第3話 下水への穴
「それで、サチエさんはどうしてここに?」
「私?」
サチエさんは美少女の姿になっていた。異世界転移して、メインヒロインの中身がお爺ちゃんなのは嫌だ。美人看守でも探すしかないのだろうか。
「あぁ...あなたも召喚者だろ?」
「まぁ...そうだけど...年寄りだからって理由で...」
「まぁ...そうだよなぁ...失礼だけど...何歳?」
「ピチピチの18歳!」
「真面目に答えて?」
「87歳...です...」
「思った以上にお爺さん...それで、本名は?」
「言いませーん!サチエのキャラが壊れるので言いませーん!」
サチエは美少女の姿で答える。
「それで、修一の能力は何?」
「俺は...千里眼だ!」
「千里眼か...あ、私は肉体変化だよ!」
「肉体変化?」
「えぇ!年齢や見た目、性別などを色々変えられるの!」
「ほげぇ...すごいな...」
「千里眼があるなら...脱獄の道に近づいたな...」
これまで沈黙を貫いていた響が口を開く。
「えぇ...」
「え、脱獄?え?」
「逃げ出したくないのか?」
「それはもちろん!でも...できるのか?」
「{できる}じゃない!やるんだ!」
「は...はぁ...」
「飯の時間は終わりだ!」
シュウジが食堂に戻ってきた。先程の話を聞かれてしまったのだろうか。
「次は、修一が新しく来たから、今日は仕事ではなく自由時間とする!」
「自由時間か!」
俺たちは修一に付いていく。俺たちは少し開けた公園のようなところに連れてこられた。
「ここが自由広場だ!この中なら自由に過ごして貰ってもいい!」
「はい!」
俺たちは自由広場に入る。すると、入ったドアが閉じて、外から鍵がかけられる。
「響!案内をしてやれよ!」
「わかりましたー...」
自由広場の外には監視員が常に見張っている。ここから逃げるのは無理そうだ。
「ここは自由広場だ!それで、ここの地下に図書館がある!」
「図書館?」
「あぁ!図書館にある本は自由に読める!」
「そうなんだ...」
俺たちは図書館に移動する。図書館の中は閑散としていた。誰もいない。
「ここなら...監視もいないな...」
「えぇ!そうね!」
「それで、どうやってここから脱出するかだ...」
「第一に、刑務所から出ないと行けないだろ?まずは、出る方法を知らなくちゃならない!」
「刑期が終わって出る人を見たことがある...その人は最初に入って来たところから出ていた...」
「最初に入ってきた所...か...」
「出口は多分そこだけだろうな...職員用の玄関があるかもしれないが...」
「そうだな...」
「普通に逃げるわけにはいかないだろう?」
「あぁ...そうだな...強行突破しても駄目そうだ...時間逆行でやり直しはできると思うが...」
「でも、数日は寝込むんだろ?」
「あぁ...そんな連続で使えるわけでもない...」
「そっか...」
「ねぇ...君たち...何の話?」
「誰だ!」
俺たちは一斉に声がした方を向く。そこには、一人の少年が立っていた。
「君たち...脱獄の話を...してるの?」
「お前は...話を聞いたのか?」
「うん...脱獄...するの?」
「こいつ...ここで殺したら...」
「駄目よ!監視にバレる!」
「じゃあ...どうする!」
「僕も参加させてくれないか...」
「「え...」」
「僕の名前は梶隼人...16歳...能力は脳内通話さ...」
「の...脳内通話?」
「うん...やってみるよ...」
{あーあー...聞こえますか?}
{おい!聞こえるぞ!}
{これは、近くにいなければ話せないとかあるの?}
{特にはないよ?}
{マジ?じゃあ、仲間になるか?}
{うん...よろしく!}
俺たちは脳内会話で自己紹介をした後、図書館を見て回った。
「色々な本があるけど...読めなさそうだな...」
「召喚者用」という文字は日本語だったが、他の文字は全く読めない。絵のようだった。
「こんなん読めないよ...」
”ドンッ”
本を運ぶ台車にぶつかる。
「おっと...」
俺は台車を元に戻す。ん、なんだ、これは。
「これは...」
台車の裏には穴があった。頑張れば人一人入れる程の穴があった。
「ここ...は...」
俺はそこに顔を近づける。
”チョロチョロチョロ”
水の流れる音がする。この穴は下水道に近づく穴だ。
「ここ...なら...」
「おい!修一!どこだ!」
シュウジの声がする。俺を探しているみたいだ。
「あ、ごめんなさい!本を片付けたらそっちに行きます!」
俺はそう言いながら、台車で穴を隠した。そして、シュウジの方へ向かう。
「ごめんなさい!」
「修一は本が好きなのか?」
「そうでもないですけど...体を動かすよりかは...」
「そうか!」
「それじゃ、行くぞー!」
俺と響・サチエはシュウジについていく。
「次は風呂だ!汗水を流してこい!」
「はーい!」
俺たちは風呂に入る。サチエさんは美少女から老人の姿に戻っていった。
「どうして...戻ったんですか?」
「なんだ?やましい!変態のクソガキが!」
「うるせぇな!見たいわけじゃねぇよ!」
見たいだけだった。まぁ、千里眼を使えばいくらでも覗けるのだが。
「それにしても...本当に...粗チンだな...」
「う、うるせぇ!」
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