューシャを付けている。

……とっても可愛い。


そうそう、もう一つ聞かないと。


「なら、蝶ネクタイは魔法なんてかけなくていいんじゃないか?ロイは人間だし」

「確かに、魔族の痕跡を消す魔法はいらないけど、ロイを勇者だと思わせない認知障害魔法が必要と思ったのよ」

「メイドにしてはやるじゃないか。ありがたく付けさせてもらおう」


珍しくロイはアザレアの言うことを聞いて、蝶ネクタイを付け替える。

別にロイは勇者のままで良くないか?


「どうして、勇者だと思われると問題なのさ。物事進めやすくないか?」

「確かに、勇者の顔をつかえば色々やれることは増える。ただ、勇者であるが故に変な扱いをされるし、色々な所で目を付けられるし。こう見えても嫌われることも多いんだよ……最悪、マスターやマツリちゃんに迷惑がかかるかもしれない。だから、勇者という殻は抜いて、バトラーの方が動きやすい」


ロイが真剣な声で教えてくれる。

これまで色々苦労してきたのかもしれない。

魔王をしていたアザレアだからこそ、ロイの苦しみを理解して作ってくれたのかもしれない。

ロイの発言をアザレアがどういう風に聞いているかは顔が見れなかったので、わからなかったが。


「あと、これを着けてる間について注意があるのだけど……」

アザレアはマツリとロイに注意点を話している。

まぁ、僕には関係ないから話を聞かずに外の景色でも見ておこう。



そして少し経ったのち……


「あっ!!町が見えたぞ!!!」


ロイが少し興奮した声で話しかけてくる。

僕とマツリは身を乗り出してその町を見た。


「「わぁ~~!!!」」



その町は中央から水が噴き出していて、その水がいたるところで川となって流れているような、水の都「カルム」だった。

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