ときめく春と俺様ヒーロー
春に色とりどりの花が咲くように、人の心もいろんな気持ちに移り変わっていく。
喜びも、悲しみも、恋も。
様々な心の色を知った時、私はどんな花を咲かせるんだろう。
麗らかな春の陽射しのもと、私、桜井舞桜は走っていた。
今日は記念すべき高校の入学式。憧れの高校生活一日目の登校日だ。
なのに。
「寝過ぎたー! 遅刻遅刻っ!」
緊張のしすぎで前日寝こじれた私はお決まりの朝寝坊をかましてしまった。
ベタすぎる展開。まさか自分が実行するとは。
走る先には曲がり角。
ベタな展開が続くとすれば、ここでイケメンとぶつかる展開が……
「って少女漫画の読みすぎ」
あはは、なんて一人で笑いながら曲がり角を曲がった瞬間だった。
「っきゃあ!?」
「うおッ!?」
ドーン! と向こう側から走ってきた人にぶつかってしまった。
「いたたた……」
私が尻もちをついていると、
「危ねーだろ! 曲がり角なんだから慎重に歩けよ!」
同じくぶつかって尻もちをつく相手が怒鳴ってきた。
む。たしかに不注意だった私も私だけど、そっちだって走ってたし、非もあるんじゃない?
言い返してやろうとぶつかった相手の方を見ると息を呑んだ。
切れ長の瞳にすっと通った鼻筋。
サラサラの艶のある黒髪は漆黒に染まり輝いている。
それは、見る者を魅了するような美のオーラを醸し出していた。
ぶつかった相手は超イケメンだった件について。
いや、違う。そこじゃない。
注目したのはイケメンの服装。
「同じ高校の制服……?」
イケメンは私と同じ高校の制服を着ていた。
左胸には、高校のエンブレムがついている。
「ん? お前も天ヶ原学園の生徒か?」
「う、うん。今日から入学する一年生」
「ふーん。まぁ興味ないけど……って、こんなことしてる場合じゃねぇ」
イケメンは腕時計を見ると、そそくさと立ちあがり、走り出す。
「お前もモタモタしてると遅刻するぞ。シリモチ女!」
「シリモチ女!?」
あんただってシリモチ男じゃん!
叫んでやりたかったけど、時既に遅し。
シリモチ男は遥か彼方へ走り去ってしまった。
「はや……」
呆然とする私。
しかし、なにあの態度!
謝るどころかディスられたし。
「朝っぱらからテンションがローすぎる……」
腕時計を見ると長針はかなり進んでいる。
私は学校へ急いだ。
***
「はぁはぁ……着いた~!」
あれから猛ダッシュして何とか学校に到着した。
玄関に貼り出されているクラス表を見て自分のクラスを確認する。
「えーと、桜井舞桜は……A組か」
入学式は体育館で行われるので急いで向かう。
体育館内に入るとほとんどの新入生が緊張した面持ちで座席に座っている。
「A組、A組はっと……」
通りまーす、すいません、すいませんと座席に座る生徒に足を引っ込めてもらい、自分の座席へ辿り着く。
なんとか式の時間に間に合った。
(とはいえ、初日からギリギリセーフとは余裕がないなぁ)
スタートラインからこけた気がしていまいち釈然としない。
(ダメだ、これじゃ)
私はここ、天ヶ原学園に優雅で華麗な学園ライフを送るために入学したんだから。
これではあの時……中学時代と変わらなくなってしまう。
(私はここで、変わるんだ!)
深呼吸をして気分を落ち着かせる。
すると、入学式の開始を合図するアナウンスが流れた。
『只今から第八十五回天ヶ原学園高等部の入学式を始めます』
始まった。
いよいよ私の新しい三年間が始まるんだ。
きっと不安なこともあるだろう。
でも、試練を乗り越えるたび、自分は強くなれる。輝ける。
(がんばろう)
心の中で決意していると、
『新入生代表及び生徒会長の言葉』
アナウンスが流れた。
どうやら私がいろいろ考えている間に式はかなり進行していたらしい。
それより気になったことがあった。
(え? 新入生なのにもう生徒会長ってこと?)
新入生代表ということは入学試験で首席ってことだし、しかもいきなり生徒会長って……
「どんだけ凄い人なのよ」
思わず声に出た。
誰もがステージに注目するなか、その人物が姿を現した。
「え!?」
思わず叫んだ。
切れ長の瞳と漆黒のサラサラヘアー。
見る者を虜にする華やかな美貌。
なんと、その人物は今朝ぶつかったイケメン兼シリモチ男だった。
声をあげた私に気がつくと、シリモチ男は「げ、」と渋い表情を一瞬浮かべたが、次の瞬間にはにっこり、と営業スマイル全開。
マイクを持つと凛とした声を館内に響かせる。
『僕たち一年生は入学したばかりで戸惑うこともたくさんあると思います。しかし、前に進む意欲を持ち、先生、先輩方の教えを乞いながら、充実した学園生活を送れるよう励んでいきます。また、生徒会長としてより良い学園生活を目指せるように、皆さんのサポートを全力で取り組んでいきたいです』
新入生代表及び生徒会長、陽波新。
一礼してステージを降りていく。
陽波は私と目があうと、誰からも気づかれないように舌をべーっと出した。
それから何事もなく自分の席に戻っていく。
(むっかー! 何なの!? 私がなにをしたっていうの!!)
私が激おこしてる中で、パチパチパチ……!! とそこかしこから拍手が湧く。
こうして入学式は無事(?)幕を閉じた。
だけど、この学園生活、一筋縄ではいかない気がする。
***
A組のクラスに入ると、クラスはざわざわと騒いでいた。
特に女子の歓声が目立つ。
「ねぇ、今年のA組ヤバくない!?」
「ヤバいヤバい! だって陽波くんがいるんだよ!!」
キャーっ!
女子たちは黄色い悲鳴をあげる。
「陽波新って人気なんだ……」
何気なく口に出してしまった私に、喋っていた女子たちが興奮気味に説明してくれる。
「知らないの!? 中等部で絶大な人気を誇った国宝級イケメン!」
「その名も陽波新!!」
天ヶ原学園はよくいうエスカレーター式の学校で、小・中・高等部とそのまま進学する生徒がほとんどだ。
私みたいな高等部から編入してくる生徒は滅多にいない。
だから当然陽波新のことも知らなかった。
「ほら、あそこにいる!」
示された方には男子女子問わず大勢に囲まれ楽しそうに話している陽波の姿。
「陽波くんはみんなのリーダーって感じでね、誰にでも平等で困ってる人を見つけるとサッと助けてくれる、ヒーローみたいな人なんだ!」
「しかもイケメンだし!」
ねーっ! とはしゃぐ女子二人。
男女問わず、特に女の子からの支持は抜群みたい。
「あんな意地悪な奴なのに。解せぬ」
「はーい席に着いて。え、席順が決まってない? じゃあ適当に座っていいよ」
しばらくすると担任が入ってきて初っ端から恐ろしい適当な発言をした。
そんなことを言うから陽波の周りには人垣が出来た。
慣れているのか、陽波はしれっと先生に言った。
「先生、ここは平等にクジで」
陽波の案でクジは厳正に行われた。
行われたのだが……
「うげ、お前かよ」
厳正に行われた結果が陽波新の隣だった。
「それはこっちのセリフよ……」
クジの神様はどういう神経をしているのだろう。
私が何をしたっていうの!? 二回目の叫び。
「せっかく可愛い女子と隣になれると思ったのに……よりによってシリモチ女かよ」
「そのシリモチ女ってのやめてくれない? 私には桜井舞桜って名前があるの」
「上から読んでも下から読んでも桜とかウケる」
「……」
右隣にある上履きを思いきり踏んづけた。
「いってーッ!! なにすんだよ!」
「~♪」
「無視!? お前表出ろ!」
「今時ヤンキー? 俺様キャラといい、あんた時代錯誤も甚だしいわよ?」
互いに足を踏みあう私と陽波を見て先生がおずおずと注意する。
「あー、そこ、いいか?」
『すみません。隣がバカなもんで』
ユニゾンした。うれしくない。
ホームルームが始まる。
「みんな、高校に入学したばかりで戸惑うこともあるだろうが、前に進むという意欲を忘れずに、困ったら先生や先輩たちに頼ってくれ」
ちょっと陽波の言葉を拝借しました、舌をペロッと出す担任。この先生、お茶目である。
それにしても陽波は先生からも気に入られているなぁ。なんか悔しい。
クラスの雰囲気が和んできたところで学級委員を決める時間になった。
「学級委員をやりたい生徒はいるか。 推薦でもかまわないぞ」
「はいはーい!」
一人の男子生徒が元気よく挙手する。
「陽波がいいと思います」
「いいねー」「賛成」と、所々で肯定的な声が聞こえる。
陽波はおいおい、と眉を寄せる。
「お前ら俺に押し付けて自分たちが楽しようとしてるだろ」
「バレた?」「ったり前じゃーん」「よッ。生徒会長」
教室内が笑いに包まれる。
陽波は観念したように両手を挙げた。
「しょーがねぇ。よし、やってやる」
陽波の学級委員決定に歓声が湧いた。
(男子は即決かぁ。それにしても)
今の一連でわかった。
陽波新は人気者だ。
みんなの中心にいて、それを引っ張っていく。カリスマを感じた。
天性のリーダー気質。
さすが天ヶ原学園の国宝級イケメンと言われるだけある。
「うんうん」一人納得していると、陽波が手を挙げた。
「あの、俺からも推薦いいスか」
「どうした陽波。めぼしい相手がいるのか?」
担任が興味ありげに聞き返す。
「はい」
陽波は人差し指を突き立てると、それをゆっくり左へ倒していき……
「え、私?」
指がさされた方向には私がいた。
「桜井さんてしっかりしてそうだし、頼りになると思って」
「だそうだ桜井。やってくれるか」
「え、いや、でも……」
私が言いよどんでいると、陽波は首を傾げて切なそうな眼差しで見つめてくる。
「……ダメ?」
髪と同じく漆黒の瞳がうるうると湿り気を帯びている。
「う、あ……いいです」
頷いてしまった。
「ほんと? やった!」
陽波は嬉しそうに前歯を覗かせる。
私ってチョロい?
いやいや、これも無駄に美少年面な陽波が悪い!
イケメンなんて散々だ。
***
はぁ。
今日は散々な一日だった。
帰り道、私は一人とぼとぼと歩いていた。今朝の勢いが嘘のようだ。
夕日が住宅街をセピア色に染めている。
それに伴い自分の心もセンチメンタルになっていく。
うぅ、入学早々学校に行きたくない。
明日もあの意地悪な陽波と顔をあわせなければいけない。しかも席は隣だし。
「鬱だ……」
ため息を吐いているうちに我が家の一部が見えてきた。
残りの部分は最近建てられた隣の住宅に隠されてしまっている。
「でっかいお家だなぁ」
自分の家を覆い隠さんばかりに主張する大きい一軒家。
一体どんな富豪が住んでいるんだろう。
「ま、いいや。ただいまー」
私は愛しのマイホームへ入っていった。
夕食を食べ、自室で雑誌を読んでいると、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「舞桜、ちょっと出てくれる?」
「うん」
母から頼まれ玄関のドアを開けると、来訪者はぺこり、と頭を下げた。
「夜遅くすみません。この度隣に越してきた者ですが、挨拶に参りました」
「それはご丁寧に」
「これ、つまらない物ですがどうぞ」
「まぁ、ありがとうございます……あ」
「え」
桐箱を差し出す来訪者が顔を上げる。
その顔には見覚えがあった。
「陽波、新……?」
「え、ここお前の家?」
私はくるっと陽波を半回転させると、扉を閉めた。からの鍵もロック。
「ちょ、お前どういうつもりだコラァ!」
ドンドンドン! 扉を叩く音が聞こえる。
「知らない、私はなにも知らない」
忘却の呪文を唱える私。
胸には桐箱。開けると豪華なフルーツ盛り合わせだった。
ちゃっかりフルーツは貰ってしまった。この子たちに罪はないので美味しくいただこう。
「今日はどうなってるの……」
いろいろなことが起こりすぎて、脳内は完全にキャパオーバーだ。
「もういい。寝よ」
私は何も見なかったことにして自室へ戻った。
***
『あ』
朝、玄関を出ると陽波新と鉢合わせした。
「……」
「おい、無視すんなよ」
「フルーツ大変美味しゅうございました。メロンなんて春にあるのね」
「おう。今は促成栽培ってのもあるから……ってそうじゃねぇ!」
「……なに?」
「まだ怒ってるのか。勝手に学級委員にしたこと」
もっといえばその前のこともあるけどね。シリモチ女とか。
ただ、私がムカついたのはそこじゃない。
「じゃあなんで怒ってるの」
首を傾げる陽波。
これだ。
このキラキラと効果音がつきそうな顔面偏差値の高さに私がドキドキしてしまったのが許せないの!
人を見た目で判断しちゃいけないのに。
「この人の言うことなら聞いてもいいかな」って思ってしまった自分にムカついてるの!
「ははーん、わかった。俺がカッコいいからときめいてしまったんだな」
「!?」
「自分でも思うんだ。こんな男前でいいのかなって。天は二物を与えすぎじゃないかって。でもいいんだ! 俺だから」
「自分で言っちゃうのそれ……」
自信満々で言う彼を呆れた目で見てしまう。
この調子で幻滅してけば惑わされずに済むかも。
そう思った矢先、
「だから桜井も俺にときめいてもいいんだぜ?」
クイ、と私の顎を細い指で軽く持ち上げる。
何が起きている。
こんな少女漫画みたいな展開ある?
駄目だって。私こういう耐性ないから。
陽波の顔が目の前にある。
言ってることが残念なおかげでときめかないけど。
それでも、整った顔が近くにあると心拍数は上がるのが悔しい。
……あ。睫毛長いな。
陽波の瞳に自分が映りこんでいる。
今にも吸い込まれそうで、このままだと……
「遅刻するわ!」
「いてっ」
陽波のおでこに頭突きすると、私は学校に向かって走っていった。
絶対にときめいたりなんてしないんだから。
***
遅刻もすることもなく、朝のホームルームが終わると陽波が普通に話しかけてきた。
「おいこれクラスのプリント全員分集めておけ」
「なんで普通に話せるのよ……」
今朝あんなことがあったのに。
ああ、陽波にとっては大したことではないってことか。
「イケメンハヨユウガアッテイイデスネ」
「何言ってんだお前。それよかプリントよろしくな」
「陽波も学級委員なんだから集めてよ」
「俺は忙しいの。だからパス」
「はぁ!? そんなことが許されるとでも思ってるの?」
陽波はニヤリと微笑む。
「なんで俺が桜井を推薦したかわかる?」
顔をグイっと近づける。
吸い込みそうな漆黒の瞳が、私を逃がさまいと見つめる。
「お前は俺に逆らえないと思ったからだよ」
カーッと顔に朱がさすのがわかる。
なにやってるの私。静まれ心臓。
「桜井は俺のために何でもなってくれる小間使いでいればいいの」
「なによそれ……」
ぱっと離れると、陽波はスタスタと何処かへ歩いていってしまった。
力が抜けてへなへなと座り込む。
ドクドクと、心臓がうるさい。
午前の授業が終わり、昼休み。
私は愕然としていた。
「グループができている」
クラスは既にグループが結成され、仲良く昼食を食べる構図が出来上がっていた。
考えてみれば当然だ。
ここ高等部にいる生徒はほとんどが中等部からの持ち上がりなんだから。
仲良しグループが完成されていたっておかしくない。
高等部から編入してきた私は一人ポツンとその場に立ち尽くす。
「まさかの、ぼっち飯……!」
想像の中では学園の中庭で友達数名と、
『あら、桜井さんのお弁当素敵!』
『今日はサンドウィッチにしてみましたの』
『どれも美味しそうですわ。私のものと交換してもよろしくて?』
『もちろん。皆で交換っこ致しましょう!』
オホホホ……
なんて優雅な昼食をいただく予定だったのに。
しょんぼり、と落ち込む。
しかしそんな自分の頬を叩く。
「いけない。ここで立ち止まってる場合じゃない」
そう。私は新たなスタートを切るために天ヶ原学園へ来たんだ。
「変わるのよ、ここで。私は新しい自分になる!」
「あれ、小間使いちゃん。もしかしてぼっち飯?」
意気込む私の後ろから悪魔登場。
「あららー、かわいそー。せめてトイレで食べるのはやめとけよ」
「じゃ、」と去ろうとする陽波の制服の袖をつん、と引っ張る。
勇気を出して言ってみた。
「お昼、いっしょに食べない?」
「は?」
成り行きで陽波と昼食を食べることになり、屋上へやって来た。
屋上は偶然にも誰もいなかった。
よかったと安心してしまう。
だって、一緒にお昼食べてるところ目撃されて変な噂とかされたくないもん。
なんて自分から誘っておいて矛盾したことを考えてしまう。
なんだかんだで陽波も誘いを断らなかったし、案外優しいところもあるのかも。
「いただきます」
「……いただきます」
陽波が手を合わせて号令をかけたので私もそれにならう。
お弁当箱を広げる。
卵焼きにミニハンバーグ、ポテトサラダにチキンライスと彩り豊かな面子が勢揃い。
「お弁当は可愛いな。本人と違って」
「どういう意味よ」
「褒めてるんだよ。美味そうな弁当だなって」
「……友達と食べるつもりではりきったから」
「なに。自分の手作りなの?」
無言で頷く。
「本当は交換っことか、そういうの楽しみにしてたのに。私には無理だったから」
「ふーん……」
陽波はそれだけ言うと、ひょいと私のお弁当箱から卵焼きをつまみとる。
「あっ!」
「むぐむぐ。しょっぱい派か。俺は甘めが好きだ」
「な、なにして……」
「なにって味見だよ、味見」
「な、なんで」
「うーん、なんとなく?」
わけわからん……
陽波は自分のお弁当も平らげると「ごちそうさま!」と言って屋上から去っていった。
本当にお昼だけ食べて退散したな。
別に昼休みも一緒にいようとしたわけじゃないけれど。
会話もろくになかったし、友達と食べるような和気あいあいとした昼食じゃなかった。
それでも、陽波と食べたお弁当はとても美味しく感じて、ちょっと幸せな気持ちになった。
驚いた話だが、それから陽波は私と昼食を食べるようになる。
一体何故彼は私とお昼を過ごしてくれるのか。
それは彼のみぞ知る話。
***
幸せな時間はそう長く続かなかった。
入学して早一ヶ月。
定番化した陽波との昼食。
私たち二人は今日も昼食を食べるべく屋上に来ていた。
しかし、今日は食べることより先に言うことがある。
「入学者実力テストなんて聞いてないよ!!」
私が悲鳴をあげると陽波はうるさそうに耳を塞いだ。
「うちの名物行事、通称“ふるい落とし試験”。入学者が本当に天ヶ原学園の生徒に相応しい学力を持っているか調査するためのテスト。低得点をとった者はその名の通り“ふるい落とされる”。つまり」
「退学だ」陽波が無駄に低いイケボで私の耳もとで囁く。
「ひぃぃ」
「ひっひっひ」
意地悪そうに笑う陽波。
心なしか楽しそうなのは気のせい?
「せっかく必死に勉強したのに! あんまりだよ!」
「まあ落ち着け。用は赤点をとらなければいいんだ。普通に勉強してれば落ちたりしないさ」
柄にもなく励ましてくれる。
その気まぐれな優しさも、今はきゅんポイントには加算されない。
「これを見てそう言える……?」
「ん……なんだよこれ!」
私が見せたのはここ最近の自分のテスト用紙。
見せた答案は大量のバツで埋め尽くされていた。
「桜井、これは」
「授業についていけないの! 入試の時は受験へのモチベーションで付け焼き刃でなんとかなったけど、安心して気を抜いてたら授業がどんどん進んじゃって!」
「ついていけないってレベルじゃねぇぞ。常識問題で間違えてるし」
「ここに入学できたのも奇跡だと思ってます」
「……ちなみに入試での順位は?」
「……四百一位です」
「ブービー賞じゃねーか!」
すげーっ。噴き出す生徒会長様。
順位が順位なので言い返すこともできない。
「これはよっぽど頑張らないと退学回避できないかもな」
「え、そんなにヤバいの私」
思ったより深刻な事態になっていることに気づき、サァーっと顔が青ざめる。
「どうしよう」
「……少しの間いい思い出ができて良かったじゃん」
「ふざけるな! 絶対退学なんてしないわ! 生き残ってみせるんだから!!」
「おー」
パチパチとやる気のない拍手を贈る陽波。
「ってことで」
「な、なんだよ」
今度は私からずい、と顔を寄せる。
「勉強教えて! 陽波」
***
テスト二週間前の日曜日。
私は陽波の家で勉強会することになった。
「……これでおかしくないかな」
私服に身を包み、鏡の前でいくつかポージングをする。
いや、別にデートじゃないし。ただの勉強会なんだけどね。
相手が相手っていうか、国宝級イケメンの人気者だし。
身だしなみくらいはした方がいいかなって。
言い訳がましいことをブツブツ言いながら自宅を出た。
隣の陽波宅前に到着し、インターホンを鳴らそうとする。
「はぁ、緊張する……」
勉強会とはいえ、男の子の家に行くのは初めてだ。
なかなかインターホンを押せないでいると、
「人の家の前でいつまでそうしてんだ」
いつ出てきたのか、陽波が呆れた表情でこちらを見ていた。
「お邪魔します」
いざ、陽波邸へ。
家に入ると出迎えたのはだだっ広い玄関。
広い。玄関だけで私の部屋くらいありそう。
陽波の自室は二階の一番奥だということで、階段まで長い廊下を突き進む。
途中、左右の扉から他の部屋がちらちら見えた。
どの部屋も広く、高級そうな家具が置かれている。
「イケメンで金持ちとか嫌味か」
「すみませんね。恵まれちゃってて」
「そういえば、お家の人はどこにいるの? お礼もかねて持ってきたんだけど」
腕の中には母から渡された箱菓子。
「そういうのいいのに」
陽波が「どうも」と受けとる。
「両親は海外旅行中。うちの親クリエイティブ系の仕事しててさ。インスピレーション働かせるために弾丸のように世界を飛び回ってる」
「へえ。やっぱ創作する人って変わった人が多いのね。陽波は大変じゃない?」
「なんで俺の心配するんだよ」
「だって、ご飯も掃除も全部陽波がやるんでしょ? 私だったらしんどいもん」
「……そんなこと言われたことなかった」
「まぁ、入試一位に生徒会長だと何でも出来ちゃいそうな感じするものね。でも、なかなか出来ることじゃないよ」
私が言うと、陽波はよそを向いてしまった。
後ろから覗く耳が少し赤い。
「もしかして照れてる?」
「……別に」
学校とは違う彼の態度に思わず頬が緩む。
いつもと逆に私の方が優位に立ててるのが嬉しくて、しばらく陽波を褒め倒した。
陽波の自室へ着き、部屋の真ん中にテーブルを運ぶ。
テーブルは丸い。こういう形だと自分のテリトリーの取り方が難しい。
私と陽波は対面するように座る。
「ここから私のゾーンだから」
「小学生みたいなこと言ってんな」
仕切るように定規を置いたら陽波に笑われた。
「そんなことしたらお前に近づけねーだろ?」
陽波がぐいっと私の身体を引き寄せ、自分の額を私のおでこにくっつけた。
コツン、と軽い衝撃。
「!?」
え、なにこれ。
なにこの状況。
陽波の顔がすごく近い。
っていうか、私のおでこと陽波のおでこがくっついてる?
なにこれなにこれ、と頭がパニックになる。
「お前熱くね? 熱でもあるんじゃないか」
至近距離で見つめてくる瞳に顔の熱が更に集中してくる。
「ぜぜぜ、全然平気だってば!!」
最終的に呂律が回らない状態で陽波を突き飛ばすようにして離れた。
よろけた陽波はけろっとした顔で「そんだけ元気なら大丈夫だな」と教科書を開き始めた。
「勉強前から知恵熱出してたら笑ってやろうと思ったのに」
「だから、熱なんかないって」
私は赤くなった顔を両手で包み込むように隠す。
「それより何の教科から始める?」
切り替えが早い。
「とりあえず、苦手な英語からお願いします」
「了解」
私と陽波はまず最初に英語の勉強を始めた。
陽波は教えるのが上手だった。
私が馬鹿な回答をすると苛立った表情をしつつも、丁寧に間違えたところを指摘してくれる。
解説も下手な教師よりもわかりやすく、あっという間に問題が解けるようになった。
英語のテスト範囲が全て終わり、私たちは休憩することにした。
「せっかくだし、桜井から貰った茶菓子でも出すかね」
「あ、私も手伝う」
部屋を出る彼を慌てて追った。
キッチンは一階にあり、やはりここもとても広い。
「桜井、スプーンとって」
「あ、うん」
汚れ一つない引き出しからスプーンを二つ取り出して渡す。
「……」
「……」
カチャカチャ……と紅茶を入れる音だけがキッチンに響く。
私たちが喋らないと、他の音が余計大きく聞こえた。
(そりゃそうか、私たち以外誰もいないんだから)
二人きりなんだから。
(あれ? 二人きりって……)
男の子と二人きり。
そのことを実感すると、何故か妙な焦りを感じた。
「桜井さぁ」
「は、はいっ」
急に陽波に声をかけられたので声がひきつってしまう。
「ちょっと危機感ないんじゃない?」
濡れ羽色の瞳が私を見つめた。
「俺、一応男だよ?」
そう言って壁際へ私を追い詰める。
「今ここでお前を食っちまうことだってできるわけだけど」
私のすぐ顔の横に陽波の伸ばした右腕がドン、とつく。
正面を見れば陽波の顔が目の前にある。
吸い込むような瞳、整った鼻梁、サラサラの髪からは甘い香りがして、眩暈を起こしそうになる。
その唇への距離、わずか十センチ。
心臓がバクバクと音をたてる。
聞こえてないかな。
聞こえてたら恥ずかしいな。
あ、でも今からもっと恥ずかしいことするのか……ちょっと待って、まだ心の準備が!
回らない頭で必死に考えていると、
「ぶはっ」
陽波が笑いだした。
「なーんてな」
「へ……?」
「さすがの俺でも、いきなり女子を襲ったりしません」
ぱっと壁から手を離し、壁に寄りかかる私を解放する。
なんだ、冗談か……
本当はぶん殴りたいところだけど、今は安堵の気持ちが押し寄せてきて、とてもそこまでする余裕はない。
でも、なんでだろう。
なんかモヤモヤする。
そんな私を見て陽波が口の端をつり上げる。
「ひょっとして、いやらしいこと想像した?」
再び私に近づいて耳もとで囁いた。
「エッチ」
「ーーッ!!」
カァァっと顔に火がついたように赤くなる。
陽波は紅茶とお菓子をトレーに乗せ、「ついてこないと迷子になるぞ」と言うとキッチンを出ていった。
一人キッチンに取り残される。
ぎゅっと握り拳をつくって奥歯を噛み締める。
悔しい。
またも陽波にやられた。
「弱いとこ見せてきたと思ったら、ほんと嫌な奴」
陽波新が気にくわない。
休憩をとった後も続けて勉強を再開したけれど、先程の衝撃が強すぎて、内容が頭に入ってこないまま勉強会はお開きとなった。
「結局、英語しか完璧にできてない……」
自宅へ戻り、部屋で綺麗にまとめられた英語のノートを見る。
ついこないだまで“何がわからないのかわからない”状態だった英語は陽波のおかげで完璧にわかるようになった。
「ここまで私を進歩させるなんて、やっぱ只者じゃないわね、陽波新」
容姿にも頭脳にも恵まれ、神様は彼へのバロメーターの振り方を間違えたんじゃないか。
「今度何かお礼でもしよう」
クッキーなんてどうだろう。
本棚に並んでいる料理本を手にとる。
今日の彼の赤面した姿を思いだす。
クッキーを渡したら、またあの姿が見られるかな。
陽波はどんな味が好きだろう。
「って、いけないいけない」
気づけば陽波のことばかり考えてた。
英語以外の勉強も自力でやらなきゃいけないのに。
「集中しなきゃ」
テストに合格しなきゃ、お礼もできないのだ。
私は再びシャーペンを握った。
それからも学校の休み時間に陽波をひき止めては他の教科も教えてもらった。
断じて自力では無理だったわけではない。確認のためである。
その言葉を聞いて陽波は心底呆れた表情をしていたが、丁寧に教えてくれた。
そして、試験当日。
(いよいよだ)
教師が問題用紙と回答用紙をそれぞれ配る。
(この瞬間が一番緊張するんだよね)
大丈夫。
信じよう。
教えてくれた陽波を。
勉強した自分自身を。
「では、試験開始!」
二日間にわたる戦いが始まった。
「んで、手応えはあったわけ?」
昼休み。
いつもの屋上で二人お弁当を広げる。
「それが……」
「それが?」
陽波がゴクリと生唾をのむ。
「……それがバッチリ! 面白いくらい解けちゃって!」
親指と人差し指で丸をつくり、バッチグーの死後サインを送る。
お~、とやる気のない拍手が響く。
「なんだつまらん。落ちると思ってたのに」
「なんで落ちて欲しげなの!? 教えてくれたじゃん!」
「うわっ。肩を揺さぶるな。飯が落ちる」
「私が落ちる時より悲しげな顔ってひどくない!?」
「はいはい、良かったですね。桜井は偉い」
「えへへー。いっそ教師でも目指しちゃおうかな」
「調子にノリすぎだアホ」
ほっぺたをグリグリと拳で挟んでくる陽波。
「いひゃいいひゃい」
私が涙目で訴えると陽波は攻撃する手を止める。
「ま、次もこの調子で頑張ればいいんじゃね」
陽波の言葉に私はぱあっと表情が明るくなる。
「じゃあ次も陽波が勉強見てくれるんだね」
「どうしてそうなる」
「だって、そうじゃないの?」
私が首を傾げると、陽波は戸惑う表情でこちらを見る。
「そう、なのか……?」
よし、あと一押しでいけそうだ。
「そうだよ! よし、これで怖いものなしだー!」
「やっぱお前利用してるだろ」
私たちが平和にお昼を過ごしている時、気づいてなかったのだ。
屋上で私たち二人の姿を陰で見ていた人間がいることを。
***
明くる日の朝。
いつも通り登校し、私が教室に入ると、教室内がざわついた。
私を見てひそひそ話をする人たちもいる。
(なんだろう)
少し不快な気持ちになりつつ、席に着こうと前を歩くと、あるものが目に入った。
それは、黒板に貼られた二枚の写真。
一枚は昨日の屋上で昼食を食べる私と陽波の写真。
もう一枚は、一人のセーラー服の女の子が写っていた。
セーラー服の方の写真には矢印が引いてあり、こう書かれていた。
『衝撃! ビッチ女の闇深き過去』
写真に写る女子はでっぷりと太っていて、牛乳のビン底のようなレンズの厚い眼鏡をかけており、やたらと長い髪は下手くそな三つ編みにされている。
糸のように細い目と頬に散らばるそばかすが地味さを際立たせている。
見るからにからかいの対象になりそうな外見をしている写真の彼女には見覚えがあった。
当然だろう。私なのだから。
「いやほんと、劇的ビフォーアフターだよね」
「最近調子にのって陽波くんを独占してる誰かさんにこんな過去があったなんてねぇ」
「ちょっと見た目がマシになったら男たぶらかすとか、抜かりないよね~」
クスクス。女子たちが嘲笑する。
女子たちの言葉を聞いて、男子たちが異物を見るような目で私を見て呟く。
「え、あれ桜井さんなの?」
「変わりすぎ……俺、女の子信じられなくなりそう」
「元があれじゃ、付き合う気にもなれないな」
俺パス。
誰かが言うと、他の男子もそれに続いた。
俺も俺も。
教室中に侮辱を含む声が轟く。
……ああ、知られてしまった。
これがバレたくないから、私はここ《天ヶ原学園》へ来たのに。
中学時代の記憶が頭の中で駆け巡る。
***
中学時代、私はからかいの的だった。
太った体型、地味な顔立ちのせいで周囲からは『デブスちゃん』と罵られてきた。
学校に行くのが辛かった。
鉛が詰められたように重い足で毎日学校へ行った。
転機が訪れたのは、ある日の通学路。
学校へ行く途中、友達と笑いあいながら登校する天ヶ原学園の女子生徒とすれ違った。
きらびやかな制服に弾む声。
その子たちは楽しそうで、キラキラと輝いていた。
きっと、学校生活も充実しているんだろうな、と想像すると羨ましくなった。
「私もあそこへ行ったら、幸せな毎日が送れるのかな」
ならば天ヶ原学園に入学してしまえばいいんじゃない?
そんな希望めいた考えが浮かんだ。
しかし、天ヶ原学園は倍率が半端じゃなく高かったような……
「弱音を吐いてる場合じゃない!」
入るんだ。天ヶ原学園に。
楽しい学園生活を送るために。
天ヶ原学園に入学すれば、過去の私を知っている人はいなくなる。
「私にだって、幸せになれる権利がある」
そのために努力しよう。
勉強して、ダイエットもメイクも頑張って自分を磨こう。
私が変われば周りの世界だって変わるはず。
「変わるんだ」
新しい自分になって、幸せな学園生活を送れるために!
***
でも、それも今、全て水の泡となって消えてしまった。
せっかく入学できたのに。新しい自分になれると思ったのに。
やっぱりダメだった。
教室内を木霊する侮蔑の声。
それが束になって私の心へ突き刺さる。
「……ッ」
悔しさと恥ずかしさで涙がこぼれそうになる。
こぼれないように両目をぎゅっと閉じる。
やめて、やめてよ……
ついに涙が頬を伝いそうになった。
その時、
「くっだらねぇ」
凛とした声が静かに、でもはっきりと教室に響いた。
シン……と静まり返る教室内。
声のした方を振り向くと、陽波がつまらなさそうに顔をしかめて立っていた。
「お前ら人の過去暴いて楽しいかよ」
「でも陽波くん。桜井さんは昔こんな姿で……それって騙してたようなものじゃない!」
一人の女子が言うと陽波はため息を吐いた。
「昔がどうだったからってギャーギャー騒いでやるなよ。人は外見が全てじゃあるまいに。まぁ、俺が言っても説得力ないなもしれないけど」
俺って格好いいから。
自信満々で髪をかきあげる陽波。
「変わろうって努力することの何がいけないの? こんなに頑張って変わった奴を俺は認めざるを得ないと思うんだが」
どうかね、と騒いでいた女子たちに意見する。
「う、それは」
たじろぐ女子たち。
「それに、可愛いみんながそんなことすると、俺悲しいな」
きゅるん、と瞳を潤ませる陽波にズキューン! とハートを射抜かれる女子たち。
「わ、わかったから。泣かないで陽波くんっ」
「桜井さんもごめんね。うちらも意地悪すぎた。たしかに努力して変わるなんて簡単にできることじゃないもんね」
女子たちは反省した面持ちで私に謝る。
他の生徒たちも「言われてみればそうだよな」「激変ってのも面白くてアリかも」などと先程とはうってかわって違う反応を示す。
そのうち、解散解散、と個々に散らばっていった。
「これにて一件落着」
片手に目薬を持つ陽波については何も言わないことにした。
「鶴の一声……」
「これが俺の実力よ」
陽波は得意気に答える。
「集団心理って怖いね」
「……女子も男子も、集団は嫌い。みんなでよってたかって私を追い詰めて」
堪えていた涙が溢れ出す。
「中学時代、毎日毎日つらかった。どうして私ばっかり!? みんなと同じように笑いあえないの? いつも苦しかった!!」
「だから変わったんだよな」
「でもそれも今日で無駄になっちゃった。みんなもう私を普通の目で見てくれない。元はあんな地味で冴えない奴って先入観持っちゃう!」
声を枯らすように叫ぶ。
「もう、誰も私を受け入れてくれる人なんていない……」
陽波は私の身体を引き寄せ、そのまま抱き締めた。
そして、今までにない優しい声音で言う。
「俺がいるよ。俺が、いる」
とんとん、と安定したリズムで背中を叩く。
それが余計に優しさを感じて、私はもっと泣いてしまった。
昼休み。
いつもの屋上で昼食を食べる。
「お恥ずかしいところをお見せしてしまい申し訳ない……」
「ほんと、あやすのに時間かかったぜ」
ホームルームを始めようと教室に入ってきた担任は「何事だ!?」と驚いた顔を思いだし、顔が熱くなる。
「見てみてー、桜井の鼻水のあと~」
「恥ずかしいからやめてよ!」
シャツを見せびらかす陽波を必死で止めに入る。
どうしてこの人って所々残念なの。
今朝は格好いいって思ったのに。
そう。
私はあのとき、彼にときめいてしまった。
今思いだしても胸が高鳴る。
抱き締められた時の彼の温かさ、背中を叩く優しい手つき。
(悔しいから言ってやんないけどね)
完全にこのときめきを認めたわけではない。
この気持ちはまだ黙っておくことにする。
「なに、じっと俺を見つめて。もしかしてときめいちゃった?」
「そ、そんなわけないじゃない!」
「やーい照れてる照れてる~」
「もう! 陽波のバカ!」
でも、なんだかんだ言いつつも、この男との学園生活も悪くないと思ってしまうのだ。
陽光が照らす春のなか、私を救ってくれたヒーローは嬉しそうに笑っている。
読んでいただきありがとうございました~!