第4話 -A03
俺たちは風呂に入った後は、一度自分の牢に戻る。
「夕飯の時間になったら来るから!」
シュウジはそう言うと、俺達の扉を閉じた。
{あーあー...聞こえる?}
脳内で隼人の声が聞こえる。
{うん!聞こえてるよ!}
{えぇ!聞こえてるわ!}
隼人は俺たち3人に声を送っているようだ。
{よかった...これでいつでも話せるね...}
{あぁ...そうだな...}
{あ!今日は図書館の台車の裏に...下水道の穴を見つけたよ!}
{下水道の穴?}
{うん...俺、帰るの遅れただろ?その穴を見てたからなんだ...}
{そうなのか...}
{隼人は今、どこにいるんだ?}
{僕は今、風呂だよ...}
{風呂...なんだ...}
{うん...そうだよ?}
{じゃあ、明日はその下水に行って見る?}
{まだ、下水かわからないだろ?}
{あ、待って!確認してみる!}
俺は同じ部屋にいる響の目を見る。
「千里眼を...使うのか?」
「あぁ...」
俺は目を瞑る。そして、今日図書館で見つけた穴の前を意識する。これで進んでみよう。
”チョロチョロチョロ”
下水の道が続いていた。ここはどこかに続いている。もしかしたら、外にも。
「おい!修一!」
「何?」
俺は目を開ける。だが、目に鋭い痛みが唐突に現れる。充血しすぎて、目の血管が膨張しているのだ。
「あぁぁ...目がぁぁ...」
「修一!落ち着け!修一!」
{何?どうしたの?}
{修一...大丈夫?}
3人から俺は心配される。
{今のうちに報告する!穴の奥は下水だ!}
俺は強く目を瞑った。できるだけ目を落ち着かせるために。数分すると、やっと痛みが収まった。
「こんなん風呂覗く代償デカすぎるだろ...」
「何を考えているんだ...この変態が...」
「食事の時間だ!2人共出てこい!」
俺はシュウジに呼ばれて、外に出る。俺の目はもうすっかりと治っていた。
「それじゃ、3人共食事に行くぞ!」
「「「はい!」」」
俺たちは食堂に移動する。さて、今日1日を振り返って見よう。今思えば、俺たちは地下2階から動いていない。自由広場も地下2階にあるのだ。図書館だけは地下3階にあるのだが。食堂も浴場も地下2階にある。一日中太陽の光に当たらないことは珍しい。
「ほら!中には入れ!」
俺たちは中に入る。シュウジは鍵をかけるとどこかに行ってしまった。
「ねぇ...修一?目は大丈夫だったの?」
サチエは俺の安静を美少女の姿で聞いてくる。だが、中身は87歳の爺なので、全く萌えない。
「あぁ...大丈夫だ!」
俺は置いてあったパンを食べながら答える。
「そうなの?よかった!」
「なんか...メインヒロインなんだろうけどな...中身がな...」
「うるさいわね!爺の姿じゃ動きにくいんだよ!いいだろ!美少女で!」
「・・・」
「・・・」
俺と響は返事ができない。
「お、おう」
俺が振り絞った答えは、「お、おう」だった。
「なんで、そんな反応するのよ!」
俺たちが食事を食べ終えるとシュウジが来た。
「あれ、なんか今日は早くないですか?」
「いいだろ?別に今日は早くても?」
「食べ終わったからいいですけどね?」
「それじゃ、帰るぞ!」
俺たち3人は自分の牢に戻る。響の使っている杖の音だけが響いていた。
「それじゃ、寝るかぁ...」
「あぁ!おやすみ!」
{聞こえる?}
隼人の声が頭に響く。
{何?}
{あ、聞こえてるね。君たちの囚人番号は僕は知ってるけど、君は僕の囚人番号は知らないんじゃないかい?}
{あ、あぁ...知らないよ!}
{そうか...じゃあ、言わなければ不平等だね...僕は-A03だよ!}
{なっ...-Aの03だと?}
{うん...}
「何?そんな珍しいことなの?」
俺は喋って響に質問する。
「あぁ...-Aは99まであって、それの3番目だ...俺らよりも何年も何年も早く、ここに来ているはずだ...」
{何年くらい前からここにいるの?}
{僕は...生まれた次の日には転移していたらしい...}
16年前に転移したのだ。
{生まれた...次の日?}
{あぁ...そうだよ...だから、生まれ故郷はここみたいなものさ...}
隼人は声一つ乱さずに答える。
{そっか...同情はしたほうがいいのかわからないが...大変だったな...}
{親がいないのは寂しいけどね...}
図書館の本が読めるのはずっとここにいたからなのだろう。
{明日の目標は...どうする?}
{自由時間に...下水の道を行ってみるか...}
{そうね...そうしましょう!}
{誰が行くか決めておいたほうがよくない?}
{あぁ...そうだね...}
{俺は行ってみたいぜ!}
俺は自分から志願する。
{俺は...足が使えないから...無理だ...}
{そうか...無理か...}
{あぁ...すまないな...}
{じゃあ...僕かサチエさんのどちらかかな?}
{2人で行くのか?}
{あぁ...そっちの方が効率がいいからね...}
{そっか...}
{じゃあ、私が行くわ!}
サチエも志願する。
{オッケー!わかった!}
こうして、俺達の明日の行動は決定した。俺は寝た。




