かくれんぼ
小学校のころ、近所の神社でかくれんぼをするのが日課になっていました。
その神社は敷地内に小さな公園があるんですが、その日も公園の遊具で少し遊んだ後、かくれんぼをすることになりました。
いつものようにじゃんけんで鬼を決めて、残った者は鬼が100数える間に隠れました。
私は自分だけが知っている秘密の隠れ場所、本殿の裏側にある杉の大木の隣にある小さな小屋に行きました。
そこはそれまで一度も見つかったことがない、私だけが知っている場所でした。
小屋と言っても本当に小さなもので、子供の私が入って少しだけ余裕があるくらいの広さしかありません。おそらく境内を掃除する道具入れとして使っていたんじゃないかと思います。
小屋の中でしゃがんでじっとしていると、外から友達の声が聞こえたり、時折、砂利を踏む足音が近づいてきたりしますが、見つかることはありません。
今回も私だけ残るかな……
そんなことを考えながら息を潜めてじっとしていると、ふと小屋の扉が少し開いていることに気付きました。
閉めわすれちゃったかも、と思いましたが、下手に動くとバレてしまうかもしれないので、放っておくことにしました。
それから何分経ったかわかりませんが、隙間から入ってくる日の光を見つめながら、膝を抱えてじっとしていると、隙間から影が差し込んできました。
私は咄嗟に顔を上げました。
白くて長い手が伸びていました。
怖いとかそういう感情はなかったように思います。
ただ、明らかに子供のものではないその手がとにかく不思議で、しばらく眺めていました。
手は私の目の前までスッと伸びてきて、真っ白い手のひらが顔を覆うように迫ってきました。
私は反射的に思わず目を瞑りました。
「Aちゃん、見つけた!」
目を開けると、友達が数人扉を開けて立っていました。
白い手のことは聞きませんでした。
それからなんとなくかくれんぼをする気が無くなり、別の遊びをするようになりました。
やがて小学校を卒業、中学生になりその神社に近づくこともなくなりました。
未だに何だったのか、よく分からない体験です。
友人や知人が体験した実話を、極々短い小説にしています。