第7話 落とした鍵
───次の日。
響は目覚める。だが、救護室なので、周りには誰もいない。
「あーあー...やっと喋れるようになった...」
響の声は出るようになったし、脚も少しだけだが動くようになってきた。このまま寝ていれば今日の夜か、明日の朝にはみんなの元に復帰できるだろう。
「はぁ...仕事か...面倒くさいな...」
隣の部屋で何か声が聞こえる。隣の部屋の男は大きな欠伸をした。
「それじゃ、仕事でも行くか...」
服を着る音が着ている。
「あ、あの...」
「あぁ...起こしちまったか?」
隣の部屋の人は話しかけてくる。
「起こしちまったことは謝る...俺は看守なんだがここでサボって寝てたことは言わないでくれるか?」
「は、はい...わかりました...」
「それは助かるな!」
看守は歩いて救護室を出ていった。
”チャッ,チャッリン”
隣の部屋で何かが落ちる音がする。落ちたものは何かの金属だ。
「拾いに...行くか...」
響はベッドから降りる。いや、落ちるが正しい表現かもしれない。響は一生懸命に這って隣の部屋に向かう。
隣の部屋のドアは少し空いていた。響は中に入る。
「どこに...落ちたんだ?」
響はベッドの下にキラキラと光る何かを見つける。響は手を伸ばしてそれを取った。
「これは...鍵?」
手の中にあったのは鍵であった。その鍵には「電気供給室2」と書かれたストラップがついていた。
「電気供給室...2か...」
{おはよう...起きているのは響だけかい?}
{俺は...起きてるぜ...}
響は這いながら自分のベッドまで戻る。もちろん、「自分のベッド」と言うのは救護室のだ。
{体調は大丈夫そう?}
{あぁ...今日か明日のどちらかには戻れそうだ...}
{そうか...よかった...}
{あぁ...それでだ、俺は救護室で...「電気供給室2」の鍵を見つけた...}
{「電気供給室2」?}
{あぁ...そう書いてある...}
{えぇと...どこだろう...}
{隼人でも...わからないのか?}
{うん...ごめんね...}
響は自分のベッドに戻ってこれた。自力でベッドの上に体を移して、楽な体勢になる。
{「電気供給室2」を...探して見るよ...}
{あぁ...そうしてもらいたいな...}
ここの刑務所は「コ.」の字のようになっている。「コ.」の文字で例えるとするならば、上の横棒が囚人棟で、縦棒が看守棟・下の横棒が救護室となっていて、少し離れている点が懲罰房棟である。このトローン刑務所に入るには必ず橋を渡らなければならないが、その橋は厳重に監視されている。当たり前のように周りは海に囲まれている。刑務所は海上にあるのだ。
***
「おい!起きろ!」
「なんですかぁ...」
俺は2段ベッドの上から降りる。部屋の中にはシュウジがいた。
「お前は寝坊助だな!本当に!」
「いいんですよ...寝坊助で...」
「良くないだろ...」
牢屋を出ると、そこにはサチエがいた。サチエはこちらを睨んでくる。
「なんでそんなに睨んでるんだよ?」
「ふん!」
サチエは会話をしてくれない。
{あ、やっと起きたね...おはよう...}
{あ、隼人!おはよう!}
{それで...報告だ...響が「電気供給室2」を見つけたらしい...}
{「電気供給室2」?どこにあるの?}
{わからない...だから、君の千里眼で探してほしいんだよ...}
{そうか...わかったよ!}
俺は千里眼を使おうと目を瞑る。
”バンッ”
「うおっ!」
俺とサチエはぶつかる。
{修一!今は使わないで!充血したら怪しいわよ!}
{あぁ...そうだな...すまない...}
脳内で俺はサチエに怒られる。サチエは俺の方を睨んであっかんべーをしてくる。
「お前ら、大丈夫か?」
「あ、はい!大丈夫そうです!」
「そうか...ならいいんだが...」
俺たちは食堂に到着する。
「そんじゃ、ちゃんと飯は食えよぉー!」
「はーい...」
シュウジは鍵を閉めてどこかに行く。俺たちは2人きりになった。
「はぁ...なんで看守の前で能力使おうとするのかなぁ...」
「え、お前だって使ってるだろ?」
「私はバレたから使ってるだけで、あんたはバレてないでしょうが!この馬鹿!」
「ごめんって...」
「それで、{電気供給室2}を探してよね!」
「あぁ...探すよ...」
俺は目を瞑る。そして、「電気供給室2」を千里眼を使って探す。あった。
看板には「電気供給室2」の文字がある。
「あった...」
俺は千里眼で「電気供給室2」を見ながら、答える。
「それじゃあ...どんどん縮小して、どこにあるか探しなさいよ!」
「あ、あぁ...わかった...」
俺は「電気供給室2」から離れる。どこに何があるかわからないが、隣には階段があった。そして、その下を降りると、救護室と書かれた広い部屋があった。
「救護室の上にある!」
「そう...」
俺は建物の外に視点を変える。救護室があったのは、2階だ。その上だから、最上階の3階に、「電気供給室2」はある。
「見つけた...救護室のある棟の3階だ...」
「そう!よく見つけたじゃない!」
俺は目を開ける。その直後、目にナイフが刺さったかのような痛みを感じる。痛みで目を開けられない。
そんな全神経が研ぎ澄まされた中、サチエの叫び声だけが響く。
「修一!修一!修一ィィ!」




