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目覚めると ②

僕が起きた後、打たれた後の話を三人から教えて貰った。



すぐさまロイがドーズを抑え、マツリが僕を助けてくれた。

ロイは僕が打たれたショックで、ドーズを殺しかけたようだ。

まぁ、短絡的なロイなら仕方ないと思う。

ただ、アザレアがそれをギリギリで引き留めてくれたから、どうにかなったらしい。


結局、今回の戦争では死者は誰もいなかった。

これもロイとアザレアが準備したうえで、うまい感じにやってくれたからだろう。

実はこのことについては二人に作戦を伝える時に、僕がお願いしたことだった。


兵士や傭兵たちにも家族がいるだろうし、権力に歯向かえないだけで今回の戦場に来ているかもしれないから。

さすがにアザレアにはそこまで考えなくても……と呆れられた。

でも、ちゃんと約束は守ってくれる。そこは感謝しないと。


ディランとドーズは二人とも捕まえて、中央国家まで身柄を引き渡したようだ。

まぁ、それが一番よい結果なのかもしれない。

この町に居ては何をするかわからないし。

面倒事をまた起こしそうな気もするし。


魔族の奴隷は全員解放したようだ。

もちろん、魔族を嫌っている人間は怒ったようだが、

それ以上に、魔族の扱いがあまりにも酷かったから、ほとんどの人が歓迎したらしい。

それどころか、見て見ぬふりをし続けていたことを謝る人も多かったとか。

開放された魔族で、魔界に帰りたい奴はアザレアが魔界まで送ったようだ。

ただ、この町が好きな魔族もいて、そいつらはここに残るって。


で、僕たちはこの町を開放してくれた旅団として、数日間祭りを開いて歓迎してくれた。

まぁ、元々はあの大男をぶん殴ってやる、という思いから始まったことだったけど、結局ここまでやってしまった……いや、面倒事だったなぁ。


そして、祭りが終わり、出発を翌日に控えた深夜、ロイ、アザレア、マツリの三人と今後について話す時間を設けた。


「さて、みんな。今後どうするかを相談させてくれ」


僕はみんなを見ながら話しかける。

面倒だけどちゃんと話して、決めておかないと大変なことになりかねない。


「今まで詳しくは話してなかったけど……僕はこの世界の人間じゃない。とある箱を開いたらこの世界に飛ばされてきた」


三人とも頭にハテナマークとか、何を言ってるんだっていう視線が飛んでくる。

あまりにもぶっ飛んだ話だから、そりゃそうか。

相手しても仕方がないから、気にせず話を進める。


「でだ。僕はせっかく来たから、この世界を色々旅して見回ろうと思っている。旅に理由はこれと言ってない。ただ、人間の町も、魔族の町も見てみたいだけ……だけど、マツリちゃんのように困っている人は助けたいと思っている。で、君たちはどうする?」


その問いに対してロイが声をかけてくれた。


「俺は……今回の一件で何のために勇者になったのか見つめなおそうと思っている。そもそも、どうして魔族と戦っていたのかも曖昧なことに気づかされた。生まれてこれまでずっと魔族が敵だと思い込んでいた気がする。だから、ヴァルについていくつもりさ。まぁ、結局魔族がクソだったら、ここにいるクソ魔王をボコればいいだけだし。いつでもできるからね」


ロイは僕の方を見てニコッとする。

その次にアザレアが口を開いた。


「すっごく悔しい話だけど、このクソ勇者と同じ意見だわ。この町の人たちが魔族を受け入れるのを見て、どうして人間達とずっと争っていたのだろうと思うようになったわ。それまで人間は滅ぼすもの、という考えしかなかったし。私もヴァルについていって、なんでそう思ってたのかを確かめたいの。もちろん、人間が終わってたらこのクソ勇者ともども葬るけど」


ロイをギロッとにらみつつも、僕の方にはニコッとしてくれる。

最後にマツリが話してくれる。


「私は……単純にヴァルさん、ロイさん、アザレアさん、みんなと旅がしたいです。色々なところを一緒に見てみたい……なので、一緒に連れてってくれませんか?」


僕は立ち上がる。


「はぁ。てっきり僕は、一人でのほほん旅をすると思っていたのに……面倒だなぁ……」


そう言いつつも、少し顔がほころんでしまう。


「まぁ、勝手についてきてもいいけど、ロイはバトラー、アザレアはメイド、マツリちゃんは……メイド見習いかな?それでよろしく!!」

「仕方ないなぁ、バトラー、引き受けてやるよ。護衛は任せとけ!!」

「本当、私たちが居なかったら何もできないくせに。身の回りのお世話やってあげるわ!」

「私も、メイド見習いとして頑張ります!!」



銃弾に打たれた間際に見た夢の光景が目の前に広がる。

僕の旅はようやく今から始まる。

本当に面倒だけど……本当に楽しみの旅が。


「じゃあ、行くか!!!」

「「「おー!!」」」


僕が大きな声で叫んで、他三人も大声をあげてくれた。

……ちなみに、この後に夜中にうるさい!という苦情が入ったのは言うまでもない。

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