第5話 下水道を進め
───次の日。
「おい!起きろ!おい!」
外からシュウジの声が聞こえる。
”ギィィ”
扉が開く音がする。響はもう起きていた。
「あれ、修一は?」
「まだ寝てます...」
「そうか...おい!起きろ!」
「起きてまーす...」
俺は返事だけしてベッドの上で寝返りを打つ。
「眠いのはわかる!物凄くわかる!でも、ここは刑務所だ!しっかり起きろ!」
「はぁい...」
俺は2段ベッドを降りる。
「それじゃ、朝食を食べに食堂に行くぞ!」
「わかりましたー!」
外にはサチエもいた。俺たちは食堂に行く。
「それじゃ、食べておいてくれ!」
「はい!」
俺たちは食事を始める。相変わらず食事はパンだ。
「今日は...行くんだよな?」
「あぁ...そうだな...」
「修一と一緒かぁ...手...出さないでよ?」
「出すわけないわ!中身爺だろ!」
「でも...修一って面食いじゃ...」
「勝手に面食いって決めつけるな!」
俺たちは食事を終える。そして、シュウジを待った。
{おはよう。聞こえているね?}
{あぁ!聞こえているぜ!おはよう!}
頭の中で隼人の声がする。
{それじゃ、今日は実行するよ?いいね?}
{あぁ!大丈夫だ!}
{今日、僕は一日中刑務作業なんだ。だから、そっちで見張りはできない}
{そうか...刑務作業か...}
{私達の予定は、今日まではずっと自由時間らしいわ!}
{そうなんだ。なら、時間はあるみたいだね}
{あぁ...そうだな...}
{脳内会話はし続けるから、報告はいつでもしてね!}
{あぁ...わかった...頼んだぞ...}
{うん!}
「おーい!食事の時間は終わりだぞぉ!」
シュウジの声が外からする。シュウジはドアの鍵を開けた。
「それじゃ、出てこい!」
俺たち3人は外に出る。
「今日はずっと自由時間だ!いい子にしてろよ?」
「あぁ!わかってる!」
「それで、刑務作業は明日からだから...いいな?」
「刑務作業?何をするんですか?」
「それは、明日決める!」
「そうですか...」
俺たちは自由広場に入る。すると、入ったドアが閉じて、外から鍵がかけられる。
「うっ...」
”バタッ”
「え...響?」
響が急にその場に倒れた。
「大丈夫?」
「あぁ...大丈夫だ...大丈...夫...だ...」
「大丈夫じゃないよね!響!響!」
「大丈夫ですか?」
見張りの人が話しかけてくる。
「響が!急に倒れたんです!」
「そうですか...救護室に連れて行った方がいいですね...」
監視員は2人で、響を担架に乗せて運ぶ。
{大変だ!響が倒れた!}
{響...足を怪我した人?}
{あぁ!そうだ!急に倒れて救護室に運ばれた!}
{そうか...じゃあ...修一君一人で...探索は行ってくれ...}
{私は?}
{見張りは必要だろう?}
{そうね...わかったわ!}
響が運ばれるのを見送って、俺たちは図書館へと進んだ。
「私は見てるわね!」
「あぁ...俺は探してくるよ...」
「わかったわ!」
俺はサチエと別れて探索に行く。俺は台車を退ける。
「入れ...そうだな...」
俺は中に入っていく。その時だった。俺の頭の中に響の声が響く。
{台車で...穴を...隠しておけ...}
{わ、わかった!}
俺は言われたとおりに穴を台車で隠して進んだ。
”チョロチョロ”
水の音がする。穴を這って進んでいくと、下水道へと繋がった。
{下水道についたよ!}
{そうか...なら、探索してくれ...}
俺はあたりを見回す。目の前には下水が流れている。流れていく方向を下流・流れてくる方向を上流と呼ぶことにしよう。
{上流と下流の...どっちから見る?}
{下流の方に出口がありそうだから...楽しみは最後に理論で...上流?}
{下流からに...しろ...}
またも響の声がする。
{え、どっちにすればいい?}
{下流からにしろ!}
{上流からよ!}
{喧嘩しないでよぉ...}
{下流から行くぞ?}
{そうしろ...絶対にな...}
{ちぇっ!}
サチエは舌打ちする。脳内で会話しているのに舌打ちの音はよく聞こえるものだ。
{それじゃ...進むぞ?}
俺は下流の方に進む。大きな下水道に、分岐して来た下水道からの下水が流れている。俺はそれを踏まないように慎重に通る。
{何かあったか?}
{今のところは何も...}
{やっぱ上流に行ったほうが良かったんじゃない?}
{下流でいいんだよ!}
{だーかーら...喧嘩をしないでよぉ...}
俺は一つの扉を見つける。鍵はかかっていない。
「この扉は...」
{なぁ...扉があった...}
{扉?}
{あぁ...入ってみるか?}
{入ってみようよ!少しだけ!}
{わかった!じゃあ...入ってみる!}
{誰かに会ったら...ちゃんと言えよ?}
{わかってるよ!}
俺は扉を開ける。扉の向こうには道が続いていた。
{何かあった?}
{道が...続いている...}
俺はゆっくりと進む。すると、足音が廊下で大きく響く。
{部屋が1つと...奥には登る階段が...あるよ?}
{じゃあ...部屋を覗いてみたら?}
{そうだな...}
部屋に入るには鍵が必要だった。部屋の名称は「水流管理室」であった。
{水流管理室...だってさ...}
{中には入れるの?}
{いや...鍵が無いから...入れなさそうだ...}
{そっか...}
{修一...そろそろ戻れ...}
響の声が聞こえる。




