第8話 血涙
目が痛い。目が熱い。なんだこの痛みは。俺は目を瞑って、その場で藻掻く。
「なんだよぉぉ!この痛みはぁぁぁ!」
俺は痛みに耐えきれず叫んでしまう。
「修一!目から...血が!」
本当に目から血が流れるのか。血涙が流れるのは小説や漫画の中だけだと思っていた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
俺は発狂する。耐えられない。目にゴミが入っただけでも痛いと感じるのに、目の血管が潰れて破裂しているのだ。感じたことのない痛み。耐えれない。耐えれない。耐えれない。
「修一ィィ!」
「おい!どうした!大丈夫か!」
俺の発狂を聞いて駆けつけた監視員が俺の心配をする。
「うおっ!血涙!」
俺の目は開かない。痛くて開けないのだ。だが、監視員はそれを無理やりこじ開ける。
「うわぁ...目の血管が...何があった?」
「急に叫びだしたの!ねぇ!助けてあげてよ!ねぇ!」
***
俺は3日ほど救護室で目の治療をした。結果から話すことにしよう。
結果───
俺の目は失明した。
俺の眼球からは光を取り入れることが出来なくなった。目の血管が破裂したのだ。もう瞳孔は効力を失っている。網膜も機能していないらしい。だが、俺は視界を失った訳じゃない。視力を失った訳じゃない。視覚を失った訳じゃない。俺には、千里眼がある。目の血管は破裂したので、もう失う物は無いのだ。気軽に千里眼を使用することができる。
「目は見えないけど...大丈夫ですか?」
「あぁ...大丈夫そうだ...」
俺は目を瞑ったまま答える。千里眼で見ているのだ。
「本当に...本当に大丈夫なんですよね?」
「あぁ!大丈夫だ!」
俺は看護師に見送られて自分の檻に戻る。部屋の中には、響がいた。
「修一!大丈夫か?」
「あぁ...もう眼球は使い物にならないけどよ...」
「そうか...それは大変だな...」
俺は静かに頷く。
「おい!修一!大丈夫か?」
シュウジが俺らの牢屋にやってくる。
「あ、シュウジさん!大丈夫そうですよ!」
「そうか...なら、よかった!何かあったら俺に言えよな!」
「分かりました!」
「それじゃ、今日はとりあえず牢屋で待機だ...クソ...予定が狂うぜ...」
シュウジは俺らの牢屋の扉の鍵を閉めて、帰っていく。
「で、どうなんだ?」
「千里眼が実質使い放題だ...」
「そうか...それは...いいことなのか?」
「わからん...でもまぁ、いいことじゃない?」
「喜び難いな...」
「あぁ...それが正しいよ...」
「{電気供給室2}はどうなった?」
「あぁ...救護室の上にある...すまないが...行けなかった...」
「そうか...」
{聞こえる?}
{あぁ...聞こえてるぜ?}
{あぁ!修一!大丈夫だったんだね?}
{あぁ...大丈夫そうだ!千里眼使い放題だ!}
{そうか!それはよかった!}
{本当に心配したんだからね!}
サチエがツンデレ風の答えを出す。
{お前の中身は爺だから、ツンデレの需要はねぇよ!}
{なっ...失礼なっ!}
{本当のことだろ...}
{喧嘩はやめて...それで...「電気供給室2」に千里眼で行けない?}
{あぁ!そのやり方があったか!}
{やってみてよ!}
{わかった!やってみる!}
俺は「電気供給室2」のことを考える。この前見つけたところまでは来れた。
{中に入るぞ...}
{あぁ...そうしてくれ...}
「電気供給室2」の中に入る。壁にはこんな文字が書いてあった。
「囚人棟・救護室の送電の設定を変更可能」
その上には、この世界の言葉だと思われる絵のような文字が書かれてあった。だが、何故日本語でここに書いてあるのだろうか。
{囚人棟・救護室の送電の設定を変更可能らしい...}
{へぇ...囚人棟はここで、救護室は...行ったところよね?}
{あぁ...その様だな...}
{ねぇ?「電気供給室2」があるならさ...「電気供給室1」もありそうじゃない?}
{そうだ!そうだよな!}
{流石隼人だ!}
俺は「電気供給室1」を探す。それは、看守棟の1階にあった。俺は中に入る。また、日本語でこう書いてあった。
「看守棟・懲罰房棟の送電の設定を変更可能」
「鍵は看守棟の鍵置き場にあり」
なんで、部屋の中にこんなことが書いてあるのだろうか。もしかしたら、これは何かのヒントなのかもしれない。誰かが俺らのために残したヒントなのかもしれない。
{看守棟・懲罰房棟の送電の設定を変更可能らしい...}
{え、本当?}
{あぁ...そのようだ...}
{もう...脱出出来るかも?}
隼人はそんなことを呟く。
{え、どうして?}
{看守棟の電気を消せば、監視員の注意はそっちに逸れる。その間に脱出すればいいだろう?}
{そうじゃん!}
{でも、まだ脱出ルートは...}
{千里眼で見れるでしょ!}
{あ...本当だ...}
俺はこのトローン刑務所の入口を念じる。そして、見つけた。脱出ルートを。
{脱出ルートを見つけた...}
{本当に?じゃあ、作戦会議だ!}
───脱出準備開始




